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今年3月に発表されたばかりの新作「マンシュタイン最後の戦い」(Game Journal#42)をプレイしてみました。本作は1943年8月~1944年3月におけるウクライナにおける戦いを1Turn=約1ヶ月、1Hex=15~25km、1ユニット=師団~軍団規模で描いた作品です。1943年におけるウクライナの戦いといえば、傑作の誉れ高い「Ukraine'43」(GMT)があります。「Ukraine'43」が戦いの期間を4ヶ月弱に絞り込み、第4次ハリコフ戦からキエフ攻略戦あたりまでを扱っているのに対し、本作はタイムスケールを大きめに取ることによってドニエプル川渡河からコルスン包囲戦までも含めている点で差別化が図られています。またシステム的にも「Ukraine'43」が比較的詳細なルールで戦いの流れを再現しているのに対し、本作は簡単なシステムで全体の流れの再現を図っています。

このゲームは既に評価の確立している「Lost Victory/激闘!!マンシュタイン軍集団」(MMP/Game Journal#4、以下「激マン」)の続編にあたる作品で、システムも概ね共通しています。
基本的なシステムは、軍/方面軍を現す行動チットをカップに入れ、引かれた軍/方面軍司令部から一定距離内に存在するユニットが移動、戦闘を行える、というものです。機動戦を再現するに適したシステムで、チット引きの興奮と相まって非常に楽しくプレイすることができます。反面、防御側が整然と退却することができないので、防御側がかなり不利なことは否めず、流動型の戦闘結果表と相まって攻撃側は殆ど損害を出しません。また、部隊の所属に関係なく司令部の指揮範囲内にいれば1Turnに何度でも活性化できるので、司令部の運用が現実離れするきらいがあります。その辺り、評価の分かれる部分ですが、これまでの所、「激マン」システムに対する批判的な見解はあまり聞きません。

本作が激マンと大きく異なる点は交渉ポイントの存在とドイツ軍チットの入れるタイミング、そしてマンシュタインチットの割り込みです。本作においてハリコフ、スターリノ、キエフといった重要都市に対しては死守命令が適用されており、これらの都市が陥落するとドイツ軍がサドンデス負けを喫します。この制限を解除するのが交渉ポイントで、ドイツ軍プレイヤーはマンシュタインチットを使用して交渉ポイントを得ることにより、死守命令を解除していきます。
ドイツ軍チットの入れ方については、「激マン」では全てのチットをTurn開始時にカップに入れる方式でしたが、本作ではドイツ軍プレイヤーはチットの一部(又は全部)を手元に保持し、ソ連側の動きを見ながら適宜チットに加えることができます。このおかげでドイツ軍プレイヤーは動きたくない時には動かない、という選択がある程度可能になりました。極端な話、チットを全部手元にとっておけば、全軍が整然と退却することも可能になった訳です(その前に戦線を食い破られてズタズタになっている危険性が高いですが・・・)。
マンシュタインチットの割り込みとは、ドイツ軍プレイヤーが手元に温存しているマンシュタインチットを好きな時に使用できるというルールです。これによってドイツ軍はマンシュタインチットを使って危機的な状況を回避したり、マンシュタインチットを集中投入することによって赤軍に痛打を与えることが可能になった訳です。
他にはジューコフチット、ドイツ空軍、ソ連空挺部隊等のルールがあります。

今回、本作をプレイする機会を得ました。私の担当はドイツ軍です。今回が初プレイなのでゲームの感覚がわからないので、取りあえず「流れに任せて」プレイしてみました。

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1Turn(1943年8月)

まだ始まったばかりなのでソ連軍の攻勢を見ながら徐々に戦線を後退させる。

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2Turn(1943年9月)

マンシュタインがヒトラー総統と交渉し、ハリコフの死守命令を解除する。ただ現時点ではハリコフに直接の脅威はまだ届いていない。このTurn、ベルゴルドが陥落した。

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3Turn(1943年10月)

北方ではこれまでドネツ川の線で戦線を支えてきたが、そろそろ限界である。ドネツ川の線を放棄。大都市である上、河川が錯綜しているために守るに有利なハリコフを軸に防衛線を敷く。南方ではドネツ盆地にソ連軍が大兵力を投入してきたので、総統との交渉によりスターリノの死守命令を解除。戦線全体を徐々に西に下げていく。

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4Turn(1943年11月)

ハリコフ西方でソ連軍の圧力が強まってきたので、装甲兵力を集中して反撃を敢行。一定の戦果を収めた。

5Turn(1943年12月)

ハリコフはまだ頑張っている。

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6Turn(1944年1月)

このTurnからソ連軍の戦術が一変してきた。これまでは兵力の温存を図るため統制前進主義を採用していたソ連軍であったが、横から不意に現われたF政治局員が浸透戦術を主張。それを採り入れたソ連軍はこれまでの方針を一転して機械化部隊による大胆な包囲戦術を採用してきた。その猛攻はキエフ方面に指向され、同方面を守っていたドイツ軍は大損害を被ってしまう。
キエフには死守命令が出ている。キエフが落ちれば全てが終わりだ。慌てたドイツ軍は強力な装甲擲弾兵師団をキエフに投入。その守りを固める。また装甲兵力の主力を北にスイングさせ、キエフ救援に向かわせた。

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キエフ周辺で守りを固めるドイツ装甲部隊

7Turn(1944年2月)

キエフ前面でドイツ軍が猛反撃に出る。先のTurnに大攻勢で陣形の崩れたソ連軍の翼側から装甲師団8個、装甲擲弾兵師団1個を投入。マンシュタインチット2個を継ぎこんで機械化兵力の包囲せん滅を図った。ソ連の戦車、機械化軍団5個がステップロス。キエフを狙うソ連ヴォロネシ方面軍は突破力の過半を失った。
南方ではドンバスを守っていたドイツ第6軍が急速後退を実施。主力をドニエプル川西岸に収容することに成功した。ドニエプル川は天然の障壁。これで南方戦線は一応の安定を見た。
問題なのはハリコフ戦線。このTurn、ハリコフが陥落したが、ソ連軍の攻勢はそれに留まらなかった。先のTurnからソ連軍が浸透戦術を採用してきたことに対抗し、ドイツ側もこれまでのZOCに頼ったスタック防御から、ユニットを一列に並べる線防御に切り替えたが、結果から言えば失敗だった。弱体化したドイツ軍部隊は各地で撃破され、その間隙を突いたソ連軍によって残ったドイツ軍は次々と包囲せん滅されていった。このTurnだけで失ったドイツ軍歩兵師団は10個以上に及んだ。

移動力を払えばZOC浸透可能な本作においては、線防御が一見有利に思える。しかしこれは間違っていた。ZOC浸透可能とはいっても移動力の関係上浸透できるのはソ連軍では機械化部隊のみ。歩兵は浸透できない。さらに(これも移動力の関係上)浸透するためには予め敵ZOC内から移動を開始せねばならず、浸透可能な場所は自ずと絞り込むことができる。さらにZOCで囲まれてもステップロスすれば後退可能なので致命的とはいえない。さらに浸透攻撃に味方が耐えれば、それを反撃軸にして敵機械化兵力を撃破するチャンスも生まれてくる。
逆に線防御を採用すると、ソ連軍は接敵後即攻撃が可能なため、戦闘後前進を使うことで1回の移動、戦闘だけで独軍を包囲できる。また個々の拠点が弱体化するので、包囲攻撃に脆く、極端な話正面攻撃でも撃破される危険が生まれる。


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8Turn(1944年3月)

終盤である。キエフ前面の脅威を排除した独軍は、ドニエプルペトロフスクの守りを固める。キエフ同様死守命令が適用されているドニエプルペトロフスクは何があっても守り抜かねばならない。ドニエプル河畔の両翼に装甲兵力を配してソ連軍の包囲攻撃に備える一方、ドニエプルペトロフスクそのものにも装甲擲弾兵師団を入れて鉄壁の守りを固める。結果としてはドニエプルペトロフスクは守り切った。ドニエプル川戦線も安泰。VP的にも37VPでドイツ軍が勝利をおさめた。

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感想

面白いです。
5Turnまでは結構安心し切っていたのですが、6Turnにキエフ正面が危なくなった時には流石に慌てました。「ささいなミスが勝利を敗北に変えてしまう」という本作のキャッチコピーを地で行く展開になりかけました。ドイツ軍はギリギリで支えている緊張感があり、そのあたり名作「Ukraine'43」(GMT)にも通じる所があります。

今回はお互い初プレイだったので手探り状態だった感は否めません。ドイツ軍の立場で言えば、ソ連機械化部隊の浸透戦術に対してはもっとマシな対処が可能でした。敵司令部の位置と機械化部隊の位置を把握し、突破可能なポイントを見極めれば、もう少し犠牲を少なくできました。敵司令部、機械化部隊、さらにはチットの回り具合等を見極めた慎重なプレイがドイツ軍には求められそうです。

ともあれ今回はホンのサワリです。まだまだ研究の余地がありそうだし、また研究する価値のある作品だと思いました。


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