Midway Inquest: Why the Japanese Lost the Battle of Midway
Dallas W. Isom Indiana University Press
「ミッドウェーの検証 - なぜ日本軍はミッドウェー海戦で敗れたのか」。本書のタイトルを和訳すると、こうなるだろう。本書はミッドウェー海戦における日本軍の敗因を主に日本側の視点から検証した著作である。従って本書は洋書ながらも日本側の史料を多く引用している点に特徴がある。「戦史叢書」や「滄海(うみ)よ眠れ」(澤地久枝著)からの引用が数多く見受けられる。本書から得ることは大きい。外国人が見た日本側の事情という点でも見るべき点が多いが、米国人特有の定量的な分析手法を使った日本海軍や日本空母部隊に対する評価という点というでも興味深いものがある。
筆者は「なぜ南雲部隊は米艦爆の爆撃を受ける前に艦攻隊を発進させることができなかったのか」という疑問から始まり、南雲司令部の決断で何が誤りであったのか、について考察している。
ミッドウェー海戦における様々な疑問、例えば・・・、
・南雲中将はなぜ聯合艦隊司令部の指示に反して第2次攻撃隊を対空母攻撃用に温存しなかったのか
・利根4号機が敵を見つけた後、南雲司令部が兵装転換の指示が遅れた訳は
・利根4号機は敵を発見した後、敵ハ後方ニ空母ラシキモノヲ伴ウを報じるまでなぜ1時間近くを要したのか
・利根4号機の敵発見から3空母被爆まで3時間近くの時間がありながらなぜ攻撃隊を発進させることができなかったのか
等について、本書は日本側の資料に基づき、アメリカ人らしいクールな分析を繰り広げている。
もう1点、本書の魅力はミッドウェー海戦での個々の戦術戦闘についての考察である。日本側ではあまり知られていない南雲機動部隊の防空戦闘について(日本側の資料ではだいたい「ドーントレスの奇襲を受けるまでは零戦が完璧な防空戦闘を行った」としている)も本書は詳しく記載している。そして空母を守る零戦隊が実はかなりの苦闘を強いられていたこと、特に最後に飛来してきた「ヨークタウン」の艦攻隊に対しては零戦隊は殆ど有効な防空戦闘を行い得なかったこと(これにはサッチ少佐の活躍による所が大きい)等、日本では殆ど知られていない事実も紹介されている。
とにかくミッドウェー海戦を扱った書籍の中でもこれほど面白い著作も珍しい。英語という点を差し引いても、ミッドウェー海戦に興味のある向きには必読書といっても良いだろう。
コメント
コメント一覧 (1)
神立尚紀さんのコラムでは利根機に問題があるのではなくて、雲の下に下りない索敵をまともにやっていない筑摩機の問題が記載されています。
利根機に焦点があたり過ぎですがもはや時代遅れというか古い情報に基づいた話にこだわっても意味があるのでしょうか?
もりつち
がしました