210917_解毒

解毒

坂根真実 角川ebook

本書はカルト宗教に入信した二世信者である筆者が、カルト宗教から抜け出すまでの過程を記した手記である。本人が自分自身について書いた著作なので客観性はやや乏しいが、カルト宗教から抜け出す本人の葛藤が赤裸々に綴られている。
本書は実話を元に書かれたものであるが、とにかく「面白い」。読み始めると読むのが止まらなくなる。筆者は自身を「カルト宗教に洗脳された」としているが、「洗脳されている」間の自分自身についても驚くほど自身を冷静に観察している。筆者が所謂「頭の良い」人物だということは本書を読むと容易に理解できる。そのような筆者であっても呪縛から逃れることができない所にカルト宗教の恐ろしさがあるとも言えよう。本書を読むとカルト宗教の欺瞞性や危険性を感じることができ、それに対する怒りと恐怖を覚えずにはいられない。
ただ宗教の問題は難しい問題といえる。宗教とは詰まる所本人の内面の問題であり、他人が介入すべき問題ではないからだ。カルト宗教の問題点はその反社会性にあるのであって、信者たちがカルト宗教へ傾倒すること自体を他人がとやかく言うことはできない。
日本人は無宗教と言われており、その分宗教に対する免疫が弱い。そして我々自身は老病死やその他の苦しみから決して逃れることはできない。宗教がこれらの諸問題に対する唯一の回答ではもちろんないが、宗教が有益な選択肢の一つであることは間違いない。だからこそ我々は宗教を正しく理解し、正しく接していくことが重要だと思う。

お奨め度★★★★