某サイトにおけるレーダー射撃の議論はひとまず落ち着いたみたいだ。
あの議論でのテーマの1つはレーダーの計測精度であった。

今日は、計測精度の1つである方位計測精度について、少し考察してみたい。

すなわち、

本当にビーム幅以下の方位計測精度は得られないのか?


今回の議論でビーム幅と方位計測精度の関係が1つのテーマとなった。全般的には「理論上はレーダーの方位計測精度はビーム幅以下にはならない」という意見が大勢を占めた。私は、「受信感度差を利用したり、その他の工夫を行うことでビーム幅以下の方位計測精度を実現できる」と主張したが、いささかパンチの弱いものであった。何故なら私自身がどのような方法でビーム幅以下の方位計測精度を実現しているのかが想像できなかったからだ。

しかしビーム幅以下の方位計測精度を得ることって、そんなに困難なことなのだろうか?。

よく考えてみてほしい。レーダーアンテナは常に回転(又は首振り)しているのだ。

以下の例を考えてみよう。

(例)戦艦アイオワがビーム幅0.9度(16ミル)のMk-13レーダーで真方位010度、距離3万ヤードの目標を計測する。(ちなみにここで距離3万は、議論を進めて行く上で意味を持たない)

ここでアイオワのレーダーが時計回りに走査する場合を想定しよう。
左から右へ回転するMK-13は、アンテナ方位が9.55度(10-0.45)の時に初めて目標の微弱な反射信号を得る。
その瞬間、レーダー操作員が見つめるBスコープ上では、距離3万、方位角9.55度で小さなエコーが発生する。エコーはそのまま右方向へ伸びて行く。徐々に大きくなりながら。
MK-13はそのまま回転を続け、アンテナ方位が10度の時に最大の信号強度を得る。
その瞬間、Bスコープ上ではエコーの長さが8ミルに達し、エコーも明瞭になっている。
MK-13はそのまま回転を続け、アンテナ方位が10.45度を越えた瞬間に目標の反射を失う。
そのときBスコープ上ではエコーの長さが16ミルに達するが、右端のエコーは微弱となり、それ以上右には伸びていかない。
その時のレーダーエコーの形状は、送受信感度の違いを反映して横においたピーナツのような形状になるだろう。

そう。もうおわかりだろう。ビーム幅0.9度のレーダーで目標を計測する場合、エコーの長さは確かに約16ミルになる。しかし、これは「最大8ミルの誤差がある」ということにはならない。何故ならエコーの中心は常に目標の正しい方位角を示しているのだから。
こう考えると別に受信感度を利用しなくてもBスコープ上には正しい目標方位が常に表示されていることになる。なるほど、ビーム幅の影響があるから目標は実際よりも大きく見えるかもしれない。でも目標の正しい方位は常にエコーの中心にあるはずなのだ。

ではMK-13で弾着観測をする場合はどうなるだろうか?。
アイオワの放った9発の16インチSHSは、およそ300メートルの散布界を描いて目標の周辺に着弾したとしよう。
着弾の瞬間、Mk-13のBスコープ上には次々と小さな「ピーナツ」のようなものが現れる。着弾時の水柱だ。水柱のレーダー反射面積は小さいので、Bスコープ上でも16ミルの広がりにはならない。もっと小さく見えるはずだ。。
着弾によって生じた小さなエコーは、あるいは目標のエコーと重なり、あるいは目標の周辺に小さな模様を描く。レーダー計測員はそれを見て着弾状況を評価し、砲術長に報告。それを受けて砲術長は「そのまま」「あげ100」「左3ミル」などと修正指示を出す・・・。
とまあ、こんな感じに推移するのではないだろうか。

カタログスペックによれば「MK-13の測角精度は2ミル又はそれより良好」だという。また「アライメントが正確に行われていれば1ミルに達するかも知れない」とも書かれている。これを実現するためには「何か特別な細工がいるのか」と当の私も考えた。でもなんのことはない。
何もしなくてもBスコープ上には常に精度の高い計測結果が表示されているのだ。

我々3人全員が、専門家(e氏)という名の幻影に惑わされていたのかも知れない。

(と、ここまで書いてみたが、「でもやっぱり間違っているかも知れない」という不安がある。もう少し調べてみようとは思う)

議論の詳細は以下のサイト参照
http://homepage2.nifty.com/trajan/bbs/
「ヒストリカル・ウォーゲーム会議室」#4571以下の議論

Mk-13レーダーの性能については下記参照
http://www.eugeneleeslover.com/USNAVY/CHAPTER-20-G.html