AirPower(以下、本作)は、1992年に米国Clash of Arms社から発売された空戦ゲームシリーズです。シリーズと言っても実際に発売されたのは、同年に発売されたClash of Arms社の「The Speed of Heat」だけで、あとはAirPower Journalという雑誌で追加シナリオや追加データが掲載されていたようです。あと、忘れちゃいけない View from a Cockpit (以下、VfaC) 。和製のAirPowerシリーズサプリメントですが、そのクォリティの高さは半端ないです。

今回、映画 トップガン マーヴェリック の上映を記念して(という程のことではないのですが)、オリジナル「トップガン」の空戦シーンをAirPowerシリーズでプレイしてみることにしました。AirPowerの前作ともいうべきGDW社のAir Superiority(1987)(以下、AS)にクライマックスシーンを再現したシナリオが用意されていたので、そちらを使用します。個人的にはA-4改「マングース」とトップガン達の戦いを描いたシナリオがプレイしたかったのですが(旧式だが小型軽量のA-4が、当時最新鋭のF-14Aを翻弄する様が見てみたい)、残念ながらシナリオが見つかりませんでした。ちなみに機体のデータはASから流用(早くVfaCの米海軍サプリメントが見てみたい・・・)、ミサイルはVfaCのデータを使用しました。また劇中で「MiG28ファンタジー」となっている架空のミグは、シナリオではMiG21扱いとなっています。現代のイメージなら、MiG29の輸出型あたりがしっくりくるかもしれません(それだとF-14は勝てないか・・・)。
またオリジナルのシナリオでは特に指定がない搭乗員の練度についてですが、米側トップガン卒業生(3番機のRIO=マーリンを除く全員)は、ヴェテランでかつTactical Master扱いとしました。さらに1番機と3番機のパイロット(アイスマンとマーヴェリック)は、Combat Hero扱いにしました(ちょッと下駄を履かせすぎかな?)。また1番機のRIO=スライダーは、ガタイがデカイので体力優秀。また3番機のパイロット=マーヴェリックは、自信が劣悪(グースの死からまだ立ち直っていないため)としました。
敵側については、6機のMiG21が登場し、うち2機はソ連の軍事顧問団が乗っているという設定のようです(劇中でハリウッドのF-14Aを撃墜したのは、軍事顧問団のMiGらしい)。そこで練度は軍事顧問団が平均、地元兵は平均、ノービス、ノービス、グリーンとしました。

プレイスタイルはVASSALによるソロプレイです。

Turn00a


1-2Turn

Ice, we've got a problem here. Now we've got four aircraft on radar.
Not one pair, two pair. Repeat, four bogeys.
No! Make that five!
(「違うぞ、敵機は5機だ」)

ブードゥ2(2番機)のRIOを務めるウルフマンが叫ぶ。今や状況は急速に悪化しつつあった。当初2機と思われていたMiG戦闘機が実は4機、いや5機目も彼らの眼前に現れたのである。実際の状況はさらに悪く、彼らが未だ発見していない第6のMiGが彼らの後方から攻撃を機会を伺っていたのだ。
相手が同数なら練度と機体性能の優位を生かして苦も無く相手を圧倒出来るはずのトップガン達であったが、2倍以上の敵となると話は別だ。さすがのトップガン達も2倍以上の敵が相手なら確実な勝利は期待できない。
無論相手の立場に立って考えると、これは当然と言えば当然と言える。トップガン達の技量とF-14の性能の高さは敵側も当然知悉している。同数で戦えば勝てないことは、既に実戦の場面で何度も証明されていた。であれば数的優位に持ち込むべく敢えて密集編隊を組んで相手に少数機と思わせておいて、空戦場面で散開させて数的優位でトップガン達を圧倒しようというのは理にかなった戦術といえよう。この時点では有り体に言えば、敵側の作戦勝ち。トップガン達は罠にはまったといえる。

Mustang, This is Voodoo One. We are totally defensive. Launch the alert fighters
(こちらブードゥ1。完全に囲まれた。援護機を頼む)

その時彼らの後方から近づいていた「6番目のMiG」が、2番機のハリウッド機を狙ってミサイルを発射した。R-60赤外線誘導ミサイル。NATOコードネーム"AA-8Aエイフィッド"だ。機動力に優れた小型ミサイルである。その2発がMiGから放たれ、トップガン達の乗るF-14の右後方から迫ってきた。トップガン達はまだ気が付かない。

Turn02a


3Turn

右後方で何か光った。そう思ったハリウッドが右後方を振り返ると、驚くべき光景が。6番目のMiGの姿と、そこから放たれた2発のミサイルが真っすぐこちらに向かってくるのではないか。

Break Left. Break Left!

ハリウッド機後席のウルフマンが叫ぶ。排気熱の量を絞るべくスロットルを下げて、左に急旋回。さらに立て続けに数発のフレア弾が発射された。赤外線誘導ミサイルを騙す熱源体である。
MiGの放ったミサイルは、いずれもフレアに引き寄せられて外れ。ハリウッド・ウルフマンコンビはとりあえず最初の危機は乗り切った。しかし・・・、

Lead MiG is coming into gun's range.

「6番目のMiG」はハリウッド機の後方から近づき、23mm機関砲を撃ってくる。緊急回避で左へ避けるトップガン。機銃弾はギリギリの所で機体を逸れた。

Shit! That was close.


Turn03a


4Turn

「ウッド、さらにミサイルが1発来るぞ」

ウルフマンが叫ぶ。右後方から近づいてきた別のMiGが、ハリウッド機にR-60赤外線誘導ミサイル2発を発射したのだ。2発のうち1発は発射タイミングが早すぎて誘導に失敗して自爆したが、もう1発は正確な軌跡を描いてハリウッド機に迫ってきた。

Break right! Break right!

右へ降下旋回しながらミサイルから逃げる。フレアも発射されたが、今度はミサイルは騙されない。ミサイルはF-14の至近距離に近づき、近接信管を作動させた。

I'm hit. I'm hit!

ハリウッド機は胴体付近に被弾した。電子装備も破壊されたため、チャフ・フレアの放出が不可能となってしまう。さらにレーダーも機能を停止する。しかも彼らの危機はまだ終わってはいない。別のMiGが傷ついたハリウッド機に止めを刺すべく、近づいている。

一方、アイスマンのブードゥ1は、一旦MiGの包囲から逃れた後、垂直上昇してバーティカルロールを実施、機首を翻してMiG編隊に相対している。

One MiG 12 o'clock high, one MiG 12 o'clock high!
OK, you guys, I'm coming in.
I'm on his tail. I'm on his tail. I'm going for it. I'm going for the shot right now.
Roger, engaged!
I got tone, taking the shot. Fire!
Fox Tow! Fox Tow! Fox Tow!

アイスマンの機体から1発のAIM-9Lサイドワインダー赤外線誘導ミサイルが放たれた。ミサイルは前方1マイルを飛行中のMiGのエンジンテールに向かって飛んでいく。

Turn04a


F-14A


つづく