AirPowerシリーズについては、 既に何度も紹介している ので、そちらを参照されたい。今回はその中から個人編集のサプリメント集である View from a Cockpit のIssue#2「Chinese Air Power」から、シナリオTS-9「第2次金門・馬祖上空」をプレイしてみた。このシナリオは、1975~1995年における中国・台湾の空中戦を描いたもので、一方の挑発行動から両軍の激突に発展したケースを想定した仮想シナリオである。
今回は、共産側を挑発側、民国(台湾)側を迎撃側とした。登場兵力は共産側がJ-8I"フィンバック"が4機、民国側がF-CK-1A"経国"が2機とした。プレイスタイルはVASSALによるソロプレイである。

VfaC2


1Turn

マップ北端より国籍不明機4機が巡航速度(550mph)で進入する。横一列のラインアブレスト編隊である。編隊各機の間隔は1マイルだ。

J-8


2Turn

マップ南端から民国戦闘機2機が進入する。民国国産のF-CK-1A"経国"戦闘機だ。各機は翼下に計4発のAIM-9P4"サイドワインダー"赤外線誘導ミサイル、胴体下には計2発のAIM-7F"スパロー"レーダー誘導ミサイルを装備している。高度19,000ft、速度700mph。ほぼ音速だ。優速を利して2機の民国戦闘機は、中共戦闘機に対して高度の優位を確保しようとする。

F-CK-1


3Turn

民国戦闘機の1番機が前方約8マイルに国籍不明機を発見した。不明機は4機。亜音速で真っすぐ近づいてくる。

Turn03a


4Turn

国籍不明機は民国領空に侵入した。なおも民国領空内奥深くに進入してくる。民国戦闘機は国籍不明機とすれ違った。しかし国籍不明機は編隊を崩す気配がない。

5Turn

「国籍不明機は共産軍の戦闘機と判明。当方の警告に応じる気配なし。直ちに撃墜せよ。繰り返す。直ちに撃墜せよ」

遂に撃墜許可が出た。共産側戦闘機はJ-8I。NATOコードネームは"フィンバック"。MiG-21を大型化、双発可したような戦闘機だ。共産機の背後に回り込んだ民国側隊長機は、敵機の後方2マイルからAIM-9P4"サイドワインダー"赤外線誘導ミサイル1発を発射した。

Turn05a


6Turn

ミサイルを発見したJ-8Iは、エンジンを絞り、右旋回を行う。立て続けにフレアを発射。サイドワインダーはフレアに騙されて明後日の方向に飛び去った。しかし隊長機はなおも目標に接近。距離1マイルから2発目のサイドワインダーを発射する。
民国戦闘機2番機は隊長機の左後方2マイルに位置して隊長機をバックアップする態勢を取る。

Turn06a


7Turn

しかし中共側戦闘機は腕利きだった。接近するサイドワインダーを見るや急旋回しつつフレアを発射。ミサイルはまたもやフレアによって騙された。しかしミサイル回避によって速度が低下したJ-8Iに対し、民国側隊長機は急接近する。アングルオフ90度の偏差射撃。難しい射撃姿勢であったが、レーダー照準によるアシスト、民国側隊長機の技量、そして20mmバルカン砲の性能がそれを補った。約200発の20mm機関砲弾が放たれ、そのうち数発が目標機を直撃した。エンジンとアビオニクスに被弾した共産側戦闘機は、それでもなおも飛び続ける。民国戦闘機は3発目のサイドワインダーを発射した。

Turn07a


8Turn

アビオニクスを破壊された共産側戦闘機は、最早フレアを発射することもできなかった。ミサイルが損傷した中共機の至近距離で近接信管を作動させる。共産側戦闘機はバラバラになって落ちていく。

「1機撃墜!!」

10Turn

共産側が反撃に転じた。民国戦闘機のうち、バックアップの位置にいた2番機の左右を抑え、その間別の1機は後方に回り込む。後下方約2マイルから1機のJ-8Iが2発のPL-5B赤外線誘導ミサイルを発射した。2発のうち1発は発射直後に失速して落ちていったが、もう1発が正常に作動し、民国空軍経国戦闘機の後方から迫ってくる。

Turn10a


11Turn

「後方からミサイル。回避しろ」

隊長機から警告が飛ぶ。2番機パイロットが振り返ると、後方からミサイルが迫ってきている。2番機はエンジンの出力を落しつつ、右へ急旋回を行う。ミサイルが十分に近づいた所で立て続けに数発のフレアを発射した。旧式の共産側ミサイルはフレアに騙される・・・筈だった。
・・・・
しかし、・・・
ミサイルはフレアには見向きもせずに真っすぐこちらに向かってくる。
「なぜだ・・・」
理由も分からないままミサイルは2番機を直撃した。

12Turn

2番機はミサイルの直撃を受けて胴体に重大な損傷を被った。しかし弾頭威力が小さいことと機体の安定性が良かったため幸い飛行継続は可能だ。ただし機体に被った損害のため、急旋回ができなくなっている。この状況で戦闘継続はできない。逃げる2番機対し、共産側戦闘機はさらに2発のPL-5B赤外線誘導ミサイルを連続発射した。

Turn11a


13Turn

被弾した2番機はミサイルから懸命に逃げる。幸い電子戦システムは無傷であったため、接近するミサイルに対してフレアを連続発射する。今度はフレアによる妨害が功を奏し、2発のミサイルは目標を失って墜落していった。2番機を追跡していた共産側戦闘機は、全てのミサイルを撃ち尽くした。あとは機関砲しかない。

Turn13a


14Turn

民国側隊長機が再び腕の冴えを見せた。共産側戦闘機の左斜め前から接近し、20mm機関砲を叩き込んだ。偏差角150度という高偏差角射撃。普通なら命中しない位置関係だが、再びバルカン砲の優秀性が発揮された。約200発が発射されて10発以上が目標に命中。目標機はバラバラになって墜落していった。2機撃墜。

Turn14a


15Turn

これで共産側は2機を失った。また1機は空対空ミサイルを撃ち尽くした。従ってミサイルを残しているのは1機だけである。しかし民国側も1機が中破して離脱中。無傷の隊長機も残った兵装はサイドワインダーとスパローが各1発ずつのみ。20mm機関砲も残弾数は約100発で、わずか1秒の斉射で撃ち尽くす量であった。

Turn15a


16~20Turn

その後、両陣営は攻撃の機会を伺うが、攻撃の機会を得ない。最終Turn(20Turn)に民国側隊長機が共産側の1機に20mm機関砲弾を叩き込み、これを中破させた。

結果

民国側の戦果

撃墜2機、中破1機
なお撃墜された2機のうち、1機のパイロットは戦死、もう1機のパイロットは民国側の捕虜になった。
合計56VP

共産側の戦果

中破1機
他に示威行動による4VP、民国側先制射撃による15VP
合計31VP

感想

旧式のミサイルは苦しいですね。今回民国側が使用したAIM-9P4は一応全角度型の赤外線誘導ミサイルなのですが、NATO諸国が使用しているAIM-9L/Mに比べると低視認性やIRCCMの点で劣り、さらに運動性も良くない。結果として撃たれた側の対処が容易になります。チャフ・フレアを普通に搭載している戦闘機が相手の場合、この種のミサイルを命中させるのはかなり厳しく、今回民国側戦闘機が発射した3発(AIM-7Fを含めると4発)の空対空ミサイルのうち、有効弾は1発のみ。しかも目標機が損傷によりフレアが使えないという状況で初めて有効弾を与えたという有様。逆に言えば、無傷の共産機が相手の場合は1発のミサイルも命中しなかったということ。
因みに共産側のミサイルは4発発射して1発が命中。これまたあまり好成績ではありませんが、こちらは元々性能に劣るミサイルだった(全角度型ではない)ので、まあ仕方がない所。
その一方で今回大活躍したのが20mmバルカン砲。高偏差角射撃でもレーダーのアシストがあれば50%以上の命中率が期待できる。今回は出目にも恵まれて全ての射撃機会で命中弾を得た民国側戦闘機。やはり機関砲は重要だなぁ、と改めて感じた次第。

前回の、 Top Gunシナリオ の時に比べると、今回は機数が少なく、プレイは楽でした。またルールにも慣れてきた点が大きかったです。AirPowerは確かに複雑なゲームでプレイに時間がかかりますが、時間のかかる要因は大半がルールの確認です。それがなければ1Turnの所要時間15分というのも決して不可能ではありません。実際、今回のプレイに要した時間は、実質的には数時間。1日あれば完了できる時間です。

そういった意味で年に1回ぐらいはAirPowerをプレイし、ルールを忘れないようにしたいものです。

さて、次はどこの空で戦いましょうか。