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今回は米海軍のGFCS(射撃指揮装置)について取り上げます。Mk-37とMk-51。いずれも対空射撃を主目的として開発・製造されたGFCSです。

Mk-51

イメージ 6まずMk-51。これは40mm機関砲用の射撃指揮装置です。左の図を見ればお分かり頂けますが、非常にシンプルな構造です。4連装40mm機関砲1基につきMk-51を1基搭載する割合になっているので、例えば4連装40mm機関砲を20基装備する「アイオワ」級の戦艦の場合、Mk-51を20基持つことになります。(注:正確な搭載数は不明です)

この装置が日本側の装置と比較して優れている点は、以下の2点です。
(1)装置そのものがジャイロと連動して安定化されていること
(2)コンピュータと連動した見越し角射撃を実施できること

特に注目すべきは(2)で、この機能により射手はMk-51に搭載されている光学照準器の真ん中に目標を捉え続けるだけで、コンピュータが最適な見越し角を計算してくれるようになっています。無論目視照準なので距離の計測は不可能であり、コンピュータの計算するリードアングルも、目標までの距離を固定として計算しています(マニュアルに「距離が違っている場合は曳光弾を見て修正しなさい」という但し書きがしてあります)。それでも見越し角計算を自動的に算出するのは画期的であり、なるほど、日本機がバタバタと40mmボフォースに打ち落とされたのも頷ける話です。

ちなみにMk-51の後継機がMk-57です。こちらは目視照準に加えてレーダー照準も可能になり、レーダーを使うことにより目標までの距離をより正確に計測できるようになりました。またレーダーを使った盲目射撃も可能になり、夜間や悪天候を利用した攻撃もほぼ不可能になりました。
Mk-57が太平洋戦争に間に合ったかどうかは定かではないのですが、もしこんな化け物が実戦投入されていたら、従来型の対艦攻撃は殆ど実施不可能になっていたかもしれません。

Mk-51に相当する日本側の射撃指揮装置が九五式射撃指揮装置です。25mm機関砲を管制するための装置で、Mk-51と同様に見越し角を計算する機械式計算機を持っていましたが、照準に手間がかかる、高速目標には対応できない等、実戦的というにはほど遠いものでした。

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米巡洋艦艦上の連装40mm機関砲(上)とMk-51 GFCS。両者を比べるとMk-51 GFCSが如何にコンパクトかがわかる。しかし対空射撃の成否は、機関砲そのものの性能よりも、ちっぽけな射撃指揮装置の性能にかかっていた。

Mk-37

イメージ 5つづいてMk-37の紹介です。こちらは38口径5インチ両用砲(5"/38 DP Gun)用の射撃指揮装置です。戦艦、正規空母、巡洋艦、駆逐艦といった主要艦艇に搭載され、例えば「アイオワ」級の戦艦の場合、Mk-37を計4基搭載しています。

こちらはMk-51のような簡易型ではなく、遥かに本格的な装置です。光学またはレーダーを装備した方位盤、プロッティングルーム、射撃指揮用コンピュータ、そして安定化装置を備えています。この中で日本艦にはない装備が安定化装置(Mk6 Stable Element)で、これを使うことにより方位盤は艦の動揺による影響を受けずに目標観測が継続できます。
この安定化装置の威力については識者の間でも意見が分かれている所です。一方で「非常に有効であった」という評価がある反面、「ないよりはマシ程度」といった辛辣なものもあり、いずれが正しいのかは俄に判別が難しいです。ただ対空射撃にしても対水上射撃にしても米艦艇が日本艦艇では考えられないほど高い発射速度を記録した例がしばしばあり(16インチ砲で1分間に2~3発、6インチ砲で1分間に10~15発等)、射撃指揮上便利であったことは間違いないようです。

もう一つ、Mk-37の特徴として射撃指揮用コンピュータ(Range Keeperと呼ばれています)を装備していることが挙げられます。無論、射撃指揮装置にコンピュータを利用することは別にこの装置の専売特許ではなく、米海軍の他の射撃指揮装置(先に挙げたMk-51もその1つです)や日本海軍の射撃盤も射撃指揮用のコンピュータ(勿論、今日我々が使っているものとは違います)を装備していました。ウィキペディアによれば、Mk-37の射撃用コンピュータは「頑強で信頼性に富んでいた」とのことで、その点は日本製のものよりも優れていたのかもしれません。

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米空母「ホーネット」(CV-12)艦上のMk-37 GFCS。煙突の後ろに据え付けられている立方体のものである。取り付けられているレーダーは、Mk-4である。

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