
八甲田山といえば「死の雪中行軍」で知られる豪雪地帯として知られています。かくいう私も、今冬に青森方面を訪ねた際、その積雪の凄さに驚いたものでした。何しろ数十キロと離れていない青森市街が晴れ晴れの時も、八甲田山一帯は猛吹雪が吹き荒れているのですから・・・・。
八甲田山一帯は、その一方で素晴らしい景観で知られています。特に秋の紅葉は全国的にも有名で、9月下旬から10月半ばまで、八甲田山一帯は赤や黄色に美しく染まります。
今回私は八甲田山の紅葉を見るために、休日を利用して同方面に出かけてみました。紅葉シーズンにもなると、八甲田山一帯は観光バスや自家用車がどっと押し寄せ、酸ヶ湯温泉や八甲田ロープウェー口は車で溢れているそうです。そんな混雑を避けるため、私は少し早めに宿を出ました。八甲田山登山口の酸ヶ湯温泉に着いたのが0630頃。早朝出発が功を奏し、駐車場はまだまだガラガラに近い状態でした。ベストポジションに車を停めて、準備を整えて歩き始めました。
八甲田山の登山ルートはいくつかあり、体力や時間に応じて選択することができます。コースはいずれも難易度が中以下で、それほど危険箇所はありません。標高差も精々数百メートルなので、体力的にも中以下です。私が選んだコースは、酸ヶ湯温泉から仙人岱を通って八甲田山系最高峰の大岳(1584m)に登り、帰りは上毛無岱、下毛無岱といった紅葉の名所を通って酸ヶ湯温泉へ降りていく経路です。標高差は約600~700m、コースタイムは4~5時間、八甲田山頂を狙うルートとしては最も一般的なものといえます。
最初は樹林帯。1時間ほど我慢して歩くと、やがて視界が開けます。ここからは沢伝いの道になります。周囲の紅葉は素晴らしいのですが、残念ながらこの時間はまだ空には白い雲が垂れ込めていて、景観は今ひとつでした。

沢沿いの登山路に沿って広がる紅葉
沢を登りきった所が仙人岱という高層湿原です。右手に八甲田小岳(1478m)、左手にはこれから向かう八甲田大岳が見えます。こうして見ると八甲田大岳もなかなか貫禄のある山に思えてきます。付近の紅葉は綺麗ですが、相変わらずの曇天が恨めしいです。ただ少し薄日が差して来たようにも思えました。

高台から見下ろした仙人岱の紅葉。これで天気が晴れていれば最高だったのですが・・・・。
仙人岱からは八甲田大岳へ登る最後の登山路にさしかかります。頂上までの標高差は約200m。眼下に見える紅葉を楽しみながら、一歩一歩登っていきます。頂上に着いたのは0930頃。山頂はかなり強い風が吹いていました。寒いです。思わず軍手を取り出しました。山頂から青森方面を見ると、青森市街と陸奥湾がはっきりと見えました。青森上空には青空が広がっているようです。ひょっとしたら天気は回復するかもしれない。そんな期待が胸をよぎりました。

八甲田山頂から見る陸奥湾
大岳から下山していく途中、とうとう青空が広がってきました。待ちに待った瞬間。最高のタイミングで最高の天気に恵まれてきた感があります。

大岳からの下山路で見た赤倉岳。とうとう青空が広がってきました
大岳か毛無岱へ向けての下山ルートは正に紅葉天国です。空は完全に晴れ渡り、陽光に照らされた紅葉が美しい姿を見せていました。上毛無岱、そして下毛無岱と降りていく間は、シャッターチャンスの宝庫。今回撮った写真をいくつか紹介します。

上毛無岱の紅葉。右手の山が八甲田大岳(1584m)、左が赤倉岳です。

下毛無岱の紅葉。上毛無岱から下毛無岱へ降りていく長い階段からは下毛無岱全体が見えてきます。
大満足の山旅を終えて酸ヶ湯温泉に戻ってきたのは1240頃でした。先ほどまで真っ青だった空は、この時間になるとかなり雲に覆われてきました。
今回、初めて八甲田山の紅葉を見たのですが、その美しさやスケール感は大雪山系や北アルプスのそれに優るとも劣らないものだと感じました。なるほど知名度で八甲田はこれらの山々にやや劣るかもしれませんが、紅葉の美しさでは決してひけを取らないように思います。また登山口へのアプローチの容易さも特筆すべきものがあり、青森市街からでも1時間とはかからずに登山口へ辿り着くことができます。
昨年、雨飾山について「本州以南にある日帰り可能な山で、雨飾山ほど紅葉の美しい山は見た事がない」と紹介させて頂きましたが、今回の八甲田山は明らかに雨飾山を凌駕していました。私の中で今回の八甲田山は、「今まで見てきた中で最も美しい紅葉」です。
八甲田山の紅葉。皆様にお奨めしたい場所のひとつです。
満足度★★★★★

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