海軍護衛艦物語
雨倉孝之 光人社
WW2における日本海軍海上護衛戦を描いた著作である。この分野では古典ともいうべき「海上護衛戦」(大井篤著)があるが、本作と「海上護衛戦」を比べると、いくつかスタンスの違いが見えてくる。まず1点目は海上決戦の位置づけ。大井氏は海上護衛戦が海軍の本務であるとし、艦隊決戦に固執したことが敗因だとした。しかし雨倉氏は艦隊決戦の勝利こそが海上護衛を安全ならしめる絶対条件であり、そういった観点から見た場合日本海軍の艦隊決戦中心主義は誤りではなかったとしている。雨倉氏は海上護衛をないがしろにしたことが誤りであるとし、その点大井氏と違っている。この場合、雨倉氏の主張が正しいと思う。他にWW1における地中海戦役や大戦間における対潜戦の進歩についても記述している点が興味深い。
値段の割にページ数が少なく、すぐに読み終わってしまう点に少し不満が残るものの、海上護衛戦に新しい視点を提供してくれる作品であることは評価したい。
お奨め度★★★
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