イメージ 1

The U.S. Navy Ageinst The Axis - Surface Combat 1941-1945

Vincent P.O'Hara Naval Institute Press

タイトルの通り、WW2における米海軍と枢軸国の水上戦闘を扱った著作です。タイトルが"Against Japan"ではなく、"Against The Axis"となっていることからもわかるように、本書は日米海戦だけではなく、米独、米仏といった海戦も取り上げています(カサブランカ沖海戦やチャンネル諸島の戦い等)。また取り上げている戦いはメジャーなものばかりではなく、例えばガダルカナル近海における「江風」と「ブルー」「ヘルム」の戦いとか、1944年末の硫黄島近海における米駆逐艦と日本軍高速輸送艦の戦いとか、「あれ、こんな戦いあったの?」というようなマイナーな戦いまでも取り上げています。
本書のディテールもまた凄い。
初っ端から、スラバヤ沖海戦の所で「羽黒のカタパルトにパースの6インチ砲弾1発が命中」とやられて度肝を抜かれたと思えば、第1次ソロモン海戦の所で「青葉と加古はそれぞれ3斉射目から命中弾を与えた」とか書かれていて、「おいおい、そんなことどこで調べたんだよ」と1本取られたという感じ。
他には例えばクラ湾夜戦の項でエインスワース少将の固着化したドクトリンに対する批判やレーダー射撃への過度の依存とその実情(本書によれば「非効率だった」とのこと)、米側の過大な戦果報告に関する考察は興味深く感じました。またブーゲンビル島沖海戦の項では、相変わらず効率の悪い米レーダー射撃への批判や、それに対する日本重巡の射撃技量に対する畏敬の念(本書によると距離方向の散布界は200ヤード以内で「まるで1つの巨大な水柱のようだった」とのこと)等、日米海戦の新たな一面を知った思いです。
上記の日本側の資料を読んでも殆ど書かれていない水上戦に関するディテールが、本書では驚くほど詳細に紹介されています。
水上戦闘を研究する者にとっては「必携の著作」とまでは言えないとしても、有益な著作であることは間違いないと思います。

お勧め度★★★★