BCS-LastBlitzKrieg-BoxArt

LAST BLITZKRIEG(以下、本作)は2016年に米MMP社から出版されたシミュレーションゲームである。テーマはあのアルデンヌ攻勢。いわゆるバルジの戦いである。1Hex=1km、1Turn=1日、1ユニットは1個大隊を現している。

本作はBCSと呼ばれる一連のシリーズ作品の1つである。BCSとは、Battalion Combat Seriesの略称で、その名の通り大隊規模ユニット同士の戦闘を描いたシリーズで、作戦戦術級のゲームである。今回は、BCSシリーズの練習ということで本作の南方シナリオを4人でプレイしてみることにした。

BCS-LastBlitzkriegMap1
BCS-LastBlitzkriegMap2
BCS-LastBlitzkriegMap3


まずBCSの基本システムについて紹介したい。
BCSはその名の通り大隊規模の戦闘を扱ったシステムである。大隊は単一兵科で構成される最大規模の編成であり、兵器間の性能の違いを表現できる規模としては最も大きな規模の単位といえる。従って大隊規模のゲームは作戦級のカテゴリーに属しながらも戦術級の色合いを強く残した作品となる。

BCSの特徴は、戦術級の色合いを強く残した戦闘システムにある。
戦闘システムは歩兵科同士の戦闘(Regular Attack)と、機甲科同士の戦闘(Engagement、所謂「戦車戦」)に区分されており、別々の戦闘結果表を使う。また歩兵と戦車の戦闘は、歩兵からの攻撃では通常の戦闘結果表を使うが、戦車からの攻撃の場合は直接射撃表(Attack by Fire)を使う。さらにオーバーラン攻撃的なShock Attack、砲爆撃を示すBarrageがあり、戦闘のタイプは5種類もある。戦闘自体は基本的には1対1で解決され、通常のゲームでよくあるような「10個のユニットで1個のユニットをタコ殴りにする」というスタイルの戦闘は実施できない。
戦闘の形式はかように複雑だが、戦闘解決自体は比較的シンプルである。例えば戦車戦(Engagement)はBCSでは「燃える」部分だが、その解決法は攻撃側と防御側の能力差をDRMとし、2d6で下表を参照して結果を求めるだけ。表を見れば理解できると思うが、攻防で能力差がなければ勝敗の可能性は五分五分である。

BCS-EngagementTable

戦闘システムでもう1つの特徴は「支援」の概念である。これは例えば対戦車砲や駆逐戦車といった兵科をフォーメーション(師団や旅団、戦闘団等の上部組織)に直接割り付けることができる。こうしておくと、これらの特殊兵科を各部隊に割り付けることができる。現実に当てはめると、例えば1個大隊の対戦車砲を小隊規模に分割し、各歩兵大隊に付属させるというイメージである。この部分の概念がルールの読みやすさを妨げているが、ルールが目指している概念が理解できると合理的な考え方に思えてくる。そもそも対戦車砲のような特殊兵科を大隊規模で集中運用しても、あまり効果はなく(敵から見れば集中配備個所を避けて通るなり、砲兵火力を集中して制圧してしまえばよいだけ)、それよりも分散配置した方が効果は高い。

BCS-Activation

話が前後するが、BCSでのゲームの流れを紹介したい。
BCSはフォーメーション単位で活性化し、敵味方が交互に活性化する。各フォーメーションは1Turnに1回ずつ活性化でき(他に追加活性化の概念があるが、話が複雑になるのでここでは省略する)、両軍全てのフォーメーションが活性化するとTurn終了となる。
フォーメーションが活性化すると、最初にSNAFUチェックを行う。このSNAFUチェックというのが我々から見ると少し馴染みにくい言葉だが、「活性化チェック」という言葉の方がしっくりくる。何をするかと言えば、2d6を振り、出目2で活性化失敗、3-6で部分活性化、7以上で完全活性化となる。普通の出目なら完全活性化できそうだが、出目が悪いと部分活性化になる。また補給状況が悪いとか、疲労が溜まっているとかで不利なDRMが適用されるので、状況によっては活性化に失敗する可能性が高まる場合もある。
活性化に成功すれば、ユニット1個ずつ移動する。移動途中で戦闘をするが、条件によっては移動終了になる。あるユニットの移動が終了すると、次のユニットが移動することになり、全部のユニットの移動が終われば、フォーメーションの活性化が終了する。

BCS-SNAFURoll

補給ルールもユニークである。後方から司令部に補給線をつなぎ、司令部から各部隊に補給線をつなぐのは一般的なゲームと同じだが、BCSにはCombat Train(補給段列)と呼ばれる専用の補給部隊が登場する。Combat Trainはフォーメーション別に与えられており、理想的には司令部の後方5~15Hexに位置している。また複数の司令部からなる補給ラインが交錯していると補給状況が悪化するという凝りよう。ルールはシンプルながらも補給線を分離して管理する重要性をさりげなく表現している。
下図はドイツ第7軍の各部隊への補給線を示している。画面右側に展開する276VGと212VGは補給線が個別に設定されているので補給線の交錯はないが、352VGと5FJは補給線が交錯しており、SMAFUロールで不利なDRMが適用される。

BCS-MSR

その他にも複数のフォーメーションが戦闘地域が重なっていれば不利な修正が適用されたり、司令部の指揮範囲からの自主的な逸脱は認められていないなど、いわゆる「ゲーム的な運用」を抑制する仕掛けが散りばめられており、好感が持てる。
ルールの量が多く、ルールブックの書き方も決して良いとは言えないためルールを読んだだけでは良く分からないゲームではあるが、一度プレイしてみるとシステム自体が自然に組まれているので理解できる。


さてここまでBCSのゲームシステムを紹介してきた。ここからは実際にプレイした内容を紹介してみたい。とはいえ、今回のプレイは練習プレイであったため僅か3Turn程度しか進まなかった。以下はセットアップ時の状況である。

写真00
写真01

第1Turnは1944年12月16日。バルジの戦いと呼ばれるアルデンヌ攻勢の初日である。
ドイツ軍はオウル川(Our.R)にかかる橋が全て落されているため、戦車を渡河させることができない。しかし歩兵はゴムボートで渡河できる。しかも奇襲効果でボート利用による余分な移動力消費が発生しない。自然、最初の1日目は歩兵部隊が川を渡り、渡河点を確保して橋の修理完了を待つことになる。
ドイツ軍は南部右翼から第352国民擲弾兵師団がオウル川を渡河して西方へ前進。米軍の第28歩兵師団と第4歩兵師団の間を分断する。その左側面は第276、第212国民擲弾兵2個師団も前進するが、練度の低い国民擲弾兵なので左程激しくは前進できない。

写真02

第2Turn、オウル川の橋の修理が終わると、ドイツ軍第2装甲師団、戦車教導師団が歩兵部隊を超越して前線へ躍進する。部隊同士が混淆すると厳しいペナルティが適用されるBCSでは、装甲部隊が友軍歩兵部隊を超越して前進するのは容易ではない。それでもドイツ軍装甲部隊は友軍歩兵部隊を躍進して前進。クレルボー(Clervaux)付近で米第28歩兵師団の一部を拘束したのち、さらにその後方約20kmの要域バストーニュ(Bastogne)に突入する。
最終的には第3Turn(12月18日)に戦車教導師団の先鋒部隊がバストーニュに到達。急遽増援に現れた米第101空挺師団の部隊を攻撃するも、これを撃破できなかった。

写真03

そんなこんなで今回の練習プレイは終了である。プレイ時間は約9時間。しかし途中の半分以上は無駄なお喋り時間だったので、プレイに専念すればもっと進んだと思う。

感想については既に何度か述べているが、BCSのシステムが非常に合理的なものなので感心した。確かにルールは多いが、決してプレイ不可能という訳ではなく、十分にプレイ可能な難易度である。またプレイ時間についても、1日のプレイで3~4Turn、2日間プレイなら6~8Turnぐらいは進みそうだ。同テーマの傑作であるシモニッチ・デザインの「Ardeness'44」でも2日間プレイなら精々10Turnぐらいなので、それよりもこちらの方が進みが良さそうだ(BCSは1Turn1日で、Ardeness'44は1Turn半日)。

今回は練習プレイということでホンの触りの部分をプレイしただけであったが、次回はキャンペーンシナリオに挑戦してみたい。