帝国陸軍の最後(全5巻)
伊藤正徳 光人社NF文庫
その名の通り旧日本陸軍の太平洋戦争における戦いについて描いた著作である。本書は太平洋方面だけではなく、中国戦線、対ソ戦も描いている。しかし1941年12月8日以前の戦いは一切描かれていない。だから日中戦争初期の戦いやノモンハン事件については殆ど触れられていない。本書の出版は1960年前後であり、今から50年近くも前になる。既に古典の域に入る本作であるが、その価値は現在においても些かも揺るがない。なるほど古い本なので今の視点から見るとデータ的に怪しい点は皆無ではない。また全般に日本軍に対する評価が甘いため、やや身贔屓に思える記述が目立つことも確かだ。
しかし本書の価値はそのような所にあるのではない。太平洋戦争における陸上戦闘をこれほど詳しく、また網羅的に描いた作品は、後にも先にも本書しかない(防衛省の「戦史叢書」は別格だが、これは「読んで楽しい」類の本ではない)。しかも本書は読んでいて飽きない。なぜなら文体が巧みで読み手を飽きさせないように書かれているからである。本書を読み進めていくにつれ、読者は太平洋戦争における日本軍と連合軍との死闘に自然と入っていくことができるだろう。
細かい点でいくつか不備はあるものの、本書は現時点でも太平洋における陸戦を扱った書籍の中では最高峰の1つと評価できる。
お奨め度★★★★
帝国陸軍の最後-1進攻篇
帝国陸軍の最後-2決戦篇
帝國陸軍の最後-3死闘篇
帝國陸軍の最後-4特攻篇
帝國陸軍の最後-5終末篇
帝国海軍の最後
帝国海軍の栄光
第海軍の想う