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機動戦士ガンダム MSイグルー 1年戦争秘録

林譲二 角川スニーカー文庫

この作品は「ガンダム」を題材とする同名の映像作品を小説化したものです。実は私、原作の映像作品は見ていません。しかし原作を見ていなくてもこの小説は十分楽しめました。

この作品、特徴的な点は以下の2点です。
 (1) 主人公がジオン側であること
 (2) 「ガンダム」が登場しないこと
 (3) 各作品で主人公が異なっていること
この作品の主要な舞台は、ジオン公国所属のとある試験支援艦です。試験支援艦という位置づけ上、主人公達は様々な新兵器の運命と関ることになります。

本作の面白い所は、登場する新兵器が必ずしも完全無欠の無敵兵器ではないこと。むしろ時代遅れの新兵器というのが正しい所でしょう(戦艦「大和」みたいなものですね)。そのような兵器を任された主人公達は、時に軍の欺瞞工作に利用され、あるいはプロパガンダの道具にされたりします。彼らは自らの立場について悩み、苦しみ、そして最後に自分なりの結論を見つけた出していきます。「男の生き様を教えてくれる」といえばやや大げさですが、そういった面があるのは確かです。

もう1つ注目したいのは、本書の中で示されたミリタリー的描写の精緻さです。これについて圧巻なのが第2話「遠吠えに落日は染まった」です。連邦軍のMS部隊とジオン軍旧式兵器の一騎打ちなのですが、その描写が素晴しい。両軍の置かれた立場や取るべき戦術、その結果が手に取るようにわかります。元になったOVAを見てもひょっとしたらこれほどの臨場感は得られないのではないか、と思えるほどです。

いずれも短い作品で、1~2時間もあれば読み終えることができます。「ガンダム」好き、そしてゲーム好きならお奨めできる作品です。

ただし「萌え」とか「色気」とかは殆どありません。

お奨め度★★★