熱砂の進軍(上)
トム・クランシー/フレッド・フランクスJr 白幡憲之 原書房
もう10年以上前に出版された本です。以前から読みたいと思っていたのですが、先日入手したので読んでみました。まだ上巻しか読み終えていませんが、とにかく・・・・
「面白い」。
本作の主役は湾岸戦争で米第7軍団を率いたフレッドフランクス中将(当時)。第7軍団は湾岸戦争における多国籍軍地上部隊の主役を演じた重機甲部隊です。
本書はフレッドフランクスから見た湾岸戦争を描きます。この上巻ではフランクスがベトナム戦争に従軍して重傷を負い、片足を失いながらも現役に復帰する様。湾岸紛争が勃発し、米第7軍団の湾岸地区への派遣が決定され、その準備状況等を描きます。そうした大きな流れの中で米陸軍のドクトリン改革や装備の更新、シミュレータを使った訓練の有様等が興味深く記されています。我々ゲーマーにとって馴染みの深い米第11機甲騎兵連隊「ブラックホース」、米第5軍団、フルダ峡谷、空地協同戦といった言葉も出てきてきます。
本書がとりわけ興味深い点は「戦うのは人である」ということを再認識させてくれることです。米陸軍が保有していた兵器群は確かに優秀なものでしたが、兵器が優秀なだけで戦争に勝つことはできません。優秀な兵器、優れた教義、厳しく訓練された兵士、そして優秀な指揮官。これらの要素が噛み合って初めて敵を圧倒することができるということを再認識させてくれます。
興味深い点をもう1つ。本書は1990年代に書かれた本なので「RMA」(Revolution in Military Affairs:軍事における革命)以前の軍事思想に基づいています。つまり意思決定は「分析的意志決定法」に委ねられています。本書を読むと「分析的意思決定法」に基づく意思決定の場面がいくつか出てきます。そのような場面を読みながら「分析的意志決定法」の実際を知るのも良し、あるいはRMA以降の軍事思想と対比してみるのも良し。色々な読み方がでいる著作です。
お奨め度★★★★★
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