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(写真)英戦艦Vanguardに搭載された38.1cm砲「Mark1」。この砲の性能を調べていて「何故こんなに射程距離が短いのだろう?」という疑問を持ったことが、以下の駄文を書くきっかけになりました。

 (注)「ソロモン夜襲戦」とは、自作の水上戦ボードゲームです。詳しくはこちらをご覧下さい

大砲の射程距離について

「ソロモン夜襲戦」でのデータ見直しを進めているのですが、前々から砲の射程距離が気になっていました。私が主に参考としているのは、NavWeaps.comのデータです。NavWeaps.comでは、主要各国の各種艦載砲について、射程距離に関する詳細なデータが記載されています。他の資料のように単に「最大射程距離」が書かれているだけではなく、砲の仰角毎の射程距離表が提示されているため、より詳しい射程距離比較ができます。

ところで火砲の射程距離を決定づける要素はなんでしょうか?。弾丸の速度、発射時の仰角、砲弾重量、空気抵抗、・・・等色々考えられます。そこでこれらの要素に基づいて簡単に砲の射程距離を比較できるような指標はないものか・・・?。

高校レベルの物理学ならば答は比較的簡単です。空気抵抗その他を無視した簡易なモデルの場合、ある仰角における砲の射程距離は砲口速度の2乗に比例します。つまり高校物理学の世界では、同じ初速度、同じ仰角で発射された46cm砲弾と7.7mm機銃弾は全く同一の射程距離になります。これはニュートンさんやガリレオさん(間違っていたらごめんなさい)が発見した偉大な物理学の法則です。

しかし現実ではご存知の通り大きい砲弾は遠くまで飛翔し、小さい砲弾は近い距離にしか飛びません。その理由の1つに空気抵抗と砲弾質量の関係があります。空気抵抗は一般に速度と前方投影面積(=砲口径の2乗に比例)に比例します。また砲弾質量は概ね砲口径の3乗に比例します。空気抵抗に伴う減速率は、空気抵抗を砲弾質量で割った値になります。結果的に大口径砲弾は空気抵抗の影響を受けにくくなるわけです。
その他にも高度変化に伴う重力加速度や空気密度の違い。超音速における流体力学的解析・・・・。

これ以上書くとボロが出るのでやめておきます。まあそんなこんなで「砲の射程距離を数式化するのは難しいよ」ということなのです。でもそれでは答になりません。なんとか入手可能な諸元に基づいて砲の射程距離を数式化できないか・・・?。

そこで私は以下のような数式を考えて見ました。できるだけ簡単な形にしたかったので、細かい調整はあえてしていません。なお、以下の式は仰角一定ということにしています。

[式1]
https://livedoor.blogimg.jp/mk2kpfb/imgs/a/a/aac63138.gif

この式の意味は、砲の射程距離は、弾丸の砲口速度、弾丸重量の平方根にそれぞれ比例し、弾丸の正面面積に反比例するということです。
上式に基づいて求めた各砲の理論上の射程距離と実際のそれを比較してみます。
下図を見て下さい。この図は各砲の仰角30度における各種火砲の実際の射程距離と理論上の射程距離を比較したものです。ちなみに係数は「大和」の46cm砲を基準に作成しました。

[図1]
https://livedoor.blogimg.jp/mk2kpfb/imgs/2/8/287fa213.gif

図が少しわかりにくいので補足します。グラフの縦軸が射程距離、横軸が砲の種類です。一番左端が46cm砲で、そこからだんだんと小さい砲になってきます。青い棒グラフが[式1]から求めた理論値、茶色のグラフがNavWeaps.com等のデータに基づいて作成した実測値です。

この図を見ていただければ、[式1]がそれなりに実際の射程距離に近い値を示していることがわかると思います。[図1]には入っていないのですが、少し気になるのは英38.1cm砲の低射程です。NavWeaps.comを再度調べてみると、どうやら装薬の種類によって射程距離がかなり変わってくるようです。

[式1]が実際にどれほど役に立つかはわかりませんが、火砲の射程距離を判断する上で目安のようなものにはなりそうに思いました。


もっと簡単に

[式1]で砲弾質量が砲の口径の3乗に比例すると仮定した場合、[式2]のように簡単にすることができます。

[式2]
https://livedoor.blogimg.jp/mk2kpfb/imgs/e/1/e1667720.gif


この式の意味を感覚的な言葉で置き換えると、
「砲弾の射程距離は砲口径の平方根に概ね比例する。すなわち16インチ砲は8インチ砲の約1.4倍の射程距離を有し、8インチ砲は5インチ砲の約1.26倍の射程距離をもつ」
ということになります。
皆様はどのように感じますか?。

結論のような話

とまあ、ここまで長々と述べてきました。まとめますと、

「戦術級ゲームをデザインする時はカタログスペックだけを調べるだけではダメだよ」

という話です(どこがやねん?)。

というのは半分冗談ですが、カタログスペックを調べていく内に「どうしてこんな数値になるのだろう?」と疑問を持つことがあります。そのような時、カタログスペックだけで云々するのではなく、その数値の根拠となる別の数値を解析し、カタログスペックの意味を考えてみる、というのはある意味楽しいことですね。
「ただのマニアックなこだわり」
といえば、まさにその通りなのですが、カタログスペックの数値を鵜呑みにするよりはマシかな、とは思ったりしています。