ちょっと堅苦しい話で恐縮ですが・・・。

空白の天気図

 空白の天気図 柳田邦男 新潮文庫
 終戦直後の1945年9月17日、広島を襲った枕崎台風の惨劇を克明に記録したノンフィクションである。
 本書の主人公は広島気象台に勤める職員達である。彼らを軸に8月6日の原子爆弾攻撃、焦土と化した広島での復旧活動、放射能によって次々と倒れる職員達、終戦による精神的ダメージ、平和な時代への希望、そして広島地方を襲った未曾有の大台風とその被害が詳細に記録されている。特に原爆攻撃の直接的な被害とその後の放射能による被害(いわゆる「黒い雨」)は僕に新しい目を開かせてくれた。その悲惨さを強調するが余りセンセーショナルで感情的になりがちな原爆ものではあるが、本書はあくまでも冷静な視点を崩さず、それでいて原爆の悲惨さを良く伝えている好著である。また文章も読みやすく面白くスラスラと読み進むことができた。さすがはノンフィクション作家の第一人者たる柳田邦男である。僕の次回の旅行は広島方面に決めた。広島をもう一度、この自分の目で確かめたい。そう思った。

 ちなみに、上記の文章を書いたのは今から6年以上前の夏である。何故今頃こんな古い本を紹介するかは以下の文章を読んでいただきたい。
 最近は大和ブームで呉の「大和ミュージアム」や尾道のロケセットが話題になっている。そのことを批判するつもりは毛頭ない。でも呉から電車でわずか30分で広島である。広島には原爆ドームや平和記念資料館がある。「大和」を見たついででも良いから、ヒロシマを尋ねてみて、そこで原爆についても少し考えて欲しいな。そう思った。
 センチメンタルな平和主義に組するつもりは全くない。原爆投下の是非についても他者と議論するつもりは全くない(自分の中では色々と考えるが)。でもたまには兵器の表面的な「カッコ良さ」から離れ、兵器の本質について考えてみるのも悪くないと思う。ヒロシマは呉のすぐ隣町なのだから。

 堅苦しい話でごめんなさい。

評価★★★★★