211127_日本人はなぜ自虐的に

日本人はなぜ自虐的になったのか-占領とWGIP-

有馬哲夫 新潮新書

「安らかに眠って下さい。過ちは繰り返しませぬから」

この文章は広島市平和記念公園に設置されている原爆死没者慰霊碑に刻まれた碑文に記載されているものである。主語の不明確なこの文章。広島市によれば、主語は全世界であって、日本人やその他特定の国民ではないという。
しかしこの理屈は明らかにおかしい。原爆を投下したのは日本人ではなくアメリカ人だ。原爆投下が「過ち」だとするならば(非戦闘員に対する無差別殺戮が戦争犯罪に該当することは論を待たない)、その「過ち」を犯したのはアメリカ人であって日本人ではない。なのになぜ日本人が「過ちを繰り返さない」と誓わなければならないのか。被害者である筈の我々日本人は、なぜかくも「自虐的」にならなければいけなかったのか。
日本人がなぜかくも「自虐的」になったのか。本書はそのことを明らかにする著作である。本書によれば、日本人が自虐的になった理由は、第2次大戦後日本を占領した連合国、就中米国が日本人に対して心理操作を行ったためだとしている。その心理操作とは、 WGIP(War Guilt Information Program) と呼ばれている。 その目的は、日本人に自らが戦争を引き起こした「罪人」であるという意識を植え付け、その一方で原爆投下等の非道な行いをした米国に対して敵愾心を持たないようにさせることであると。
先に述べた原爆の碑文についても、「原爆被害については日本人に対して自業自得と自覚させよ」というWGIPの指示を忠実になぞっているに過ぎない。

筆者は一次史料からWGIPの実態を丹念に調べ上げ、その内容が単なるプロパガンダに留まらず、NHKや読売新聞、朝日新聞等を用いたマスメディアを駆使した心理戦だとしている。またその内容もポツダム宣言を違反するような非道なもので、極東軍事裁判と並んで米国による対日占領政策の一大汚点だとしている。

今やWGIP自体を架空だとか虚構だとか言う議論は意味がない。既に公開されている史料にWGIPの存在が明記されているからだ。問題はWGIPが実際に日本人の心理操作に成功したか否かについてだが、筆者はその影響を「極めて大(あるいは有効)」だったとしている。これは昨今の状況を見ても首肯できることで、私は筆者の主張に大いに賛同したい。

筆者の主張通りWGIPの影響は今日でも続いており、例えば元内閣総理大臣ほどの人物が近隣諸国で「土下座」するという何とも奇妙な国になってしまった。国益に反する行為を繰り返す大新聞や所謂『人権派弁護士』達にもこのWGIPの呪縛陥っている。慰安婦問題もまたしかり。 WGIPの影響については歴史家の間でも意見が分かれている所だが、WGIPが実際に行われたことについては、今や疑う余地がない。我々はWGIPの呪縛から速やかに抜け出し、日本を「普通の国」にしていかなければならない、と私は考える。

お奨め度★★★★★