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以前に紹介したバリクパパン海戦に引き続き「ソロモン夜襲戦」の追加シナリオを紹介します。

 (注)「ソロモン夜襲戦」とは、自作の水上戦ボードゲームです。詳しくはこちら


第2次コロンバンガラ島沖夜戦(仮想戦)

18.1 シナリオの背景

 1943年7月、中部ソロモン地区に上陸を開始した連合軍に対し、日本軍は数次に渡って増援部隊を送り込んだ。日本軍の増援部隊とそれを阻止する連合軍水上部隊が中部ソロモン近海で激突する。クラ湾夜戦(シナリオ9)、コロンバンガラ島沖夜戦(シナリオ10)と2度に渡って繰り広げられた夜間戦闘で、日本軍は劣勢な兵力にも関らず我に倍する損害を敵に与え、その熟達した夜戦技量を見せつけたのである。しかし優勢な米艦隊の妨害に直面した日本艦隊は、局面を打開するために新たな策を打ち出す必要に迫られた。
 7月11日、トラック島より南下してきた西村祥司少将率いる3隻の重巡洋艦(「鈴谷」「熊野」「鳥海」)がラバウルに入港した。7月18日夜、ラバウルを出撃した西村部隊は、途中で第3水雷戦隊(軽巡1、駆逐艦4)と輸送隊(駆逐艦3)と合流。一路コロンバンガラ島を目指した。重巡部隊の強力な援護の元、コロンバンガラ島への輸送を強行する作戦である。
 日本艦隊を阻止すべき米艦隊は、クラ湾夜戦、コロンバンガラ島沖海戦で戦ったエインズウォース少将の部隊が大打撃を受けて後退。残るはメリル少将の新鋭軽巡部隊だけであった。このシナリオでは、輸送任務中の西村部隊が、コロンバンガラ北方海域でメリル部隊の迎撃を受けた状況を想定している。

18.2 シナリオ開始日時

1943年7月19日(夜間)

(中略)

18.4 両軍兵力

日本軍

主隊

イメージ 2「鈴谷」「熊野」「鳥海」の重巡3隻からなる戦隊である。本シナリオにおける日本海軍最強の戦闘単位で、その活躍がシナリオの勝敗に大きく関連してくる。レーダーを装備しない分夜戦能力では米新鋭軽巡には見劣りするが、砲力と雷撃力では彼を凌駕するため、接近戦に持ち込めば彼を圧倒できるだろう。

水雷戦隊

イメージ 3軽巡「川内」と4隻の駆逐艦(「清波」「雪風」「浜風」「夕暮」)からなる水雷部隊である。「川内」を除く諸艦は(実際の)コロンバンガラ沖海戦に参加し、連合軍巡洋艦3隻を撃破する戦果を上げた。ちなみにこの時の輸送任務で米軍機の夜間爆撃により「夕暮」が撃沈されている。

輸送隊

イメージ 43隻の旧式駆逐艦(「三日月」「水無月」「松風」)からなる駆逐隊である。このシナリオでは輸送任務を担当する。史実では予定された輸送任務を無事完了させた。


連合軍

第12巡洋艦戦隊

イメージ 54隻のクリーブランド級軽巡(「デンバー」「モンペリー」「コロンビア」「クリーブランド」)からなる巡洋艦戦隊で、本シナリオにおける連合軍の主戦力を構成する。ちなみにシナリオ12にも全く同じメンバーが登場している。例によって強力な電探装備を誇るが、対する日本艦隊もシナリオ12より強化されており、楽な戦いではない。

駆逐隊

イメージ 64隻の新鋭フレッチャー級駆逐艦よりなる駆逐隊である。個艦性能では日本駆逐艦に勝るとも劣らないが、魚雷性能とその命中率で日本艦に見劣りする。


18.8 結末

 メリル部隊による迎撃は実現しなかった。当時メリル部隊は戦場を遠く離れたエスピリッツサントに在泊しており、西村部隊を迎撃できる位置にはいなかったのである。
 米巡洋艦との交戦を期待した西村部隊は、クラ湾北方まで進出したが、敵影を見なかった。やむなく反転して引き上げる西村部隊。それをガダルカナルから飛び立った米軍機が追う。レーダーで日本艦隊の姿を捉えた6機のアベンジャー攻撃機は、薄暗い闇の中、超低空爆撃を敢行した。2000ポンド爆弾の直撃を受けた駆逐艦「夕暮」が轟沈。重巡「熊野」にも大型爆弾が命中する。
 この戦いで危険水域に重巡を投入することに懲りた日本艦隊は、その後しばらくは有力艦のソロモン投入を躊躇うこととなった。しかし3ヵ月後のブーゲンビル攻防戦。日本艦隊は再び重巡部隊による大規模な夜襲を企図した。しかし今度は米空母艦載機の奇襲攻撃を受けて攻撃は失敗。その後ソロモン方面で日本の大型艦が活躍する機会は訪れなかった。

おまけ

このシナリオを作った一番の動機は、
「熊野」「鈴谷」の2艦が活躍するシナリオを作ってみたい
ということです。
個人的な見解ですが、日本重巡群の中で最も戦歴に恵まれなかったのは「鈴谷」「熊野」の2艦ではないかと私は思っています。この両艦は太平洋戦争期間中で殆ど敵艦と直接交戦する機会がなく、ようやくサマール島沖海戦でその機会を得たかと思えば、戦闘開始直後に「熊野」は米駆逐艦の雷撃により大破。「鈴谷」は敵機の投じた至近弾により速力低下。両艦とも早々に戦闘能力を失ってしまいました。同じ日本重巡でも他艦、例えば「古鷹」「青葉」「羽黒」「那智」「愛宕」「鳥海」「最上」「利根」等は複数回に渡って敵水上艦と対戦し、少なくない戦果を残していることを思えば、両艦の不幸が際立ってきます。砲戦用重巡としては最も完成した艦といって良い「鈴谷」と「熊野」。せめてゲームの世界の中だけでも彼女らに活躍の機会を与えてあげたかった、と思って本シナリオを制作しました。

日本艦隊に戦いを挑む米艦隊の主力は4隻のクリーブランド級軽巡です。故意か偶然か、この4隻はシナリオ12に登場する艦と完全に同じです。このことからも明らかですが、本シナリオのモチーフはシナリオ12の再製です。その上でシナリオ12の欠点=バランスが悪いをなんとかしたかった、というのが本音です。シナリオ12の場合、史実(ブーゲンビル島沖海戦)で日本艦隊が脆くも敗れ去ったのがいけなかったのですが、それはそれで仕方がない。しかし本シナリオは仮想戦なのでもう少しバランスに配慮しても良いのではないか。そう思って本シナリオはシナリオ12でアンバランスだったと思われる個所に手を入れて、日本側にも十分勝機があるように調整しました。

最後に。このシナリオは仮想戦です。しかし両軍の編成に嘘はありません。例えば日本艦隊の場合、このシナリオに登場する艦船は、全て実際に行われたコロンバンガラ輸送作戦に参加した兵力です。また4隻のクリーブランド級軽巡とそれに随伴している駆逐艦4隻の顔ぶれは、史実における同時期の戦闘編成と同じです。

(つづく)

参考
「日本水雷戦史」 木俣次郎著
「戦史叢書-南東方面海軍作戦(3)」 防衛庁戦史室
「History of United State Naval Operation in World War 2 - Vol.6」 S.E.Morison
http://www.hazegray.org/navhist/denver/logjul43.htm