The Battle for Germany(以下、本作)は、2021年に米国Compass Gamesが発表したシミュレーションゲームだ。テーマは1985年8月を想定した西ドイツにおけるワルシャワ条約機構(WP)軍とNATO軍の対決。1Turnは実際の1日、1Hexは12kmに相当し、1ユニットは連隊~師団規模になる。 本作の基本システムは、 以前の記事 で紹介したので、そちらを参照されたい。
今回は、その中からシナリオ4「The Battle for CENTAG」をソロプレイしてみた。このシナリオは北部戦域を除いたドイツ中南部での戦いを描いたシナリオである。キャンペーンシナリオほどではないが、それでもフルマップ2枚相当のかなり大規模なシナリオである。個人的には実質的にプレイなのはこの程度のシナリオまでかな、とも思っている。
前回までの展開は --> こちら
6Turn(1985/8/6)
戦略フェイズ
開戦6日目。久しぶりに晴天となった。このTurn、米軍の第4歩兵師団がPOMCUSに登場する予定であったが、POMCUSが破壊されてしまったので登場しない。1個師団丸々登場しないのは痛いが、僅かな慰めとしてPOMCUSで使用されるはずの人員が補充ポイント4ポイントとなって加算される。その補充ポイントを利用して米第11装甲騎兵連隊を復活させる。全般に戦力不足のNATO軍にあって、貴重な予備兵力となる。ここで重大なルールミスが判明した。それは回復ルールである。
5.1 The NATO player refreshes all their Spent Units that have a Line of Communications.
6.1 The Warsaw Pact player refreshes all their Spent Units that have a Line of Communications.
このルールを読みと、単純に「連絡線がつながっていれば全部のユニットを未活性面に戻せる」と思ってしまう。私もそう思っていた。
しかしルール3.2.1に重大な一文が・・・、しかも太字で強調するように・・・、
HQs are not Units.
つまりHQはルール5.1や6.1の手順では元に戻せないのだ。
ではHQはどうやって回復させるのか。その方法がルール9.2に書かれている。HQはSP(補給ポイント)を消費して回復させる必要があるのだ。逆に言えばSPの範囲内でしかHQを回復させられない。このことは特にWP側が西ドイツ領内奥深くに侵攻した場合に重大な意味を持ってくる。敵領内にいるHQを回復させるために2SP(NATOは3SP)が必要なのだ。そしてSPの蓄積量は最大でも15SPしかない。
この間違いに気づいた時、一瞬「もうここで止めようか」という軽い絶望感に襲われた。しかしここで気を取り直して続けることにした。幸いSPはお互いに余り気味だったので、ルール通りにやっていてもそれほど大きな変化はなかったかもしれない。そう思いなおした。
ルール間違いに気づいて改めて補給・インフラフェイズを行う。両軍とも残り少なくなったSPを使ってHQの回復を行う。NATO軍は4個軍団を回復させて4SPを消費し、2SPで避難民を救援する。残り2SPを使って1ヶ所に掩体壕を構築する。
一方のWP軍。SPの残りは13SPである。一見余裕があるようにも思えるが、SAMの修理に6SP使うので(放置しておいてもい良いが、NATO側の経空脅威を考慮すると放置は得策とは言えない)。結局WP側はSAMの修理に5SPを消費し、残る8SPでHQ5個を活性化した。今までの半分以下である。
次は航空作戦である。WP側は最早制空戦闘を挑むのが難しいので、制空戦闘を諦めて稼働全機を対地支援に投入する。対地支援の場合は、対地支援任務を行わない限り、NATO戦闘機に食われる心配はない。これに対してNATO側はBounce任務に最強のF-15とF-18を計4ユニット配置する。これにより、WP側の地上支援はほぼ自殺行為となる。
一方的に航空優勢を握ったNATO側は、WPのSAM(地対空ミサイル)ネットワークを破壊すべく激しい爆撃を加えた。SAMを制圧することがWP側に補給ポイントを消費させる最も効果的な方法だと考えたからだ。米空軍のF-111アードバーグ2ユニットとF-16ファルコン3ユニット、そしてやや旧式のF-4ファントム5ユニットの計10ユニットがWP側のSAMネットワークに襲いかかる。F-16 2ユニットとF-4 1ユニットがSAMの反撃で被弾して離脱したが、残りが爆撃に成功。SAM計10個を制圧し、SAM能力を4から1へ激減させた。これを回復させるためには、WP側は1Turnで使用可能なSPの実に2/3を消費しなければならない。
最後にWP側が空挺部隊によるライン川西岸への降下作戦を試みたが、出目に恵まれずに失敗に終わった。
WPプレイヤーターン
回復ルールを適正利用したため活性化できるHQの数が劇的に減少した。これはプレイ時間の短縮化という意味からは有益である。これまでは無料でHQを回復させていたため「動かさないと損」とばかりにユニットを動かしていたからプレイ時間が延びる傾向があった。しかしHQの回復が無限ではなくなったため、無駄な移動はお互いに控えるようになると思う。WPが活性化したHQは今回は3個に留まった。活性化させたHQが少なかったため、WP側の攻撃はいきなり小規模なものになった。ライン川を渡河するチャンスもあったが、WP側としても戦線拡大の余裕はないと判断。フランクフルト北方で米軍と西ドイツ軍を分断するという比較的限定的な攻勢に出た。砲兵火力ではNATO側を圧倒していたWP軍であったが、NATO側の優勢な航空兵力がそれを帳消しにした。さらにNATO側の優れた装備品、例えば西ドイツ軍のレオパルド2主力戦車や米軍のM2ブラッドレー歩兵戦闘車がWP側の劣った装備品を圧倒した。2ヶ所で実施されたWP側の攻勢は悉く失敗に終わり、WP側は一歩も前進できなかった。唯一の戦果は、WP側戦線後方に取り残されていたフルダを掃討したことぐらいだ。
NATOプレイヤーターン
WP側の動きが止まった。NATOにとってはここが反撃のチャンスである。「敵が止まったからこちらも一休み」では勝てる戦争も勝てない。敵が疲れているからこそ揺さぶりをかけて戦力の回復を妨害しなければならないのだ。最初に動いたのは米軍である。第5軍団麾下の第8歩兵師団「パスファインダー」がフランクフルト南東部に突出してきたソ連第31戦車師団に対して包囲攻撃を実施したのだ。包囲によって後方連絡線を遮断した米軍部隊は、M1エイブラムス戦車やA-10サンダーボルト攻撃機等を総動員してソ連軍を攻撃する。後方連絡線を断ってしまえば、ソ連自慢の砲兵部隊は使用できなくなるのだ。しかもソ連軍にとっては悪いことに、川を背後に布陣する所謂「背水の陣」であったため、後退路も断たれてしまっていた。ソ連軍師団は抵抗の術もなく壊滅してしまう。
続いて本命、ライン川に迫るソ連軍に対する反撃作戦を開始する。攻撃目標はケルンに到達していたソ連第13親衛戦車師団である。NATO側の主役は歴戦の西ドイツ第5装甲師団だ。最新鋭のレオパルド2主力戦車を装備している。NATO側の作戦は例によってソ連軍師団の背後を遮断して連絡線を断ち、その圧倒的な砲兵火力を封じる。そしてNATO側は戦車、砲兵、航空兵力の支援を受けた三位一体攻撃を行う。
果たせるかな。NATO側は期待していた砲兵支援と航空支援が得られず(ダイスが9と10であった)、一時はどうなることかと思わせたが、攻撃時のダイス目が良く、ソ連軍師団は後退することもできずに壊滅した。
北方ではさらに東ドイツ軍の1個師団を包囲したが、これは撃滅に失敗。ただその東ドイツ軍師団は「ただ生き残っただけ」という感じで、戦闘能力は半分以上失われていた。NATO軍はライン川に取りついていたWP軍部隊をほぼ一掃し、ルール工業地帯に迫る脅威を排除した。
南方では西ドイツ第2軍団がチェコ軍相手に反撃を実施した。レオパルド2主力戦車装備の西ドイツ第10装甲師団はチェコ軍第2機械化歩兵師団を壊滅に追い込み、西ドイツ第1擲弾兵師団はソ連軍独立部隊2個を撃破した。チェコ軍はこの時点で計3個師団を失っており、その戦闘力は当初の半分程度にまで低下していた。チェコ軍の攻勢能力はほぼ失われており、あとは損害を避けるために後退するしかなかった。
つづく
The Fulda Gap The Battle for the Balkans NATO Designer Signature Edition The Third World War, Designer Signature Edition Blue Water Navy Next War Poland Game Journal 81-米中激突:現代海戦台湾海峡編 コマンドマガジン Vol.177『ヴュルツブルク』
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