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私自身について言えば、海戦といえば専ら動力船以降、しかも出来れば航空機とか潜水艦とか純粋な意味での「フネ」以外のものが登場するゲームが好きです。しかし化石燃料を使わず専ら自然の力(今風に言えば再生可能エネルギー)を利用する帆船への人気や帆船同士の戦いに対する人気はそれなりに高いらしく、有名な"Wooden Ships & Iron Man"を始め、いくつかのゲームが出版されているようです。

今回紹介するFlying Colorsは、GMT社が2005年に出版した帆船同士の戦いを描いたシミュレーションゲームです。データカードやプロット方式を用いず、艦の性能はユニットの表記のみ、移動は交互移動というシンプルなシステムを用いて18~19世紀の水上戦闘を再現します。登場するのはイギリス、フランス、スペイン、デンマークの各国です。

EL FERROL 1800

練習シナリオをプレイした後、比較的軽めのシナリオということで、"EF FERROL"を選びました。
このシナリオは、1800年8月25日に行われたBorlase Warren提督率いる英艦隊によるフェロール港襲撃を描いたものです。史実では英艦隊による奇襲が成功しスペイン側の対応が失敗しましたが、本シナリオでは「もし、
スペインのMorero提督が英艦隊を迎え撃っていたら」という半仮想戦になっています。下名はスペイン側を担当しました。

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本シナリオでは、英艦隊が5隻、スペイン艦隊に6隻の戦列艦が登場します。隻数ではスペイン側が優位に立っているのに加えて、スペイン側が旗艦「サン・フェルナンド」を始めとして96門乃至112門の大砲を備えた1等戦列艦が3隻、80門搭載の2等戦列艦1隻を有しているのに対し、イギリス側は98門搭載の2等戦列艦「ロンドン」を除けばいずれも74門搭載の3等戦列艦で個艦能力で大きく見劣りします。ただしイギリスは元々のルールで砲撃戦での優越が認められているのに加えて、このシナリオでも戦意面でスペインに対して1ランク有利になっています。また指揮官もスペイン側の1名に対してイギリス側は2名用意されています。いわば艦の質量両面で優位に立つスペイン側に対し、兵員の戦意と指揮官の能力で勝るイギリス側が如何に戦うか、といった所が本シナリオの見どころと言えましょうか・・・・。

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戦闘は両軍の先頭同士の衝突で幕が開きました。スペイン側前衛の3等戦列艦2隻とイギリス側の同2隻が砲戦を開始。戦いは一進一退の状況ですが、練度に勝るイギリス側が全般にやや優勢といった感じになります。
やがてスペイン側の主力である大型戦列艦が戦場に到達。イギリス側も後続の隊が加わりいよいよ戦闘がたけなわといった感じの所で、突如風向きが変りました。今まで両軍とも斜め後方から吹いていた風が、いきなりイギリス側にとって向かい風となります。しかもスペイン側の砲火は主にイギリス艦の帆走具を狙っていたので、航行能力に打撃の受けていたイギリス艦が風に翻弄される形となります。上手まわしで風を乗り切ろうとした英艦「Impeteux」が、僚艦「Courageux」と衝突。両艦とも行動の自由を失います。
チャンスと見たスペイン艦隊が英艦隊の戦列に突入を敢行。至近距離からの両舷砲火で英艦隊を薙ぎ払います。特に2隻の112門1等戦列艦「Real Carlos」と「San Antonio」の砲火は凄まじく、英艦隊は次々と撃破されていきました。一連の砲撃戦で英艦隊の5隻中4隻の戦列艦が大中破。残ったのは2等戦艦「ロンドン」のみという状況になりました。スペイン艦隊の方は旗艦「サン・フェルナンド」がかなりの損傷を被ったものの、まだ損害は軽微であり、この時点で勝敗は明らかでした。

さらにもう一戦

最後にプレイしたシナリオは、出所が不明なのですが、イギリス戦列艦5隻とフランス戦列艦5隻の戦いを描いたシナリオです。両軍とも3等、4等戦列艦が主力です。このシナリオでは珍しくイギリスよりもフランス側の方が戦意が高く、質的優位がフランス側にあります。下名はフランス側を担当しました。

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結果は僅差でフランス側の敗北に終わりました。お互い1隻づつ中破した所までは互角の結果だったのですが、中破した艦のVPがフランス側の方が高く、その分敗北に終わりました。

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感想

ルールはシンプルですが、風の使い方に慣れが必要と感じました。
「風上が有利」というのは感覚的に理解できるのですが、風上からの砲撃、風下からの砲撃という概念は一筋縄では理解できませんでした。「帆を狙いたければ風下へ」「船体を狙いたければ風上へ」というのがセオリーのようです。
ルールはシンプルなのでトラファルガー級の大海戦もその気になればプレイ可能かと思われます。砲撃戦の結果も基本的には船体と帆走だけなので損害記録もシンプルです。ただ損害状態をマーカーによって表示するシステムなので、損害が増えたらユニットが煩雑になるのは仕方がありません。

いずれにしても帆船の戦いをプレイアブルに描いた佳作といって良い作品だと思いました。