Night Fighterは2011年に米GMT社が発表した空中戦ゲームです。
タイトル通りWW2期における夜間空中戦を扱った作品で、日独米英の夜間戦闘機、夜間爆撃機が登場します。
空戦ゲームとしてはシステムは単純な部類に属し、高度の概念は簡略化され、旋回も1ヘクスにつき1回までと単純化されています。スケールも1ヘクス1マイルと大き目のため、複雑な電子戦関連のルールもシンプルにまとめられています。

今回で3回目となるNightFighterのシナリオプレイ。今回はWW2期で最も進歩した夜間防空システムの威力について検証してみることにしました。選んだのはシナリオ8"Steinboch"。GCIに誘導されたモスキート夜戦が、暗夜に忍び寄るHe117A「グライフ」を迎撃するシナリオです。


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シナリオ8 ステインボック

イメージ 2Night FighterにおけるGCIは極めて高性能な捜索レーダーという扱いになっている。通常の捜索レーダーが捜索精度や捕捉確率についてある程度「運任せ」的な面があるのに対し(前回プレイしたシナリオ3B参照)、GCIは最初のスィープで目標の概略位置を掴み、3回のスィープでほぼ目標位置を特定できる。要撃戦闘機側はGCIによって確定された敵爆撃機に対して最適の接近経路を選ぶことにより、ほぼ自動的に目標に接敵することができる。GCIの欠点は、1)目標が複数の場合に同時に1目標しか追跡できないこと、2)夜間戦闘機が目標を攻撃するためには、最終的には夜戦自身が目で見つけるか機上レーダーで発見しなければならないこと、の2点である。とはいえ、これらの点はGCI固有の問題ではなく他の捜索レーダーでも同じなので、GCIの欠点というよりも限界といった方が適切かもしれない。

イメージ 3このシナリオに登場する英空軍の夜間戦闘機はMosquito NF.XIII。その特徴は優速と高火力である。例えば前々回紹介したドイツ軍の主力夜戦であるMe110G-4やJu88C-4に比べて約40%、日本陸軍の「屠龍」に比べても25%優速であった。ドイツが開発した専用夜戦であるHe219A-2「ウーフー」に対しても若干だが優速、1944年に登場するHe219A-6の段階でようやく同じレベルである。ちなみに1944年5月に登場するMosquito NF.30では、再びHe219を引き離し、米海兵隊が終戦直前に実戦投入したF7F-3N Tigercatと同レベルに達していた。モスキートの速度性能が如何に秀でいたかが理解できよう。
Mosquito NF.XIIIの弱点は、当時のドイツ夜戦に比べて機上レーダーの視野角(捜索範囲)が狭いことと斜銃やシュレーゲ・ムジークといった特殊装備を持たないことだが、前者についてはGCIの支援を受けることによって十分に補い得よう。

ゲーム開始。

最初の2Turnは動きなし。3Turn目に2機のHe177が盤内に進入した。GCIはそのうちの1機を捕捉。夜戦に伝える。モスキートはGCIの報告に基づいて接近コースを割り出し、3Turn後には機上レーダーで目標を捉えた。

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優速を生かしてモスキートは一気に目標との距離を詰める。1Turn後には満月に浮かぶHe177「グライフ」の巨大な姿が視野に入った。ドイツ機はモスキートの接近に気付いていない。射撃距離に近づいたモスキートは、一気に4門の20mm機関砲の火ぶたを切った。命中。目標は何に撃たれたかも気付かないまま、火焔に包まれて落ちていった。

1機撃墜!!

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その頃、GCIが4マイル離れた位置で平行して飛ぶ別の目標を発見していた。モスキートは機首を巡らせて新たな目標を追う。1Turn後には機上レーダーが約1マイル前方に目標を捕捉。さらに加速して夜空に目標を探す。

いた!!

機上レーダーが指し示すまさにその位置にドイツ機の黒い姿が見えた。
しかし今度のドイツ機は慎重だった。
後方から接近するモスキートに気づいていたのだろう。後方銃座から猛烈な射撃を行ってきた。銃弾がモスキートをかすめるが、幸い命中弾はなし。モスキートも慎重に狙いを絞って射弾を送る。命中。しかし致命傷ではない。モスキートはさらに追いすがったが、目標を仕留めることはできず、新たな目標を求めて機首を巡らせた。
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3番目の目標もGCIが位置をほぼ確定させていたので、機上レーダー、そして目視で発見するのは容易であった。この機体は全く無防備でモスキートは容易に目標の後方に接近。必殺の射弾を叩きこんだ。
今度は狙い違わず目標を粉砕。2機目の獲物が夜空に散った。

さらに1機が近付いてきた。しかしこの目標は既に防衛ラインに深く侵入している。一撃を加えることは可能だが、二撃目は無理だ。それならば・・・。

GCIが別の目標を捉えたのはその直後であった。モスキートは例によって目標への最適な接近経路を取って目標機の後方に近づく。

いた!!

機上レーダー、続いて目視で爆撃機を捉えた。この機体に対しては撃墜に手間取ったために爆撃機からの防御砲火を浴び、モスキート自体も被弾したが、最後はモスキートの火力が勝って爆撃機を撃墜した。3機目。

結局この日の戦果は撃墜3、撃破1で、GCIが捉えた5機の侵入機の80%に有効打を与えたことになる。ちなみに勝利条件では2機以上撃墜した場合に迎撃側の勝利となっているので、迎撃側の明白な勝利だった。


感想1

GCIとモスキートの組み合わせは恐るべきもので、勝利条件がかなり厳しく設定されているにも関わらず、勝利を収めることはそれほど困難ではないと感じた。とはいえ、出目が悪いと爆撃機の反撃や回避運動に苦しめられる可能性もなきにしもあらず。ゲームバランスは比較的良好(ややプレイヤー側有利か?)と思われる。


感想2

記録を取りながらのプレイでしたが、プレイ時間は1.5時間ほどでした。恐らく対人戦なら1時間はかからないでしょう。難易度的には前回紹介したシナリオ3Bとほぼ同じ。ただしGCIを使った位置特定はややコツがあるので、その辺りを理解しておかないと審判側に翻弄される可能性もあります。逆にGCIの使い方さえ間違いなければ、あとはダイス目次第といった所はあります。

P.S.この原稿を書き終わった時点で一つのルールミスに気付きました。ルール17.1撃墜です。このルールは敵爆撃機を撃墜した瞬間、夜間戦闘機が閃光に目が眩んだり、衝突回避のために迷走したりするルールです。もしこのルールを厳密に適用していたら、2機目、3機目の撃墜は難しかったかもしれません。


英独航空決戦 ドイツ本土防空戦 (歴史群像 第2次大戦欧州戦史シリーズ Vol. 19) 夜間戦闘機 日独夜間戦闘機