面白いページを見つけました。


題して「1990-2002年に戦闘で失われた米空軍有人機です」

わざわざ「有人機」(MANNED AIRCRAFT)と断り書きを入れるのが興味深いのですが、今では無人機がそれだけ一般化してきているということでしょうか。
記事によれば、この13年間に戦闘で失われた米空軍機は計17機。ちなみにここで言う戦闘損失(COMBAT LOSS)とは、戦闘が主原因によって失われた機体を指し、作戦中に戦闘以外の原因(事故等)で失われた機材は含まれていないことは注意が必要です。実際には「戦闘損失」と「非戦闘損失(作戦損失)」は明確な線引きが出来る訳ではなく、曖昧な場合も少なくありません。

機種別に見るとA/OA-10が6機でトップを占め、F-16C/CGが5機、F-15Eが2機で、あとはAC-130H、EF-111A、F-117A、F-4Gが各1機という内訳になっています。
原因別に見ると、SAMによるものが13機と全体の76%を占め、その他は対空火器が3機、機動戦闘が1機となっています。SAMの種類別に見ると、赤外線誘導の小型SAMによるものが7機でSAM被害の過半を占め、中でもSA-16(NATOコードネーム「ギムレット」)によって4機が落されています。
SAMに比べると対空火器の戦果は振るわず、僅かに3機。しかもそのいずれもが湾岸戦争時期の戦果で、セルビアやアフガンでは1機も落していません。ヴェトナムでは猛威を振るったロシア製AAAですが、その後は威力を封じられています。その原因としては、航空機の爆撃高度が上がったことが挙げられていますが、それを可能にしたのは精密誘導兵器の進歩と、開戦当初における敵防空システムの効果的な破壊があったからでしょう。もしそのいずれかに失敗していれば、米空軍機は低空攻撃を強いられ、AAAによって大きな損害を出していたかもしれません。低空攻撃を信条とした英独伊のトーネードや英仏のジャギュアが、湾岸戦争の初期に大きな損害を被ったことが思い起こされます。

敵戦闘機に食われた機体はゼロ。逆に米空軍は空中戦で48機を撃墜しています。そのあたりをレポートは「1990-2002における軍事作戦において疑いなく最も成功した事例」であると誇らしげに記しています。

今度の方策について、米空軍は「対空砲火とSAMの射程距離外を飛行する」ことを損害回避の最も有効な手段としています。先にも書いたとおり敵戦闘機の脅威はほぼ無力化され、長距離SAMも適切な対策が施されればほぼ無力化することに成功した米空軍(長中SAMに食われた例は大半がSEAD機(F-4G,F-16CJ等)や電子妨害機(EF-111A、EA-6B等)の援護を欠いた状態でした)にとって、残った唯一かつ最大の脅威は敵歩兵から打ち上げられる携行SAMということなのかもしれません。歩兵の携SAMはシステムとして無力化することが困難なので、手っ取り早く高高度飛行で回避してしまえ、ということなのでしょう。

なかなか面白いレポートでした。

ついでに米海軍についての同種のレポートも読んでみたいな、と思いました。
あと損失には至らなかったけど被弾した機体がどのくらいあったのかも知りたいですね。

https://livedoor.blogimg.jp/mk2kpfb/imgs/0/4/04457824.jpg
https://livedoor.blogimg.jp/mk2kpfb/imgs/d/4/d49c06b8.jpg
米空軍のF-16とA-10。米空軍の中では一番犠牲の多かった両機種だが、それでも全体的に見ればその損失は低レベルであった。
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ロシア製携行SAM「SA-16 Gimlet」(ロシア名Igla-1 9K310)。1980年代後半に導入された比較的新しい携行型SAM。今や米空軍にとって最大の脅威(笑)となりつつある。
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