Blue Water Navy(以下、本作)は、米Compass Games社が2019年に発売したシミュレーションゲームだ。テーマは1980年代における西半球全域を舞台とした米ソ両陣営の海上戦闘で、実際には起こらなかった第3次世界大戦を扱った仮想戦ゲームである。
本作の概要については、以下の動画でも示されているので、参照されたい。
これまでにも本作については、何度か紹介してきたが、それらはいずれもVASSALによる遠隔対戦又はVASSALを使ったソロプレイであった。
そこで今回、初めて本作の対面での対戦が実現した。シナリオは1983年の戦術的奇襲である。私はソ連側を担当した。
1日目
ソ連側が開戦と同時に「KGBによる要人暗殺」を企てた。これは4OP消費するというコストの高いものだが、NATOの手札で最も強力なカードを捨て札とさせることができ、さらにこの日にNATOが使用できるOP値が6OPまで減ってしまうというものだ。これによって序盤におけるソ連側の優位が確立された。ソ連側は巡航ミサイル潜水艦(SSGN/SSG)を使って英本土の基地を攻撃する。攻撃は成功し、基地は一時的に使用不能となった。大西洋上にはソ連海軍最新鋭のヴィクター3型攻撃原潜(SSN)が展開し、NATOの輸送船団を追いかける。その1隻がNATOの輸送船団を捕捉し、英海軍の軽空母「イラストリアス」を雷撃した。しかし「イラストリアス」のプレリー・マスカーが奏功し、魚雷回避に成功。「イラストリアス」の艦上では「ルール・ブリタニア」の歌声が響き渡ったという。
2日目
ソ連軍はキューバに爆撃機2個連隊を展開させた。このキューバ派遣航空隊が今回の戦いで大活躍を見せることになる。米軍はキューバ航空隊の動きを封じるべく、米本土を発進したF-15部隊でキューバ上空での制空任務を実施する。それに対してキューバ攻撃隊も米本土の空軍基地を巡航ミサイルで攻撃し、ローテーション中のF-15を地上で破壊した。NATO側は米本土攻撃に対する報復としてソ連本土のコラ半島を巡航ミサイルで攻撃する。コラ半島の基地群は損害を受けたが、これは結果的にはNATOにとっては失敗だったと言えよう。この攻撃で「第1撃ポイント」(FSP)を1ポイント獲得したソ連軍は、海上での戦術核兵器が使用可能となったからである(別にイベントカードを使って2FSPを既に獲得していた)。デザイナー氏も書いているが、コラ半島への直接攻撃は、NATOにとっても状況の不安定化を招くことになるので、その実施には慎重な判断が必要となるだろう。
ヨーロッパ方面では、バルト海でソ連軍のTu16Gバジャー爆撃機2個連隊が西ドイツのNATO航空基地を攻撃。航空基地に打撃を与えて一時的に使用不能とした。またソ連の北方艦隊が北部ノルウェーのボーデに上陸作戦を敢行。ソ連軍の地上部隊がボーデに橋頭保を獲得した。
3日目
スペイン沖の地中海を航行中のNATO船団がキューバを発進した長距離爆撃機Tu95ベアのミサイル攻撃を受けた。この船団はスペイン空母「デダロ」と数隻の水上艦によって護衛されていたが、数十発の対艦ミサイル同時攻撃を防ぐには威力不足であった。10発以上の対艦ミサイルが防空網を潜り抜けて船団に到達したが、そのうちの3発には800ktという高威力の核弾頭が装備されていた。3発の核弾頭が船団の各所で炸裂。これによってNATO船団は大損害を被った。空母「デダロ」は轟沈し、護衛艦艇もその大半が大破又は沈没してしまう。船団そのものも半数以上が沈没し、沈没を免れた船舶もその多くが大破していた。ソ連軍は遂に「使ってはいけない」兵器を使ってしまったのである。
本作ではソ連軍のみが海上での戦術核兵器使用が認められている。戦術核兵器を使用するためには、「第一撃ポイント」(FSP)を3FSP消費しなければならない。ゲーム開始時時点でのFSPは0なので、ソ連軍はFSPを蓄えていく必要がある。今回のプレイではイベントカードで2FSPを獲得し、さらにNATO軍がコラ半島を爆撃したことにより1FSPを獲得した。NATOの立場で言えば、ソ連側に戦術核兵器を使わせないため、FSPの獲得量には注意を払う必要がある。
ちなみにNATO側は海上で核兵器を使用できない。NATO側は核兵器ではなく精密誘導兵器による攻撃に資源を集中投入していた、というのがデザイナーの見解であるらしい。また海上での核兵器はそれなりに強力ではあるが、決定的なものではなく、海上におけるNATOの優位を崩す程のものではない。
バルト海では、デンマーク侵攻を目指すソ連軍輸送船団が出航。空母「キエフ」、打撃巡洋艦「キーロフ」を含む強力な艦隊による援護を受けてバルト海を進む。それを攻撃するのはバルト海で活動する西ドイツ海軍のUボート部隊である。小型潜水艦を主力とする部隊であるが、数が集まると侮れない。執拗な攻撃を受けたソ連バルチック艦隊は、デンマークへの侵攻を諦めて東へ向けて後退していく。
4日目
禁断の兵器に手を染めたソ連軍は、大西洋各地で戦術核攻撃を繰り返す。しかしNATO艦隊もさるもの。強力な艦隊防空火力と対潜能力を生かしてソ連航空機や潜水艦の攻撃を再三に渡って跳ね返していた。強力な核ミサイル、核魚雷といえども、目標に到達しなければ意味がない。そんな中、キューバを発進したバックファイアとバジャーの合同編隊がカナダ、ハリファックス近海を進むNATO輸送船団を捉えた。約100発の対艦ミサイルが発射されたが、その約3割が核弾頭搭載型である。対空ミサイルを潜り抜けた対艦ミサイルがNATO船団で炸裂。核攻撃に備えて広く散開していたNATO船団であったが、それでも輸送船15隻が沈没し、さらに戦艦「ニュージャージ」「アイオワ」も複数の核ミサイルによる直撃を受けて轟沈した。
米本土近海でパトロール中のソ連軍弾道ミサイル潜水艦。これまでも米本土に無言の圧力を加え続けていたが、米軍の激しい対潜攻撃を受けて既に半数が海の藻屑になっていた。そこで米国に対する圧力を継続するため、ソ連海軍は最新鋭のタイフーン型弾道ミサイル原潜(SSBN)を米本土東岸沖に派遣することに決定した。
つづく
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