日米の戦艦比較において、日本側有利説支持者が良く持ち出す説に、散布界の優越がある。
これは、
「日本戦艦による主砲射撃の散布界は米戦艦のよりも小さいから、日本戦艦の主砲命中率が優れている」
というものだ。
この説については、日本側の散布界が優れているという明白な根拠はないし、日本側の戦闘記録の中でも
「敵側の散布界は良好である」
と述べているのをいくつか見つけることができる。
が、まあ、そのことはここでの本題ではない。夢を見たければ見れば宜しい。

それより今回問題にしたいの、砲弾の散布界についてある種の誤解があるように思えるのである。
それは、
発射された砲弾は散布界の中で一様に広がる
というものだ。
この説によれば、夾叉後の被弾確率は目標の被弾面積に比例する。
そのため被弾面積の小さい駆逐艦等はとんでもなく当てにくい目標になる。
が、
この理論は誤りである。
すなわち、射爆理論によれば
砲弾はある点を中心に正規分布状なパターンを描くのを常とする。
この理論によっても小型目標に対する命中率が低くなることには違いがない。
しかし目標の大きさが命中率に与える影響はやや軽減される。
それは一度でも正規分布曲線を見た人ならば明白だろう。

繰り返す。
砲弾は散布界の中で一様に広がるのではなく、正規分布上のパターンを示す