Mech War 90は、Hobby Japan社が1986年に発売した現在戦戦術級ゲームです。1990年前後における東西陣営の対決を描いたゲームで、米ソ両国の他、日、英、西独、イスラエル、シリアの各軍が登場します。1ユニットは車両1両または歩兵1分隊(班)。プレイヤーは大隊~中隊規模の部隊を率いて戦います。
シナリオ1:ソ連戦車大隊の攻撃/アメリカ戦車中隊の防御
最初に練習も兼ねてシナリオ1をプレイしました。下名は駒数の少ないアメリカ軍を担当します。米軍の兵力は計14台のM1エイブラムス戦車。M1はM1でもM1A1ではないので105mmライフル砲の装備型。敵は125mm滑腔砲装備のT-74。しかも大隊規模なのでその数40両以上。火力面の不利、兵力面での不利は否めません。結果はソ連軍4個中隊のうち1個中隊を潰走させた時点でいったんお開きに。まあ練習としてはこんなもんでしょ。
シナリオ9:ソ連戦車大隊の攻撃/陸上自衛隊戦車中隊の防御
折角なので陸上自衛隊が登場するシナリオをプレイしましょう、ということで、このシナリオを選びました。下名はソ連軍を担当しました。40両以上の戦車と10両の歩兵戦闘車を率いて進撃するのはなかなか豪快です。結果はソ連側の圧勝。数に物を言わせて距離0.5~1.5kmで戦車砲を撃ちまくり。こちらにも相応の損害が出ましたが、手数の違いによって押し切りました。
シナリオ14:ソ連戦車大隊の攻撃/陸上自衛隊普通科(装甲)中隊の防御
このゲーム、何か変だぞ。と思い始めた我々は、歩兵の出てくるシナリオを試してみることにしました。今回は歩兵とMAT装備のジープ、普通科部隊、そして74式戦車1個小隊(4両)で、戦車40両以上を持つソ連軍戦車大隊を迎え撃ちます。下名は陸自を担当しました。
地形を利用してMAT装備のJeepを隠し、2km以上の遠距離射撃でT-74戦車をアウトレンジしようと試みますが・・・。
結果はやはり初期にサドンデス負け。なるほど遠距離からのATM射撃は有効でT-74を何両か葬りますが、逆に最大距離からの盲目射撃に近い直接射撃によってJeepも半数以上を失う始末。盲目射撃に近い射撃であっても、数があるのでいつかは有効弾が出ます。当たればJeepなので脆く、損害を出せば士気チェックを強いられます。士気チェックが重なれば部隊崩壊が加速度的に進み、最後は全軍崩壊。
今回もシナリオ9とほぼ同じ展開になりました。
まとめ
残念ながら、今回プレイした感想としては、本作について否定的な評価を出さざるを得ません。まずシナリオの作りこみが甘いと思われます。今回プレイした所謂「攻撃vs防御」型のシナリオの場合、攻撃側と防御側の兵力差がありすぎて、攻撃側の勝利は動かないと思われます。せめて勝利条件を変える(例えば攻撃側の半数を潰走させれば防御側のサドンデス勝ちにする)等しないと、ゲームになりません。
シナリオについても「ソ連軍戦車大隊の攻撃vs米軍戦車中隊の防御」といった感じで攻撃側、防御側の国籍や兵科を弄ってバリエーションを増やしていますが、勝利条件はいずれも「防御側を全滅させるか、士気値を1以下にする」という感じ。まともなテストプレイをしていないのでは、と邪推したくもなります。
システム的にも問題が多いです。デザイナーズ・ノートによれば、「簡単なゲームを目指した」とのこと。確かに射撃や移動のシステムはシンプルなのですが、プレイしてみると案外面倒くさい。特に射撃を両軍1ユニットずつ交互に行うとか、対戦車ミサイルは発射と着弾を別フェイズにするとか、どうでも良い様な点が妙に細かく、その事がプレイのテンポを悪くしています。あと役に立たない癖に面倒な間接射撃とか・・・・。
キャラゲーとしても問題が多く、例えば我が74式戦車とレオパルド2(でもM1でもT-90でも何でも良いのですが・・・)が撃ち合ったとして、両者の優劣は殆どありません。105mmライフル砲であれば、(当時の)西側新鋭主力戦車の正面装甲をいとも簡単にぶち抜きます。いわんや120~125mmクラスの滑腔砲なら、最大射程3km(30Hex)で撃っても世界中の戦車の正面装甲をぶち抜きます。後知恵で批判するのは酷な気がしますが、湾岸戦争での「戦歴」を知っている我々としては、戦車砲の偉大すぎる貫通力に違和感を禁じ得ません。ATMもしかり。TOWであれ、ヘルファイアであれ、ミランであれ、どんな戦車でも当たればお陀仏。装甲の優劣なんて関係ないない。もう少し戦車の優劣差が表現されていれば、キャラゲーとして復活させる手もあったにですが・・・。
救いがあるとすれば、今回のプレイではまだヘリを使っていないことと、遭遇戦型のシナリオをプレイしていないことかな。遭遇戦型のシナリオなら、両者の兵力差が殆どないので、ひょっとしたら面白いゲームに化ける可能性がありますが・・・。このゲームにこれ以上時間をかける価値があるかどうか・・・。
Photo by JGSDF