220626_HAYST

事例とツールで学ぶHAYST法

秋山浩一 日科技連

本書は、直交表を利用したソフトウェアテスト技法として知られているHAYST法について、現場での運用事例や関連ツールを紹介した書籍である。HAYST法が発表されたのが2008年。発表された当時は一世を風靡した(当社新人研修発表会でも紹介されたりしている)が、当社も含めて業界で普及しているとは言えない。その理由として技術的な難解さ(直交表を完全に理解しているソフトウェアエンジニアが何人いるのか…)やHAYST法自体が手間がかかる点がある。本書では、HAYST法の技術的内容を説明しつつ、実際にHAYST法を使ったテスト設計の事例を紹介している。
HAYST法については既に知っていたので目新しい所はなかったが、マインドマップを使ったテスト設計が紹介されており、これは使えると思った。また本書の考え方は「非機能テストは重視せず機能テストを重視する」というものであったが、これは同じ日に視聴したVALTESの講演内容とは真逆の考え方であり、興味深かった。
HAYST法についていえば、2010頃の機能自体が少ない組込系のテストへ適用する際には有用な技法であったが、今日のように機能が増大したシステム(例えばIoT)へのテストへ適用するにはあまり有用ではないように思えた。今日では組込系のシステムであっても10年前とは比較にならないほど厖大な機能を有している。そのような状況下で網羅性の高いテストを実施し、不具合流出を防ぐためには、HAYST法だけでは十分ではないという思いがよぎる。このあたり、確信ではないので、他の論文等も調べてみたい。

お奨め度★★★