RussianFront



Russian Front(以下、本作)は米国アヴァロン・ヒル社(The Avalon Hill Game Company)が1985年に発表したシミュレーションゲームだ。テーマは第2次欧州大戦の独ソ戦で、1941年6月~1944年11月までの戦いを1Turn=1ヶ月のスケールで再現する。

本作のシステムは、 以前の記事 で記載したので、そちらを参照して頂きたい。

今回、本作を対人戦でプレイしてみた。参加者は3名で、枢軸2名、ソ連1名で担当する。下名はソ連軍を担当した。シナリオは標準的な1941年シナリオで、ルールは上級ルール及び選択ルールを全て採用した。

41年6月

ドイツ軍は国境線を突破し、ソ連領内に侵攻してきた。北方ではニェーメン川を渡河したドイツ軍装甲部隊が、敵中深く突進し、バルト海沿岸の要域リガを占領した。
中央ではブレスト・リトブスク要塞(Brest Litovsk BB4)をドイツ軍が占領。しかしヴィルナ(Vilna GG9)はソ連軍が確保している。前線ではソ連軍4個軍が包囲されて取り残された。
南方では国境線を突破したドイツ軍がルヴォフ(V3)を占領。装甲軍団はキエフへ向かう鉄道線の北側を突破してソ連軍の後方へ回り込む。
ルーマニア戦線ではルーマニア軍が総花的攻撃を仕掛けてきたが、元々の火力が小さいために大きな戦果は上がらず、むしろ損害ばかりが目に付く結果になる。

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ソ連軍は、北部戦線では北ドヴィナ川からヴィテブス(Vitebsk FF15)のラインまで戦線を後退させ、ミンスク(Minsk DD11)には足止め部隊を残す。
南部ではオデッサ(Odessa J10)を基点としてドニエストル川沿いに第1線を形成し、ブーク側の第2線を形成。さらに予備兵力をキエフ(Kiev U12)周辺に展開した。

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41年7月

北部ではドイツ軍が北ドヴィナ川の背後に回り込み、ペイプス湖南岸に回り込む。その南方ではミンスクをドイツ軍第12軍団(5-4-6)が攻略した。さらに装甲部隊の先鋒は前進し、第45装甲軍団(6-4-6)及び第47装甲軍団(7-5-6)はヴィテブスから2ヘクス以内に進出した。

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南方ではオデッサに対してドイツ軍が攻略作戦を仕掛けるも、ソ連黒海艦隊が出撃してきたためオデッサ攻略は失敗に終わる。

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ソ連軍は前方に進出したドイツ軍装甲部隊の機動性を奪うべく、その後方地帯に部隊を投入。装甲部隊の補給線を遮断する。その結果、北方では装甲5個軍団と歩兵1個軍団、南方では装甲2個軍団が補給線を遮断される。

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41年8月

足止めを食った形のドイツ軍は兵力を再編するために歩兵部隊を前に出す。その結果、ドイツ装甲部隊の後方を遮断していたソ連軍部隊は全て駆逐され、ソ連軍は戦線を下げざるを得なくなる。

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またこれまで(失念していた)フィンランド軍も行動を開始。フィンランド領内に飛び地の如く残っていたソ連軍ハンゴ要塞(Hango UU11)に対して攻略作戦を仕掛けてきた。ソ連軍もバルチック艦隊を出撃させてそれに対抗する。ハンゴ沖にはソ連軍が機雷源を敷設していたためドイツ艦隊は近づけない。海からの支援を得たハンゴ要塞の守備隊はフィンランド軍の攻撃を撃退した。

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41年9月

早くも秋の訪れ。北部戦線は雨が降った。これにより北部における両軍の機動力は大きく衰えることになる。そのせいもあってか、北部では戦線に大きな動きはない。
歩兵と戦車を組み合わせた攻撃でドイツ軍がヴィテブスを占領した。スモレンスク(Smolensk DD17)にも攻撃を仕掛けたが、航空支援を欠いた攻撃のためスモレンスク攻略には失敗した。
南方でもドイツ軍は要域キエフ(Kiev U12)を攻略。航空支援を得たドイツ軍はキエフを占領した。

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ソ連側は中部ではスモレンスクを軸として両翼の森林地帯に展開。ドイツ装甲部隊の弱点を突いた布陣を形成する。
南部ではキエフを失ったものの、キエフを起点としてドニエプル川沿いにドニエプロペトロフスク(Dnepropetrovsk M18)まで二重の戦線を敷く。

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41年10月

北部は再び雨が降った。その北部ではドイツ軍がソ連バルチック艦隊の基地であるタリン(Tallinn SS12)に攻勢を仕掛ける。再びバルチック艦隊が迎撃に向かうが、今度はドイツ側も艦隊戦力を投入してきた。タリン沖海戦。航空支援を得たドイツ軍がソ連艦隊を撃破。ソ連・バルチック艦隊は後退を余儀なくされる。海からの支援を得たドイツ軍はタリンを占領した。

フィンランド湾の制海権はレニングラードの死命を制する重要なものである。すなわちレニングラード以外にどこか1ヶ所の港湾をソ連軍が支配していると、レニングラードは補給切れにならない。逆に言えば、ドイツ軍から見た場合、レニングラードを孤立化させるためには、フィンランド湾の全港湾を支配する必要がある。現在、ハンゴ要塞をソ連軍が支配しており、フィンランド軍単独ではこれを奪取するのが困難な状況になっている。枢軸軍がハンゴ要塞を奪取するためには、ソ連バルチック艦隊による支援を排除する必要がある。そのためにはハンゴ要塞を迎撃範囲に収めるタリン、ナルヴァを占領するのが有効である。

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中央および南方ではドイツ軍は強固な戦線を形成するソ連軍に対して強行突破を仕掛ける。航空戦力も全力で援護すべく飛来するが、ソ連側も豊富な補充能力に物を言わせた航空戦力を迎撃に投入した。本来は能力に劣るソ連空軍にとってドイツ空軍との正面対決は不利である。しかし度重なる戦闘で消耗していたドイツ空軍はソ連空軍との対決で苦戦を強いられた。一連の空戦でドイツ・ソ連双方共航空機3ユニットずつを失う。これは当時独ソ両軍が保有していた航空戦力全体の60%、75%に相当する。双方にとって大きな痛手であったが、ソ連軍は豊富な回復力で速やかに航空戦力を再建可能であったのに対し、ドイツ軍にとって航空戦力の再建は絶望的であった。

そんな中、ドイツ軍第57装甲軍団(7-5-6)がドニエプル川の防衛戦を突破し、敵中に乗り込み、無防備のハリコフ(Kharkov G20)に突入した。このためソ連軍は補充ポイント2点と工場1つを失った。

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ソ連側は強力な第19軍(6-5-4)を投入してハリコフを奪回した。

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感想

時間その他の関係上、今回はここまでとした。この時点でドイツ軍の獲得VPは22点。勝利レベルはS2。つまりソ連側の実質的勝利である(4段階の勝利レベルのうち下から2番目)。実際には41年11月のTurnが残っているのでそこでドイツ軍がVPを伸ばす可能性も無きしも非ずだが、今の状態で獲得できそうなのはスモレンスクとドニエプロペトロフスク、ノブゴルドぐらいなので、合計しても4点にしかならない。仮に3ヶ所全て確保すると、勝利レベルは1段階変化してS1になるが、それでもソ連側の勝利は動かない。しかも航空兵力の過半を失ったドイツ軍に3ヶ所全ての確保は難事に思える。下手をするとソ連側の反撃によってキエフ等の要域を奪回される恐れすらある。
セットアップを除くプレイ時間は6時間弱。1Turn平均1時間強である。プレイ自体は面白かった。ロシキャンのような派手さはないが、その分安心してプレイできる。「ロシキャンを超えた作品」とまでは言わないが、「ロシキャンと比肩し得る作品」であることは間違いない。
1つ気になるのはプレイバランスである。史実通りの結果だとドイツ側の敗北になるので、ドイツ側に厳しいプレイを要求されるが、そのバランスがややドイツ側に厳しすぎるのではないかと思える。完全に史実通りの結果だと、1944年5月、バグラチオン作戦開始を待たずしてドイツ側がサドンデス負けを食ってしまう。
いずれにしても本作は何度もプレイする価値のある作品であることは間違いない。ロシキャンの影に隠れて今ではあまり注目されない作品であるが、シナリオも数多く用意されているので、私も繰り返しプレイしてみたい。

なお、陸上部隊の後退ルールについて、日本語ルールに誤解を招くような書き方をしているので注意されたい。日本語ルールの7.5.2.2については、「自軍補給源に近づく方向の隣接ヘクス」という言葉を削除して読めば、原文のルールをほぼ忠実に再現している。

1941_Operation_Barbarossa