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Sands of War(GDW)ルール読了

先日何度かに渡ってGDW社の「Battlefiled Europe」(以下BFE))を紹介してきましたが、今回紹介するこの「Sands of War」(以下SOW)は、BFEと同じ「First Battle」シリーズに含まれる作品です。「Battlefiled Europe」の出版が1990年、SOWはその翌年1991年に発売されました。FBシリーズの第4弾になります。
1991年といえば、いわゆる湾岸戦争が勃発した年であり、このSOWは湾岸戦争のシナリオが含まれているということで当時少し話題になりました。勿論湾岸戦争だけが本作のテーマではなく、WW2時の砂漠戦(ドイツ、イタリア、イギリス軍等が登場します)、第1~4次中東戦争(アラブ諸国とイスラエル軍の戦い)、1982年のレバノン紛争、イラン・イラク戦争等がシナリオ化されています。登場する兵器も多岐に渡り、当時最新のM1A1主力戦闘戦車やM2A2歩兵戦闘車等は勿論、イスラエル軍が使用したセンチュリオン、M60A1、メルカバやアラブ諸国が使用したT-55、T-62といった戦車達、さらにはマチルダ、3号戦車といったWW2時の兵器まで登場してきます。ユニットシートが計5枚、ユニット数約900個、マップ16枚というボリュームは、前作BFEの優に2倍以上です。

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左はBFEに登場する主なユニット。右はSOWに登場するユニットです。同じ兵器でもレーティングが微妙に(かなり?)異なっています。火砲タイプは火力がアップしていますが、ミサイル火力は据え置き。これで対戦車ミサイルは一層「使えない」兵器になってしまいました(^^;

ルールについて

SOWでは前作BFEからルールのいくつかが改訂されているようです。そのいくつかを紹介しましょう。

スケール

前作までは1ユニット=1両/1分隊というスケールでしたが、本作では1ユニット=1小隊となりました。元々抽象度の高いシステムなので、スケールの変更についてはそれほど違和感はありません。1ターン=15分(BFEは不明)、1ヘクス=250m(BFEは200m)となり、全般的にAH社の「アラブ・イスラエル戦争」により近いスケールのゲームとなりました。ある意味SOWは「アラブ・イスラエル戦争」の正当な後継者と言えるかも知れません。

スタック制限(Stacking and Movement)

1ヘクスに車両が2ユニット、非車両が2ユニットまでになりました。また他車両の存在するヘクスでは道路移動率が使えないようになりました。これはスケール変更の影響だと思われます。

増援(Reinforcement)

前作ではシナリオ毎に指定されていた増援ルールが、SOWでは標準ルールになりました。毎ターンD10でターン数未満の目が出れば増援登場です。どんなにダイス目が悪くても11ターンには確実に増援部隊が登場してくるので、運不運による影響はある程度緩和されそうです。

BFEでは「ダイスを振って"1"が出れば増援登場」というシナリオがあり、ダイスが悪いといつまで経っても増援が来ない、という喜悲劇が発生したりしていました

視線(Line of Fire)

視線ルールが改定されてより明確になりました。特に射手と目標が違う高度にいて、その中間高度に障害物がある場合、視線の通る/通らないがより明確になりました。この改定は良いと思います。またルールとは関係ないのですが、地図の表記が明確になり「このヘクス森なの、平地なの?」と迷うことはなくなりました。

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上がBFE、下がSOWのマップ。両者を比較すると、SOWの方がより地形表記が明確化されています

隠匿(Concealment)

BFEではユニットを裏返して隠匿状態を示していましたが、SOWでは隠匿マーカーをユニットの上に乗せて隠匿状態を示すことになりました。これはSOWでユニットの裏面が損傷状態を示すようになったことの影響だと思われます。プレイアビリティ上で今回の改訂が是か非かは実際にプレイして確かめてみることにしましょう。
あと「非隠匿状態のユニットが森や町ヘクス等で全移動力を消費すると再び隠匿状態になる」というルールが新たに加わりました。

突撃射撃(Assault Fire)

BFEにおいて歩兵系ユニットは「突撃射撃」と称して移動後の隣接ヘクスに対する射撃が許可されていました。SOWでも本ルールはありますが、突撃射撃実行の条件が「敵と同一ヘクス」に変更となりました。

ユニットの向き(Facing)

背面から攻撃を受けた場合の防御力が変更になりました。BFEではどんなユニットでも背面攻撃を受けたときは「2」又は「1」防御力だったのか、本作では「額面防御力の1/3(端数切り上げ)」と変更されました。

スタックに対する攻撃(Hits on Stacks)

BFEではスタックしている目標を攻撃する際、「目標をランダムに決めなければならない」というやや面倒なルールがありましたが、SOWでもそのルールは継承されています。SOWでは目標決定の際、残骸も目標候補になりました。例えば装甲部隊2ユニットと残骸2ユニットが同一ヘクスにいる場合、敵からの射撃は半分の確率で残骸を撃つことになります。このため残骸に隠れて敵を狙うという芸当も可能になりました。なお同一ヘクス戦闘では本ルールは適用されません。

兵器コード(Special Attack Code)

武器の種類が細分化されました。対戦車火器(A)、半徹甲弾(L)、成形炸薬弾(H)、対人兵器(P)が登場します。

砲兵(Artillery)

BFEでは一々目標ヘクスをプロットしなければならなかった砲兵ルールですが、SOWではFinal Fire Phaseに宣言即実行するようになりました。スケールの違いといえばそれまでですが、プレイアビリティの観点からは好ましい改訂です。またロケット弾の着弾パターンが変更になり、プレイヤーが望めば全弾を同一ヘクスに着弾させることが可能になりました。さらに空中炸裂弾に対するオープントップ型車両の脆弱性もルール化されています。

指揮統制(Command Control)

BFEではいかにも「取ってつけたような」指揮統制ルールでしたが、SOWではかなり本格的なルールになりました。指揮官は命令マーカー1個を毎ターン発行することができ、それによって指揮下の部隊を指揮できます。加えて「スタッフ(Staff)」というルールも新たに加わりました。スタッフは指揮官同様命令を発行することができ、さらには命令発行の権利を「蓄積する」(作戦計画を練っているということ)ことができます。

上級ルール(Advanced Rule)

基本ルールは以上ですが、その他にいくつかの上級ルールがあります。上級ルールは常時使用するルールではなく、シナリオ毎に使用する上級ルールが記載されているので、必要に応じて読んでいけば良いでしょう。一応どんなルールがあるのか、リストアップしてみます。
 ・ミサイル
 ・牽引型兵器
 ・電子戦
 ・General Support Artillry(適当な訳語が思いつきません)
 ・上級砲弾(DPICM、FASCAM、照明弾、煙幕弾、ガス弾(!!))
 ・人工障害物
 ・戦闘爆撃機
 ・ヘリコプター
 ・視界制限(夜間、悪天候等)
この中で目を引くのはガス弾ですね。言うまでもなく「毒ガス」のことですが、イラン・イラク戦争シナリオで使用するのでしょうか。毒ガスのルールは旧SPI華やかなりし頃、作戦級の「WW3もの」でしばしば見たことがあります。しかし戦術級ゲームで毒ガスルールは、私は本作が始めてです(WW1ものやSPIの戦術級WW3ものでは毒ガスルールがルール化されていると思われますが、私は未見です)。

選択ルール(Optional Rule)

選択ルールは目に付いた所だけ取り上げます。

団結(Cohesion)

私の嫌いなCohesionルールが選択ルール送りになりました。喜ばしい限りです。

砲安定装置(Stabilized Gun)

砲安定装置を装備した車両は、移動終了後にFiring Positionにつけるようになりました。ただし最終射撃フェイズに射撃をしないことが条件です。このルールを採用すると、湾岸戦争シナリオでイラク軍の勝利できる可能性が非常に低くなるそうです。試してみようかな?。

シナリオ(Scenario)

合計30本のシナリオが用意されています。扱う時代背景は以下の通りですが、その中で一番多いシナリオはイラン・イラク戦争の計8本です(戦争の期間が長かったので当然といえば当然なのですが)。
・WW2(1941-1942)
・第1次中東戦争(1948)
・第2次中東戦争(1956)
・第3次中東戦争(1967)
・第4次中東戦争(1973)
・レバノン紛争(1982)
・イラン・イラク戦争(1980-1988)
・湾岸戦争(1991)

結論

とまあこんな感じでルールを一通り読み終わりました。前作BFEで未整理だったルールが本作ではかなり整理された感があります。スケール変更も良いほうに作用しているように思われます。またBFEのシナリオがすべて仮想戦だったのに対し、こちらはヒストリカルなシナリオになっているので、歴史性を重視するゲーマーとしてはプレイ意欲が沸いてきます。機会があれば、シナリオのリプレイ等も紹介したいと思います。