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South Pacific Destroyer

Russell Sydnor Creshaw Naval Institute Press

本書は米駆逐艦「マーレー」(USS Maury DD-401)を中心に描いた海戦期である。駆逐艦「マーレー」は基準排水量1500トンの駆逐艦で、バーグレイ級に属している。このクラスは雷装を重視したことで知られており、両舷に合わせて16門もの魚雷発射管を備えている。日本海軍で最も雷装の強力な駆逐艦は「島風」だが、それでも魚雷発射管が15門だったので、バークレイはそれを上回っている(もっとも魚雷そのものの大きさや威力は比較にならないが・・・)。
本書は1942年11月30日のタサファロング海戦(日本名ルンガ沖夜戦)に始まり、1943年7月のクラ湾夜戦やコロンバンガラ沖夜戦、そして同年8月のヴェラ湾海戦までを描いている。日本でもあまり描かれることの少ない期間だが、それを米駆逐艦の視点から描いているという点も珍しい。
本書は駆逐艦から見た夜戦の姿や航空機に対する戦いを生々しく描いている。また単なる戦闘場面だけではなく、後方基地での休養や他の艦との共同行動、救助作戦といった戦争の様々な側面を描いている。米側から見たソロモン海戦という姿勢が一貫して貫かれているため、当時の日本側の事情、例えばガダルカナルからの撤退戦やい号作戦、あるいは山本長官の戦死などは断片的に触れられている程度である。そういった意味で戦争を立体的に見るという意味ではやや物足りないが、元より本書の目的外のことであろう。
米駆逐艦から見た太平洋戦争の姿を知るには格好の著作といえる。

お奨め度★★★★