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湾岸戦争データファイル

河津幸英 アリアドネ企画

題名の通り湾岸戦争の実体について分析した著作である。データソースは米国防省や米軍の公開資料とのことなので、「それならばそちらを直接読んだ方が良いのでは」とも思えるが、左記の資料を容易に入手でき、かつ苦もなく読み通せる人は少数派であろう。そういった意味で本書のような著作はありがたい。
本書は湾岸戦争における陸海空の戦いをそれぞれ章立てして記載している。空対空戦闘や空対地戦闘といったあたりはメジャーテーマだが、例えば米海軍航空隊とイラク海軍の戦いや米空軍MAC(軍事空輸コマンド)の大輸送作戦等はマイナーである。
文章は平易で読みやすく、かつ湾岸戦争の実体を適格に伝えてくれる好著である。私が興味深く思えた点をいくつか拾いだしてみよう。
まず空対地戦闘の部分だが、空軍によるイラク地上部隊に対する爆撃が予想を下回る成果であったことは驚きであった。当初空軍は地上戦開始前にイラク軍機甲部隊の半数を撃破する予定であったが、実際には最優先目標であったイラク軍共和国防衛隊でさえ、空爆により撃破できた戦車は全体の1/6に過ぎなかったのである。しかもこれは戦争後半に精密誘導兵器を用いた「戦車たたき」が軌道に乗ったから良かった訳で、精密誘導兵器使用以前の無誘導兵器による地上部隊攻撃は、投入した戦力に比して殆ど戦果を挙げ得なかったのだ。航空兵力とは、見かけ上の華々しさとは裏腹に、1991年の時点においても未だ戦争全体を左右するような決戦兵器ではなかったのかもしれない。
逆に活躍が光るのが地上部隊とヘリ部隊、そして特殊戦部隊である。とりわけ地上部隊はイラク軍共和国防衛隊の精鋭部隊と真正面から激突し、常に勝利を収めた。勝因はM1A1戦車の優秀性に拠る所が大きいが、それに加えて米陸軍戦車部隊の技量面での優秀性が大きな勝因であったことを本書は教えてくれる。その一方で勇敢なイラク軍戦車が、M1A1戦車に手痛い一撃を浴びせる場面もあったことを本書は教えてくれる。

お奨め度★★★★