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Wing Leader Supremacy Wing Leader(以下、本作)は、GMT社が2015年に発売した空中戦ゲームだ。デザインはLee Brimmicombe-Wood。Down TownやNight Fighter(いずれもGMT社)といった独特なシステムの空戦ゲームをデザインしている。
本作のシステムについては、 以前の記事 に記載したので、そちらを参照頂きたい。

今回、本作の拡張キットに掲載されているキャンペーンシナリオにチャレンジしてみることにした。選択したシナリオは、"Wing Leader Eagle"に掲載されている"Fortress Rabaul"である。1943年10月。ソロモンとニューギニア方面で反攻作戦を進める米軍が、南東太平洋方面における日本軍の一大拠点であるラバウルを無力化すべく実施した一連の航空作戦を扱うシナリオである。時期は10月23日~11月3日の計12日間。この間、途中悪天候等に阻まれながらも米軍はラバウルの無力化を目指して攻撃を行い、日本軍はそれを阻止すべく戦闘機を使って迎撃する。

今回私は米軍を担当した。

ラバウル要塞

10月23日

US_P38_F天候は快晴。北部ニューギニアを発進した第5空軍のB-24Dリベレーター計60機の大編隊がラバウルに向けて飛行する。高度は約7000m(レベル14)。そのB-24Dの周辺を80機のP-38Fライトニングが飛行している。
ラバウルに近づいた時、前方に約70機の戦闘機が迎撃のために上がってきた。日本海軍の零式艦上戦闘機である。開戦当時は無敵を誇った日本海軍の主力戦闘機だが、1943年後半の今日、連合軍の新鋭機と比べると主に速度性能で見劣りするようになってきた。
零戦隊は高度1500~6000mを飛行し、上空を飛ぶ連合軍重爆撃機に対する攻撃の機会を伺っている。しかし積極的に高度を上げては来ない。高度7000mなら零戦は空戦性能がガタ落ちし、P-38Fの速度性能に太刀打ちできなくなるからだ。

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連合軍戦闘機は高度の優位を生かしつつ、チャンスを見て零戦隊に急降下攻撃を仕掛けていく。P-38の奇襲を受けた零戦数機が炎に包まれて落ちていく。零戦もP-38相手に格闘戦を挑もうとするが、P-38はその手には乗らず、一航過後に離脱していく。
結局一連の空戦でP-38は損害皆無で7機の零戦を撃墜した。

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US_B24_U一方の爆撃隊は日本戦闘機による損害はなかったものの対空砲火の弾幕射撃によって1機が撃墜され(「Flakに食われ」)た。また爆撃そのものも高度が高すぎたため、目標となったブナカナウ飛行場に与えた損害は軽微なものに留まった。

教訓:爆撃効果を発揮するためには、安全策だけではだめだ。損害覚悟で高度を下げることも時には必要。

US_P-38G


10月24日

US_B25_U 天候は再び快晴。前日の爆撃で効果が不十分だったため、今回は中型爆撃機による攻撃を行う。攻撃目標はラバウル港湾。攻撃兵力はB-25Dミッチェル計80機。各機低空攻撃用のパラシュート爆弾を搭載している。護衛のP-38Fライトニングは70機。
前回とは異なり、今度は米軍機は超低空を侵攻してきた。高度1000~5000m付近で待ち構えていた零戦隊は約70機。眼下に見える双発爆撃機に向けて降下を開始する。その刹那、6000m付近から急降下してきたP-38の編隊が零戦の針路を妨害し、激しい格闘戦になる。

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JP_A6M4_U前回とは異なり、低空での激しいドッグファイトの場合、P-38の編隊も無傷という訳には行かない。零戦に背後を取られて20mm機関砲を食らって四散する機体が数機。あとで集計すると、4機の戦闘機が未帰還となり、3機が被弾したが辛うじて期間した。撃墜戦果は36機(内不確実撃墜9機)を報じたが、戦後の調査によれば撃墜された零戦は16機であった。
一方B-25爆撃隊は護衛戦闘機の奮戦によって1機の損失機も出さずにラバウル港湾上空に進入。激しい対空砲火を突いて目標上空に突入する。2機のB-25が対空砲火を浴びて撃墜されたが、残った各機はパラシュート爆弾を次々と投下する。さらに機首に装備した50mm機関砲を使って地上掃射を行う。港湾施設は甚大な被害を被り(53ヒット)、その回復には最低でも1週間を要すると思われる程であった。

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B-25爆撃隊は帰路に零戦隊の追撃を受けてさらに2機が撃墜され、損害の合計は4機となったが、達成した戦果に比べればささやかな損害と言えるかもしれない。

教訓:密集隊形で突入すると対空砲弾幕の良い的になる。可能なら対空砲火事前制圧用の編隊を別働させることも検討する必要があるかも。

B-25_Blasts_at_Rabaul_1943


10月25日

天候は曇り。やや下り坂である。航空攻撃には微妙な天気だが、折角のチャンスなので攻撃隊を出すことにした。B-24Dリベレーター50機とP-38Fライトニング70機からなる攻撃隊。しかし彼らは途中で悪天候に阻まれ、目標への到達を諦めて引き上げることとなった。

10月26日

天候は雨。今日は完全休養日である。

10月27日

天候は小雨で回復しつつある。攻撃隊を発進させるB-24Dリベレーターが50機のみ。護衛なしの裸の爆撃隊だ。しかし今回も悪天候に阻まれ、攻撃隊は目標へ到達できなかった。

10月28日

天候は晴れ。4日ぶりの晴天である。攻撃日和。B-25Dミッチェル80機とそれを護衛するP-38Fライトニング70機の計150機からなる大編隊だ。次々と前線基地を発進し、「ラバウル要塞」を目指す。
4日前とは違い、今回の攻撃目標はブナカナウ飛行場だ。さらに今回はB-25のうち20機は通常爆弾を搭載し、中高度(3000~4000m)からの水平爆撃を行う予定だ。敵の弾幕射撃を混乱させることが目的で、なおかつ攻撃本隊に先行して対空火器を制圧する任務も担っている。
例によって日本機約70機が迎撃に上がってきた。P-38の編隊は積極果敢に零戦隊と交戦。中には自身にとって不利な筈の格闘戦を挑む機体も現れる始末。それでも練度と火力に勝るP-38は零戦を圧倒し、4機の損害で16機の零戦を撃墜した。そして日本機の全てを撃退し、爆撃隊の針路を啓開した。

・・・・・・・

といった所で時間切れで終了。ここまでのプレイ時間は約7時間。思いの外時間がかかるシナリオであった。

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感想

シナリオはあと1週間分残っているが、今後予想される展開を紹介する。
この後、天候に翻弄されながらも米軍によるラバウル攻撃は続けられることになる。11月1日に1つの転機がやってきる。米海兵隊によるブーゲンビル島上陸作戦だ。ブーゲンビル作戦が始まると両軍が得られるVPが一気に増える。今までは港湾に痛打を与えても1CVP(キャンペーン勝利ポイント)しか得られなかったものが、3CVPに増える。また飛行場や巡洋艦と言った目標も追加される。これらを無傷で残すと、米軍はCVPを失う。
さらに日本軍は増援部隊を得られる。所謂「ろ号作戦」による増援だが、これによって日本の戦闘機隊は兵力回復の機会を得る。これまでの展開を見ればわかる通り、日本の零戦は米軍のP-38Fと互角に戦うことはできない。従って戦いを続けていくうちにジリ貧になってくる。「ろ号作戦」増援は、苦境にあった日本海軍戦闘機隊にとってのカンフル剤となるだろう。

今回Wing Leaderを久しぶりにプレイしたが、やはり面白い。日本人にとっては愛するゼロ戦が弱いのがちと悲しい(P-38はおろか、P-40が相手でもキルレシオ的には苦戦を強いられるだろう)が、大規模空戦を手軽に楽しめる点は良い。様々なシチューエーションを手軽に楽しめる点も評価したいところだ。

今回、キャンペーンシナリオに初めて挑戦したが、思いのほか時間がかかってしまった。Wing leader自体をプレイするのが久しぶりであったというのもあるが、キャンペーン自体が時間がかかるという点もあろう。ただし目標を決めて攻撃隊を編成し、攻撃後に損害を整理しつつ次の出撃に備えるという醍醐味は、他の単発シナリオでは味わえない醍醐味である。今回のシナリオも最後まで完了できなかったのが心残りなので、機会を見つけてキャンペーンシナリオを再戦してみたい。

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Beneath the Med The Doolittle Raid Storm Above the Reich トワイライトストラグル
海軍零戦隊撃墜戦記1 海軍零戦隊撃墜戦記2 攻防-ラバウル航空隊発進篇 Breaking the Bismark's Barrier: Volume 6: July 1942 - May 1944