RedStorm


Red Storm(以下、本作)は、2019年に米国GMT社から発売されたシミュレーションゲームだ。テーマは1987年における東西ドイツ上空における航空戦闘である。実際に起こらなかった戦争を再現する本作は、一種の「仮想戦」ゲームといえる。ゲームシステムについては、 以前の記事 を参照されたい。

今回は、その中からシナリオRS9:NightHawkをプレイしてみた。プレイスタイルは、VASSALを使ったソロプレイである。

開戦から3日目、NATO軍は厳重に防御されたWP軍の防空ネットワークの拠点を破壊すべく、当時の最高機密機であったF-117A "NightHawk"ステルス攻撃機の投入を決意した。4450戦術航空団に所属するF-117A計12機は、少数の戦闘機に掩護され、世界で最も厳重に防護されたWP軍防空組織へ飛び込むことになる。

前回までの展開は --> こちら

Turn12b


14Turn

RU_SA12_A飛行場に着陸しようとしていた東ドイツ空軍のMiG-21MFが、着陸直前に墜落した。これでWP側の損失は計3機となる。パイロットは無事ベイルアウトに成功した。
F-4G "WildWeasel"の編隊が最後の"HARM"対レーダーミサイルを発射した。狙いは長距離SAMのSA-12である。狙われたSA-12は速やかにレーダーをシャットダウンしたのだが、メモリーに電波源の位置を記録していたHARMはそのまま目標に突入し、SA-12の射撃管制レーダーに直撃した。

Turn14a


15Turn

WP側のSA-11部隊が微かな反応を捉えた。攻撃を終えて帰投する米軍のF-117Aステルス爆撃機である。SA-11は千載一遇の好機。直ちにSAM発射を行うが、弾数は残り僅かであった。最後の数発を微かな反応に向けて発射したが、ミサイルは目標を捕捉できなかった。

Turn15a


16Turn

NATO側の攻撃機が最前線を超えた。SA-4大隊がSEAD編隊に対して最後の斉射を発射するも、ミサイルは命中しなかった。

17Turn

NATO側の攻撃隊が全機安全圏に離脱した。この時点で終了とする。

結果

NATO側の戦果

空中戦の戦果:撃墜3、大破3、小破1
地上攻撃の戦果:侵攻目標完全破壊4(早期警戒レーダー2、司令部1、SA-2サイト1)、侵攻目標重損傷2(SA-2サイト1、司令部1)、侵攻目標以外で早期警戒レーダー1撃破、SA-12サイト1撃破、1重損傷。

WP側の戦果

空中戦の戦果:大破2(F-15C,F-4G)
対空射撃の戦果:なし

VPはNATO側が89VP、WP側が4VPで、差は+85。問題にならないぐらいNATO側の圧勝であった。

感想

US_F117_Hailステルス攻撃機は予想通り強かった。SAMで捕捉しようとしても常に"Target undetected"の欄になる上、Defensive Jammerが8もあるので、捕捉するためには最低でも2d10で17以上の出目が必要(確率10%)。さらにスタンドオフジャミングが適用されれば、そこからさらに捕捉成功率が下がる。ただ一度捕捉に成功すると、その後は2d10で10以上の出目(64%)を出せば捕捉が継続するので、一度でも捕捉することがSAM側にとっては重要かもしれない。とはいえ、仮にSAM発射に成功しても、SAMが実害を与える可能性は0%。SAM回避に持ち込むためにも2d10で3以下の目(3%)を出す必要がある。これなら無理をしてステルス機を狙うよりも、非ステルス機を狙った方が遥かに得策に思える。

RU_SA12_A非ステルス機に対するSAM攻撃だが、NATOの欺瞞妨害装置(Deception Jammer)が強力なので、これまたなかなか命中しない。例えばF-15Cに対してSAMで攻撃を仕掛けた場合、最初に2d10で12以上を出して"Possible Hit"の目を得た後、実際に命中を得るためには、2d10で8以下の目を出す必要がある。F-15Cが例えばレベル1のスタンドオフジャマーを得ていた場合、DRM+5が適用されるので、出目3以下が必要(3%)。これがF-4Gの場合は、DRMがさらに1得られるので、命中させるのはさらに困難になる。SA-11、SA-12、SA-15による攻撃に限ってボーナスとしてDRM-1が得られるので、やや命中率が上がるが、それでも命中させるのが困難なことは変わりない。
同じく機動対空砲についても、例えば低空に降りてきたF-15Cに対して好餌とばかりにレーダー装備の2K22で狙い撃ちしても、最初に2d10で12~13以上の出目を出した後、DRM-7(夜間、スタンドオフジャマー1で目標速度が5以上の場合)で11以上の出目が求められる。確率6%。やはり苦しい(とはいえ、スタンドオフジャマーがないとか、夜間ではなく昼間とかなら、そこそこ命中が期待できる値になる)。
ところがWP側に福音がある。NATO戦闘機の守り神「欺瞞妨害装置」は機能停止する場合があるのだ。それは「自由旋回を超える旋回を実施した場合」である。これは次に移動力を消費するまでの僅かな期間なのだが、WP側としてはこれを逃す手はない。NATOの戦闘機が調子に乗ってWP戦闘機を捕捉せんとSAM射程内で急旋回を実施した瞬間、SAMをぶっ放せば良いのだ。あるいはレーダー装備の対空砲火を見舞うという手もあるだろう。逆にNATO側としては、敵SAMの脅威下を飛行する際には、不用意に最大旋回するのは避けねばならない。

次に空対空戦闘について。WP側にとって戦闘機による迎撃は、NATO側ステルス機に対するほぼ唯一の対抗手段となる。US_F15_Cobra逆に言えばNATOとしては何はともあれ、最初にWP側の迎撃戦闘機を排除したいと思う。
今回は夜間戦闘であったため、NATO側によるWP戦闘機排除は昼間よりも困難であった。敵戦闘機を無力化する最良の方法はドッグファイトに持ち込むことだが、夜間はドッグファイトに持ち込める確率が昼間の半分以下まで落ち込む(昼間は64%、夜間28%)。頼みはBVR(視認外戦闘)だが、超低空で息を潜めているWP戦闘機に対してBVR戦闘を仕掛けるのは困難を伴う。安全策をとって高高度から狙い撃ちすると、グラウンドクラッターでミサイルの有効性が下がってしまう。とはいっても超低空に降りると、周囲の対空火器やら中短射程SAMやらがバンバン撃ってくる。またBVRミサイルはWP側戦闘機も持っている場合があり、その場合はWP側のBVR攻撃でこちらが先に撃たれてしまうリスクもある。今回、WP側としては戦闘機を前に出して失敗したが、戦闘機は前に出さずに重要地域付近で温存しておき、SAMでディフェンスラインを張るのが正解であった。いくら命中率が低いといっても数十発のSAMでお迎えすれば、1発ぐらいは当たるかもしれない。なんせNATOの戦闘機は、F-15にしてもF-16にしても、1機落ちただけでもプレイヤーが不機嫌になってゲームを投げ出したくなるほどの骨董品なのだ・・・・。あとは(先にも書いたように)NATOの戦闘機が不要に急旋回を行った瞬間に狙い撃ちする手もある。

今回はステルス攻撃機という要素の他に、夜間戦闘だとかNATOによる侵攻作戦とか色々と面白かった。展開はやや一方的であったが、得ることの多いプレイだったと思う。この次はやはりNATOによる長距離侵攻を扱った別のシナリオ(RS11又はRS12等)をプレイしてみたいものである。

MiG29


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