日露戦争最後の激戦となった「日本海海戦」をゲーム回しようと思います。今まではバンダイの「日本海海戦」、同じくエポックの電子サイコロ式「日本海海戦」等がありました。
日本海海戦と一口に言っても、実は様々な局面があります。クライマックスは「トーゴーターン」からはじまる日露主力艦同士の艦隊決戦ですが、その前後にも様々な局面があります。長い目で見れば日清戦争後から始まる日本海軍の拡張計画から話をスタートさせなければならないかも知れません。もう少し短い話にして日露開戦後から話を始めた場合も、聯合艦隊とロシア太平洋艦隊との消耗戦、黄海海戦、バルチック艦隊の東征開始、旅順口攻略戦等も日本海海戦につながる一連の流れになります。これらの要素を含めて日本海海戦をデザインしてみると、また違った側面が見えてくるかもしれません。
もっと少し短いスパンに注目してみると、極東を目指すロシア・バルチック艦隊が仏印を出航したのが1905年5月14日。その後台湾海峡で一度発見され、その後消息をくらませていた同艦隊を27日未明に我が仮想巡洋艦「信濃丸」が九州西方海域にて発見。その報を受け聯合艦隊主力が鎮海湾を出撃したのが午前5時過ぎ。その後日本側の偵察部隊が相次いでバルチック艦隊に接触したのが27日の午前中。午後に入って聯合艦隊主力がバルチック艦隊を視認し、そして「トーゴーターン」から始まる両艦隊の主力決戦につながっていく訳です。
今回はその「日本海海戦」をゲーム化してみようと思います。とはいっても「よし、今からつくるぞー」といったような気合の入った話しではなく、「こんなゲーム作ってみたら楽しいかな?」という程度の座興ですので、あまり本気にはしないで下さい。
第1案:「決戦、対馬海峡」
1905年5月27日午後の日露艦隊決戦に焦点を絞ったゲームです。1ユニット=1艦。ただし駆逐艦や水雷艇は複数艦で1ユニットとします(場合によってはこれら小型艦は省略するかもしれません)。スケールは1ヘクス=1km、1ターン=10分ぐらいで考えています。このスケールだと1移動力は約3.2kt。10ktで3移動力ですから、当時の戦艦戦隊の運動速力で4~5移動力、巡洋艦戦隊でも6移動力ぐらいに落ち着きそうです。砲の有効射程距離は戦艦級でも10ヘクス未満になりそうですね。移動力に比べて射程がやや短い気もしますが、そこは「ソロモン夜襲戦」と同様に移動フェイスを3分割するすることで解消できそうです。フェージングはヘクスサイドのみ6方位。これも「ソロモン」と同じです。
指揮統制については、これもまた「ソロモン夜襲戦」と同様にコマンドポイント方式が手頃で良いと思います。WW2期の艦船とは違い、当時の艦船は戦闘中に使用可能な無線電話を持たず、全ての命令を信号旗や発光信号で行う必要がありました。また指揮中枢である「旗艦」の役割が大きく、両軍とも指揮混乱を狙って「旗艦に集中攻撃を加える」というのがある意味常套戦術でもありました。従って「ソロモン」では無視した「旗艦」という存在を、このゲームの場合は指揮ルールの一要素として組み込む必要があるかもしれません。
砲撃戦システムについては「ソロモン」よりも簡略化したもので良いと思います。「ソロモン」で採用した「夾又判定」「命中判定」「損害判定」という流れは、ドレットノート以降の単一巨砲搭載艦には有効な手法なのですが、この時期の艦艇のように雑多な火砲を艦上に混載している場合には必ずしも適切なシステムではないように思います。命中弾を1発、1発と数え上げていくシステムも、この時期の艦対艦砲撃戦にマッチしているかは疑問です。だから本ゲームの場合、「命中判定」「損害判定」という2ステップ方式、基本的には「聯合艦隊」に近いシステムで良いのかな、という風に思っています。
雷撃戦はあまり重視しなくても良いでしょう。本ゲームはテーマを「戦艦、装甲巡洋艦クラスの昼間戦闘」と絞っておけば、夜間戦闘に関する細々としたルールは不要になります。雷撃戦についても簡単なルールに留めるか、あるいは思い切って砲撃力の中に組み込んでしまう、という方法でも良いかもしれません。駆逐艦や水雷艇にしても、思い切ってオミットするということも考えられます。
勝利条件は敵艦の撃沈、撃破の他、ウラジオストック方面へ脱出したロシア艦を勝利得点とします。当時の日露両艦隊がまともに戦った場合、日本側が有利なことは間違いない事で、そのことは当時日露両艦隊の首脳もどうやら知っていたようです。従ってロシア側としては最初から「聯合艦隊を撃滅して日本海の制海権を奪い返す」といった大それた望みは持たず、「1隻でも多くの艦をウラジオストックへ逃がす」ということを目的としていた、と解釈できます。無論ウラジオへ逃げ込むためには、それを阻止せんとする日本艦隊を実力で排除する必要がありますが、敵にある程度のダメージを与えて足を鈍らせられれば、あとは一目散で遁走を図るべきでしょう。
日本艦隊の目的はその逆で、とにかく敵をウラジオ方面へ逃がさないことです。
日本艦隊の目的はその逆で、とにかく敵をウラジオ方面へ逃がさないことです。
「聯合艦隊の半分を沈めても良いから敵を全滅させろ」
というのが当時、日本側の置かれた状況でした。日本艦隊としては自軍の損害に関わらずとにかく敵艦隊のウラジオ方面への遁走を阻止するのが狙いです。
このように両者の基本線を踏まえた上で、勝利条件を調整し、場合によっては両軍の練度を修正(練度面ではある程度日本側が有利にしますが、どの程度の差にするかは調整次第)して双方に勝利のチャンスを与えるようにしましょう。
このように両者の基本線を踏まえた上で、勝利条件を調整し、場合によっては両軍の練度を修正(練度面ではある程度日本側が有利にしますが、どの程度の差にするかは調整次第)して双方に勝利のチャンスを与えるようにしましょう。
第2案:「敵艦見ゆ」
こちらは日本海海戦をもう少し大きなスケールで捉えたゲームです。同海戦で日本海軍首脳部を悩ませたテーマの1つがバルチック艦隊の針路でした。考えられるルートとしては、対馬海峡、津軽海峡、宗谷海峡の3ルートがあり(厳密に言えばもう1つ、間宮海峡経由のルートもあるはずですが、こちらは何故か問題にされません)、どのルートを彼らが通るかによって勝敗の行方は大きく左右されました。結果的には彼らは対馬海峡コースを採用し、待ち構えていた聯合艦隊の迎撃によって壊滅するのですが、もし彼らが津軽海峡経由のルートを採用していればどうなっていたでしょうか?。ひょっとしたら歴史は変わっていたかも知れません。本ゲームでは5月25日頃~30日頃までの約1週間に渡る「キャンペーン」を描きます。
プレイ時間は3~5時間を目標します。戦術戦闘解決に1時間とすると、残りは2~4時間。扱う期間を最大6日間とすると、1ターン8時間として計18ターン。1ターン15分のペースで最大4.5時間かあ・・・・・。1ターン10分のペースが実現できれば目標値に到達できそうです。
プレイ時間は3~5時間を目標します。戦術戦闘解決に1時間とすると、残りは2~4時間。扱う期間を最大6日間とすると、1ターン8時間として計18ターン。1ターン15分のペースで最大4.5時間かあ・・・・・。1ターン10分のペースが実現できれば目標値に到達できそうです。
1ヘクスは33海里(3ヘクスで100海里)、1ターンは前述した通り8時間とします。1移動力は約4kt。当時の艦船の巡航速度は10kt前後なので、移動力は2~4にしておけば艦種別の性能差も表現できます。マップは九州西方海上から日本海全域、そして対馬、宗谷海峡までを含みます。それなりに広い海域ですが、フルマップ1枚には十分収まりそうですね。
このゲームの場合、索敵が重要なテーマとなってくるのですが、ここではダミーカウンター方式を採用しましょう。ブラインドサーチの魅力も捨て難いのですが、空母戦のように「両方とも位置がわからず虚虚実実の駆け引き」が行われる訳ではないので、ダミーで十分に対応できるように思います。
本ゲームでも指揮を重要なテーマとして考えてみたいです。艦隊の編成や再編成には指揮ポイントを要求することにしたり、索敵や索敵艦の排除を行うためには麾下の艦隊に対して「偵察」マーカーや「打撃」マーカーを載せなければならない。あるいは旗艦とスタックしていない艦隊数は制限したり(これはダミーと本物の艦隊数合計を制約するだけで表現できそうです)。
戦術戦闘はこのゲームの華なのですが、具体的にはまだ決まっていません。ラウンドを繰り返す方式で、あとは練度による有利/不利等を表現できれば良いかな、と思っています。例えば「信長最大の危機」(Game Journal)における「織田勢vs武田勢」みたいな感じになるのかな、と思っています。
こちらの方は類似のテーマも少なく、また史実の縛りも少ないのでバランスも取りやすいように思われます。ロシア側プレイヤーが如何にして「面白く」プレイできるようにするかが課題なのですが、単に勝利条件をいじるだけではなく、ある程度ロシア側にも自由度を与えて聯合艦隊を撹乱できるようにしたいな、と思っています。
(写真1)「敵艦見ゆ」に登場する日本海軍偵察巡洋艦(なんちゃって)。「高砂」がユニット化されるのはもしかしたら世界初?。


(写真2)こちらはバルチック艦隊の巡洋艦「ドミトリー・ドンスコイ」。日本海海戦では最後まで奮戦しました。


P.S.その後色々と考えてみると、バルチック艦隊の津軽海峡回航は「航続距離の面から考えて実施は難しいのではないか」という考えに傾きつつあります。そうなると通過コースは対馬海峡固定となってしまい、作戦面でのバリエーションが狭まります。その分単調なゲームになってしまうので、他の面を強調して何とか面白いゲームにならないものか、と苦慮しております。
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