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(写真)日本海軍の新鋭艦攻「流星改」。最新鋭の本機をもってしても、強化された米空母防空陣を突破するのは至難の業であった。


思考実験2

前提条件及びルール

  次に上記のルールを生かしながら、今度は「全戦闘機空母」を試してみたい。先ほど同様に前提条件とルールを決める。
(1) 両軍とも6隻の大型空母を有する。
(2) 空母1隻当たりの搭載数は艦戦40、艦爆20、艦攻20(青軍)又は艦戦80(赤軍)とする。
(3) 青軍は搭載機全機を攻撃に投入するものとする。
(4) 赤軍は全機を艦隊防空に併置するものとする。
(5) その他は思考実験1と同じ。

シミュレーション実施

(1) 攻撃隊の編成。
 青軍は自軍航空兵力を以下のように区分した。
 (a) 艦隊防空部隊:なし
 (b) 第1次攻撃隊:艦戦x120,艦爆x60,艦攻x60
 (c) 第2次攻撃隊:艦戦x120,艦爆x60,艦攻x60
 赤軍は全戦闘機を艦隊防空任務に投入した
(2) 第1次攻撃
  投入兵力は以下の通り
   青軍:艦戦x80,艦爆x40,艦攻x40(航法ミスで1/3が脱落)
   赤軍:艦戦x240(保有機の半分)
  詳細は省略して結果のみを記す。
   青軍:艦戦x16、艦爆x35、艦攻x35
   赤群:艦戦x16、空母に爆弾1、魚雷1命中(中破)
(2) 第2次攻撃
  投入兵力は以下の通り
   青軍:艦戦x80,艦爆x40,艦攻x40(航法ミスで1/3が脱落)
   赤軍:艦戦x232(保有機の半分)
  詳細は省略して結果のみを記す。
   青軍:艦戦x16、艦爆x34、艦攻x34
   赤群:艦戦x16、空母に爆弾2、魚雷1命中(中破)
(4) 結論
  一連の航空戦で受けた両者の被害は以下の通り。
   青軍:艦戦x32,艦爆69,艦攻x69
赤軍:艦戦x32,空母2中破
青軍は全航空戦力の2/3以上に相当する170機の航空機を失った。特に艦爆、艦攻隊の被害は大きく、生き残ったのたのはそれぞれ11機のみ。この段階で青軍は航空攻撃力をほぼ失ったと判断して良い。一方の赤軍は空母2を中破させられたものの、青軍の洋上航空兵力をほぼ撃滅することに成功したので、赤軍の防空作戦は概ね成功とみなすことができる。

考察

シミュレーションの結果を見る限り、「全戦闘機空母」構想は母艦航空戦に適した布陣であったといえるかもしれない。さらにシミュレーションでは考慮しなかったが、実際に戦闘機は機体サイズの関係上、より大型の艦爆や艦攻よりも多数の機体が搭載できること。あるいは戦闘機は多くの場合単座なので、搭乗員の数を少なく出来ること。等のメリットも追加することができる。

一方、考慮しなければならない点として、艦隊による戦闘機誘導能力がある。上記シミュレーションは「要撃戦闘機は常に敵の攻撃隊と接敵できる」という仮定の元に行った。しかし実際の戦例では、ミッドウェーの日本軍やレイテにおける米軽空母「プリンストン」の被爆等を見れば明らかなように、迎撃をすり抜けてくるパターンがある。特に戦争初期の日本軍のように、レーダーや無線装備が低性能な場合、戦闘機による邀撃は「運任せ」的な側面が強くなってしまう。そう考えてくると、「全戦闘機空母」構想や、あるいはそれに近い発想が通用するようになるためには、その前提として艦隊側の一定以上の高度な戦闘機誘導能力が不可欠なのかもしれない。

もう1点、いかな「全戦闘機空母」といえども、空母である以上は敵艦、敵地に対する攻撃力を保持しなければならない。そのためには搭載する戦闘機にそれなりの対地対艦攻撃能力が備わっている必要がある。米空母の例で見ると、初期の「ワイルドキャット」はその点においては完全に失格である(45kg爆弾2発ではお話にならない)。「ヘルキャット」や「コルセア」の後期モデルのように、最大1t近い搭載量があれば十分とみなすことができよう。
翻って我が国に関して言えば、零戦はその点で米新鋭艦載機群に比べてかなり見劣りする(最大でも250kg爆弾1発程度)。「紫電改」「烈風」等であれば、少なくとも「ヘルキャット」「コルセア」等の初期型とは同程度の対地対艦攻撃能力を有していると評価できるかもしれない(最大500kg程度)。しかし評価対象を1945年レベルの「ヘルキャット」「コルセア」とした場合、これら新鋭艦載機群をもってしても見劣りするのは否めない。

まあ、シミュレーションで設定した変数を変えれば、結果はどのようにでも変化し得るので、上記の思考実験はホントに「遊び」に過ぎませんが・・・。

結論

戦争末期の米空母群が「全戦闘機空母」に近い布陣を敷いたのは正しい選択であった。しかし他国の場合「全戦闘機空母」が必ずしもベストか否かは確定できない。

うーん、なんかアタリマエ過ぎてツマランなあ・・・。