(写真1)米空母Hornet(CV-12)、Essex級空母の1艦である本艦は、特攻機の命中を1度も受けなかった数少ない米正規空母の1隻となった。
(写真2)対空射撃訓練を行うHornetの40mm4連装機関砲
(写真2)対空射撃訓練を行うHornetの40mm4連装機関砲
興味深い史料を見つけました。
タイトルは「BATTLE EXPERIENCE - BATTLE FOR LEYTE GULF」。訳すると「レイテ湾海戦における戦闘経験」とでもなるのでしょうか?。レイテ戦における米軍の戦訓をまとめた資料だと解釈できるように思います。日付は1945年4月1日ですから、レイテ海戦から半年以内にまとめた資料ということになるのでしょう。そういった意味からは極めて史料性の高い内容だと理解することができます。
前回は、米軍のレーダーを追ってみました。今回は米軍の対空射撃について考察することにします。
1.以下のことを勧告する。許容限度である18基の4連装40mm機関砲を可及的速やかに搭載するべきである。現状では右舷艦首方向全域をカバーしているのはたった1基の40mm機関砲だけである。
2.レーダーを搭載した最新型の40mm機関砲用方位盤の存在は、空母による対空防御を成功させるための必要条件であるように思える。
また空母Hornetは20mm機関砲の価値について疑問を呈しています。2.レーダーを搭載した最新型の40mm機関砲用方位盤の存在は、空母による対空防御を成功させるための必要条件であるように思える。
1.夜間戦闘における20mm機関砲の価値は、既に火災を起こし照準しやすくなっている目標に対して以外は未だに疑問が多い。夜間の目標に対して、それらは艦のアウトラインを明らかにし、接近する航空機に美味しい目標を示すだけに過ぎない。しかし10月13日の夜間戦闘では、外周駆逐艦の射撃によって既に火災を起こしていたFrances(「銀河」)に対して正確かつ重厚な射撃が命中した。
戦闘実績
第13巡洋艦戦隊は自分達の対空戦闘について以下のようにコメントしています。
1.全般的には、任務群(Task Group)の対空能力は満足すべきものであった。我々は多数の敵機による波状攻撃を受けたが、多くの場合艦隊の正確な対空射撃がそれを撃退した。そして少なくとも3機を対空射撃のみで破壊している。
2.10月15日の午後に単独の敵機が我が艦隊を攻撃できたことは、その大半が単に敵パイロットの勇気と断固たる努力によるものに過ぎない。これらの両方の航空機は進入中に既に損傷を被っていたと信じられる。それにも関わらず両機は魚雷投下に成功し、最初の魚雷は正しく疾走し、それはHoustonに命中した。
3.Houstonを攻撃したFrances(銀河)は、退避中に徐々に高度を失い、そして艦隊外周から8000-10000ヤードの距離に墜落した。その時炎や爆発は確認されなかった。Santa Feを攻撃したJill(天山)は翼がひっくり返り、パイロットが艦の上部構造物を破壊しようと努力しているように見えた。それは艦首のすぐ近くに墜落した。それは海面上に突っ込み、ぐるりと回転して、激しい爆発を起こした。
(中略)
5.タスクグループの艦による完全レーダー管制による対空射撃は、目標仰角を決定し追尾することができる新しい機材が導入されるまでは、しばらく不満足な状況が続くであろう。
2.10月15日の午後に単独の敵機が我が艦隊を攻撃できたことは、その大半が単に敵パイロットの勇気と断固たる努力によるものに過ぎない。これらの両方の航空機は進入中に既に損傷を被っていたと信じられる。それにも関わらず両機は魚雷投下に成功し、最初の魚雷は正しく疾走し、それはHoustonに命中した。
3.Houstonを攻撃したFrances(銀河)は、退避中に徐々に高度を失い、そして艦隊外周から8000-10000ヤードの距離に墜落した。その時炎や爆発は確認されなかった。Santa Feを攻撃したJill(天山)は翼がひっくり返り、パイロットが艦の上部構造物を破壊しようと努力しているように見えた。それは艦首のすぐ近くに墜落した。それは海面上に突っ込み、ぐるりと回転して、激しい爆発を起こした。
(中略)
5.タスクグループの艦による完全レーダー管制による対空射撃は、目標仰角を決定し追尾することができる新しい機材が導入されるまでは、しばらく不満足な状況が続くであろう。
レーダー機材
レーダー機材の話が出たついでに、空母Hornetが非常に興味深いコメントを残しているので紹介します。
1.より良いレーダー機材が夜間における敵機の攻撃に対抗するために大至急必要である。現在生産に入ろうとしている5インチ砲用の新しいMark 12レーダーと40mm機関砲用のMark 17レーダーは、夜間目標を捕捉し妥当な命中率を発揮させるために射撃照準の正確性を向上する必要がある。10月12日から15日の間、5機の敵機が高度約6000ftで真っ直ぐこちらに向かってくるのを追跡した。距離約6000ヤードで5インチ砲による射撃を開始し、5機中4機の敵機を針路を逸らせたが、良好な解析値(good solutions)が得られたにもかかわらず命中したという確証は得られなかった。もし夜間射撃における成功を期待するのなら、レーダー装置は光学装置に迫るほどの精度が必要である。
2.対空射撃管制レーダーは、捜索レーダーが使用しているものに類似したIFF装置を装備するのが望ましい。いくつかの機会において、FDレーダーに探知されたながらも捜索レーダーによっては探知されなかった航空機が存在したが、その時分厚い雲や夜間のために敵味方識別が不確実であったために射撃できなかった。レーダーにより航空機を追跡することの利点は、友軍機が近傍にいる時は事実上無効にされた。
3.本艦においては40mm4連装は5インチ砲用の射撃管制システムに接続することができたにも関わらず、Mark 4レーダー固有の不正確さは、自動射撃を制御するためのこの射撃管制方式の価値を曖昧なものにした。40mm4連装機関砲の照準用としてMark 14照準器を使用するのに依存する方がより良い方法に思える。
4.Mark 4 FDレーダーは、前もって捜索レーダーによって探知されている目標を追跡する際に大変効果的であることを証明した。射撃管制レーダーは、CICにいる火砲レーダー連絡士官(Gunnery Radar Liaison Officer)によって大きなボード上のプロットから目標を指示された。このシステムは、捜索レーダーから直接5インチ砲に方位を指示されるシステムより好まれた。なぜなら、それは砲の代表者に対して、個々の5インチ砲に追跡可能な目標を決定させたり、もしコースの変更が必要な場合に目標をシフトすることを可能としているからだ。
5.10月15日の午後、1機のJudy(彗星)が距離22マイルの厚い雲の中でFDレーダーによって追尾された。その敵機は、事前に捜索レーダーによって発見され、その後捜索レーダーロストしていた目標である。敵機が本艦に接近してきた時、それは双眼鏡によって雲の中に捕捉され、対空火器は射撃準備をした。目標が近傍の開けた空域から急降下してきた時、すべての火砲は準備完了し、効果的な射撃を行った。敵機の投じた爆弾は300ヤード右舷側に落下し、右舷6マイルに撃墜された。
IFFに関する記述については後日紹介する機会があると思います。ここでは米軍が対空射撃用レーダーにもIFFを搭載しようとしている事実に驚きました。2.対空射撃管制レーダーは、捜索レーダーが使用しているものに類似したIFF装置を装備するのが望ましい。いくつかの機会において、FDレーダーに探知されたながらも捜索レーダーによっては探知されなかった航空機が存在したが、その時分厚い雲や夜間のために敵味方識別が不確実であったために射撃できなかった。レーダーにより航空機を追跡することの利点は、友軍機が近傍にいる時は事実上無効にされた。
3.本艦においては40mm4連装は5インチ砲用の射撃管制システムに接続することができたにも関わらず、Mark 4レーダー固有の不正確さは、自動射撃を制御するためのこの射撃管制方式の価値を曖昧なものにした。40mm4連装機関砲の照準用としてMark 14照準器を使用するのに依存する方がより良い方法に思える。
4.Mark 4 FDレーダーは、前もって捜索レーダーによって探知されている目標を追跡する際に大変効果的であることを証明した。射撃管制レーダーは、CICにいる火砲レーダー連絡士官(Gunnery Radar Liaison Officer)によって大きなボード上のプロットから目標を指示された。このシステムは、捜索レーダーから直接5インチ砲に方位を指示されるシステムより好まれた。なぜなら、それは砲の代表者に対して、個々の5インチ砲に追跡可能な目標を決定させたり、もしコースの変更が必要な場合に目標をシフトすることを可能としているからだ。
5.10月15日の午後、1機のJudy(彗星)が距離22マイルの厚い雲の中でFDレーダーによって追尾された。その敵機は、事前に捜索レーダーによって発見され、その後捜索レーダーロストしていた目標である。敵機が本艦に接近してきた時、それは双眼鏡によって雲の中に捕捉され、対空火器は射撃準備をした。目標が近傍の開けた空域から急降下してきた時、すべての火砲は準備完了し、効果的な射撃を行った。敵機の投じた爆弾は300ヤード右舷側に落下し、右舷6マイルに撃墜された。
[上官の見解]
すべてのレーダーを使用して統合するのは本質である。レーダーは設計限界の範囲内のすべての情報を与えるだろう。
すべてのレーダーを使用して統合するのは本質である。レーダーは設計限界の範囲内のすべての情報を与えるだろう。
1.敵機に対して緊急に射撃実施できるように準備することに際して他に考慮すべきことは、もちろん、射程距離内で探知することである。Task Group 38.4の指揮官より発せられた指示は、このあたりの事情を以下のように示している。
空母Hornetは以下のようなコメントを残しています。
「準備せよ。武器や装備は、天候や海洋条件が許す限りの高い準備状態を維持せよ。良好な天候では、自動火器のgun coverは取り外し、gun portは開き、弾薬保管庫はundog状態にせよ。昼間において、手動操作の5インチ以下の火砲については、"Action Port(Starboard)"が指示された後、15秒以内にローカル制御モードで射撃開始できることを標準許容時間とせよ」
2.上の要求を満足するための方法は、個々の指揮官に大きく依存するしかなかった。自動火器の場合、昼間や薄暮で敵機の攻撃を受ける可能性のある海域を行動する場合、準備許容条件は少なくとも2基の前方向き20mm機関砲と2基の後方用20mmがmagazineがmountされた状態でcockを維持していることだと見なされていた。(以下略)
10月12日~15日の期間に行なわれた射撃訓練では、最も過酷な条件下でされexcellentとみなされた。射撃開始と終了は命令の元即座に行なわれた。そして友軍機は認識手続きが行なわれなかった時でさえ免役を楽しみ?、脅威となる敵が艦船の砲火の射程距離内で任務遂行するのを妨害しようと運動した。すべてのgun pointerとgun director operatorにとって目標識別の訓練は、射撃訓練の高い要求に大いに貢献するものであるとみなされていた。
射撃制限
空母Hornetのコメントを続けます。
1.昼間、敵機が近傍にいる時に"Hold Fire"を行う場合、指揮官に対して不必要な制約を課することになる。彼の部下達は雲間から急接近してくる航空機を敵か味方か識別する能力を実証していたのだ。もし敵機が攻撃を開始すれば砲塔群が射撃を開始すると予想される。しかし急降下爆撃機による奇襲攻撃はそれを義務的なものにする。本艦を攻撃する敵機に対して射撃を開始する権限は、もし艦に対する損害を回避するためであれば、反応できる士官達や砲のパーティオフィサーに委譲される。乗員の多くが負傷しさらに艦が相当期間に渡って戦列を離れることになるかもしれない本艦損傷の可能性は、友軍航空機誤射の可能性と比較されなければならない。
2.夜間における5インチ砲に関する制約は修正されるべきである。中隊の艦船がそれを見て回避できる場合、あるいはスクリーンが著しく消耗し防護を殆ど展開できなくなった場合。より良く訓練された5インチ火器管制チームは、その射撃がスクリーン内の他の艦船に危険なほど近づいているか否かをチェックできる。
3.指揮官は、良く訓練されたよるあらゆる種類の砲塔による射撃に対して制約を加えてはいけない。それは護衛スクリーン艦に対する比較的小さなダメージの可能性と、破壊的かつ多くの乗組員を死傷させる味方艦船に対する魚雷攻撃の可能性を比較すれば、明白であろう。
上記を読むと、Hornetは射撃の制約に対して不快感を抱いていることがわかります。2.夜間における5インチ砲に関する制約は修正されるべきである。中隊の艦船がそれを見て回避できる場合、あるいはスクリーンが著しく消耗し防護を殆ど展開できなくなった場合。より良く訓練された5インチ火器管制チームは、その射撃がスクリーン内の他の艦船に危険なほど近づいているか否かをチェックできる。
3.指揮官は、良く訓練されたよるあらゆる種類の砲塔による射撃に対して制約を加えてはいけない。それは護衛スクリーン艦に対する比較的小さなダメージの可能性と、破壊的かつ多くの乗組員を死傷させる味方艦船に対する魚雷攻撃の可能性を比較すれば、明白であろう。
次回は対空陣形について取り上げます。
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