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(写真1)雷撃関連のチャート類
(写真2)ルールブックより

デザイナーズノート(3/3)


雷撃戦ルール


魚雷は、艦砲と並んで水上戦闘における主要な打撃兵器です。特に夜間の戦闘では、接近戦が多くなることもあり、魚雷はしばしば艦砲以上の威力を示しました。
従来のゲームを見てみると、魚雷に関するルールは、「発射と同時に命中判定を行うタイプ」と実際に「魚雷が航走して命中判定を行うタイプ」との2種類がありました。前者は国際通信社の「戦艦の戦い」、後者は同じく国際通信社の「デストロイヤーキャプテン」がこれに相当します。サンセットの「聯合艦隊」では、両方のタイプの魚雷ルールが提案されていました。
まず「実際に魚雷が航走するタイプ」について考えてみましょう。この方式は、魚雷射点占位運動や魚雷回避運動を実際に盤上で再現できるというのが大きな利点です。そのためかこの方式を支持する人は今も少なくありません。しかしこの方式にはいくつかの欠点があります。1つはプレイアビリティを大きく阻害することです。両軍合わせて20隻前後の艦艇が走り回る戦場において、各艦の発射した魚雷の位置管理を行うのは容易なことではありません。魚雷マーカーを使えば管理は比較的容易になりますが、そうなると今度は魚雷位置を隠匿できなくなり、相手側の魚雷回避を極めて容易なものとしてしまいます。
もう1つの欠点は魚雷の動きがヘクスの並びによって制限されることです。実際の世界で魚雷を発射する際には、目標艦を包み込むような扇形に魚雷を発射するのが普通です。しかしヘクスを使ったボードゲームでそのような雷撃戦術を再現するのは困難です。そのためゲーム上のプレイヤーは、目標艦の未来位置を読みきった上での魚雷発射が要求されますが、そのような能力は実際の世界で魚雷発射を行う際に必要とされる技能ではありません。まして水上戦ゲームでプレイヤーが演じるのは艦隊指揮官です。艦隊指揮官に要求される能力は、麾下艦艇を魚雷発射位置に占位させること、あるいは敵が行うであろう魚雷発射運動を妨害することです。決して「相手の動きを読みきって魚雷を発射すること」ではないはずです。
それではもう一方のシステム、すなわち「魚雷発射後即座に命中判定を行うシステム」が優れているのか、といえば、こちらにもまた欠点があります。一番の欠点は「射点占位運動」が正しく再現できないことです。実際の世界では、魚雷発射を行う場合敵艦の斜め前方から発射するのが最良とされています。斜め後方からの発射の場合、魚雷が目標艦に追いつくまでに時間がかかってしまい、その分照準が不正確になり相手に回避の余裕を与えてしまいます。真正面からの発射では目標の被弾面積が小さくなります。後方からの発射が不利なことは説明するまでもないでしょう。しかし「発射即判定」式のゲームでは、多くの場合、この非常に重要なテーマである魚雷射点占位の問題が殆ど考慮されていないのです。その他にも、魚雷回避運動が再現されないこと、遠距離発射した魚雷が即座に目標に到達してしまう不自然さなど、「発射即命中」方式にもいくつかの欠点が存在します。
本ゲームの場合では、魚雷マーカーを使用した「実際に魚雷が航行していく」タイプのシステムを採用しました。しかし従来のシステムとは異なるいくつかの特徴を備えています。その1つは「魚雷があたかも誘導魚雷のように目標を追尾していく」ということです。言うまでもないことですが、これは別に誘導魚雷を再現するためのルールではありません(ソロモン海の夜戦で誘導魚雷が使用された事実は、現在の所確認されていません)。これは魚雷の命中可能範囲を抽象的に表現するためのルールなのです。このルールのおかげで、魚雷を発射するプレイヤーは、「相手艦の動きを読みきって発射する」という意味のない頭脳労働から解放されました。そして艦隊指揮官を演じるプレイヤーが本来頭を使うべき問題、すなわち魚雷発射位置への占位やその妨害に思考を集中できるようになったのです。さらに本ルールは、魚雷の隠密発射ルールを不要なものとし、それは結果的にプレイアビリティの向上に大きく貢献することになりました。その一方で「発射即命中判定」方式が持ついくつかの欠点、特に射点占位運動が無意味になるという欠点は、本ゲームではありません。
また、本ゲームの雷撃戦ルールでは、いわゆる「フェイント発射」を比較的簡単なルールで表現することができました。実際、英独海軍が戦ったバレンツ海海戦では、英駆逐艦の発射偽装運動が独艦隊を大いに悩ませました。また太平洋戦域でも、例えばサマール島沖海戦で米駆逐艦の行う発射偽装行動が日本艦隊を大いに悩ませたことが知られています。これを「発射即命中判定」方式で再現することはほぼ不可能です。実際に魚雷が航走していくタイプでは偽装発射を再現することは可能ですが、そのためにはプレイアビリティを大きく犠牲にしなくてはなりません。
魚雷が味方艦の存在するヘクスへ優先的に進入しなければならないルールについて一言(注)。これは魚雷戦にありがちな味方打ちを再現するためのルールです。実際の魚雷戦で味方打ちの事例はそれほど多く報告されてはいませんが(むしろ砲撃戦における味方打ちの方が事例は遥かに多い)、乱戦では味方打ちを避ける意味で雷撃を控える傾向にあったのは事実です。本ルールは、乱戦時における魚雷の使いにくさを簡単なルールで再現するためのものです。

(注)本ゲームでは、航走中の魚雷が味方艦の隣接ヘクスに到達した場合、味方艦を優先的に攻撃しなければならない、というルールがあります。

最後に


この「ソロモン夜襲戦」は今までにはない水上戦ゲームです。特に指揮ポイントのルールは、従来殆ど省みられなかった夜間水上戦闘における指揮統制問題について、初めて光を当てたルールです。しかもプレイアビリティを大きく損なうことなしにです。
新しい考え方に基づいてデザインされたこのゲーム。是非に一度プレイして頂きたく思います。

(おわり)