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Game Journalの新作、「信長後継者戦争」をプレイしてみた。
このゲームは本能寺の変で織田信長が倒れた直後からの織田家家臣間での後継者争いをシミュレートした作品である。プレイヤーは、羽柴秀吉、柴田勝家、明智光秀のいずれか1人を担当し(ランダムに決定)、その他に織田信長の血縁者(北畠信雄、神戸信孝、三法師)の中で自らを支持する1勢力、その他の陣営(北条、上杉、徳川、滝川、毛利、長宗我部)の中から自陣営を支持する2勢力をランダムに選択し、計4勢力で信長後継者の座を巡って戦いを演じることになる。

今回、3人のプレイヤーが担当した陣営は以下の通り。
 羽柴陣営:羽柴秀吉、織田信孝、毛利輝元、上杉景勝
 柴田陣営:柴田勝家、織田信雄、長宗我部元親、徳川家康
 明智陣営:明智光秀、織田三法師、北条氏直、滝川一益
下名は羽柴陣営を担当した。

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1Turn(天正10年)

イメージ 5室町幕府の末裔である足利義昭公を擁し、羽柴、毛利の最強タッグなので意気揚揚の羽柴陣営は山陽道を東進。伊丹の手前まで来たところで明智光秀麾下の主力部隊と滞陣する。その時「よ、洞ヶ峠」とカードを出されてしまい、内心嫌々秀吉に従っていた中小大名が一気に四散してしまう。「仇敵撃滅」の意気に燃えていた羽柴秀吉であったが、思わぬ水入りに唖然とする。
ターン最終段階に清州会議が開催され、なんと明智光秀も織田家の正統な後継者として認められることとなった。

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2Turn(天正11年)

イメージ 6摂津の陣で滞陣を続ける羽柴秀吉麾下の主力部隊は、秘策「魚燐の陣」で茨木方面に陣取る明智光秀麾下の主力に対して総攻撃を仕掛けた。しかし甲賀者の暗躍によって魚燐の陣が見破られてしまい、明智勢の待ち伏せ攻撃を受けてしまう。
一方的な反撃を受けてほうほうの体で逃げだす羽柴軍。混戦の中で十河存保が戦死してしまう。

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イメージ 7越後戦線でも異変が起こった。上杉景勝率いる上杉勢が、三国峠を越えて関東平野に進出。沼田城に真田信幸を囲んだ。その上杉の留守中、揚北の新発田重家が内乱を起こした。新発田重家の勢いは、越後中部から坂戸城(現在の南魚沼郡)付近にまで進出。沼田で滞陣中の上杉景勝の背後を脅威する。
慌てた上杉景勝は三国峠を越えて越後に戻り、新発田重家を撃破すべく布陣したが・・・。
新発田隊は地形を利用した待ち伏せ攻撃により上杉勢を散々に撃破した。総崩れになる上杉勢は、退却戦の中で上杉景勝、直江兼続ら首脳陣が次々と討ち取られてしまう。ここに上杉勢は回復不能は程の打撃を受けて壊滅。越後はいきなり軍事的空白地帯となってしまう。

イメージ 8その時、旗を上げたのは、古くから織田家の重臣であった丹羽長秀であった。信濃の深志城(現在の松本市)より進撃を開始した丹羽勢は周囲の武将を従えて越後に進出。坂戸城に布陣した。

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3Turn(天正12年)

イメージ 9畿内では摂津に羽柴勢を撃破した明智光秀が権勢を欲しいままにしていたが、柴田勝家陣営が北陸路から南下して近江に進出。和泉、河内方面へは水軍を使って渡海してきた毛利輝元陣営が進出。侵食していく。毛利の進撃は京にまで及び、山科そして京の市街地が毛利の支配下に落ちていく。
イメージ 16そんなこんなで勢いを失っていく明智勢に対し、タナボタ式で天下人に躍り出たのが我が羽柴陣営であった。天下人となった羽柴秀吉は、大徳寺で信長公の大規模な葬儀を実施。世間の注目を浴びた。
しかし秀吉の天下は1月と持たず、次に天下人となったのは柴田勝家であった。

イメージ 10その頃、四国では長宗我部元親が暗躍を開始。織田信孝が支配する四国東部に対して野心を示していた。長宗我部の動きを警戒した織田信孝は同盟者である毛利に救援を要請。毛利輝元は京都付近で行動中の小早川隆景に対し、兵力の一部を率いて長宗我部を牽制すべく四国へ出陣を命じた。
讃岐から四国入りした小早川隆景隊であったが、反撃してきた長宗我部軍勢を迎撃すべく出撃した所で、長宗我部の待ち伏せ攻撃を受けて大損害を被った。この戦いで小早川隆景が討ち取られ、毛利家も野戦軍の一部を失ってしまう。

和泉では要域堺に対して明智光秀麾下の主力部隊が進攻を仕掛けてきた。四国で長宗我部対策に腐心していた織田信孝に明智勢を追い出す力はなく、堺は明智勢の支配下に陥った。

4Turn(天正13年)

最終Turnである。この時点で柴田勢がVPではトップに立ち、羽柴、明智の2陣営がドングリの背比べ状態であった。
イメージ 12このTurn羽柴勢は兵農分離を実施。これにより1ラウンド余分に動けることになった。最後の逆転を期待する羽柴勢。四国に反撃の機会を求めて羽柴秀吉、羽柴秀長の羽柴ブラザーズを四国に向けて前進させた。また近江では京に進出していた毛利輝元が兵を率いて坂本から北近江に進出する。近江は柴田勢の支配下にあったが、VP価値が7VPと大きく、近江の支配を崩すことで柴田の優位を崩せることが期待できる。
坂本から大構に進出した毛利輝元隊。大構で城に籠る織田信澄に対し、毛利隊は猛烈な強襲攻撃を仕掛けるが、織田信澄の抵抗は激しく攻撃は失敗。近江の支配を崩すという毛利の目論見は、脆くも失敗に終わってしまう。

イメージ 13羽柴側最後の反撃は四国で実施された。讃岐から羽柴秀吉、瀬戸内海から羽柴秀長が伊予に進出。河野道直らが守る伊予を電撃的に侵攻してこれを支配した。その間、長宗我部主力は阿波西部の白地(現在の池田市)に集結して羽柴方の動きを伺っていたが、羽柴型から伊予西部から土佐に攻め込む動きを見せたので、主力を率いて岡豊(現在の高知市付近)に引き返してきた。阿波方面の軍事的脅威の軽減を見越した織田信孝隊が阿波に進出。勝端(現在の徳島市付近)の城を落とし、あらに一宮の(現在の徳島市南部)まで支配した。

イメージ 11最終的に伊予、讃岐、土佐の3国を羽柴、織田信孝勢が支配。阿波における四国での長宗我部の支配を崩すことにも成功したが、そこまでだった。北陸一帯を抑え、近江、尾張、美濃、駿河をも支配した柴田陣営が逃げ切りで勝利。我が羽柴陣営は最後に追い上げたものの、VPで3点及ばず2位だった。

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感想

ルールブックはGame Journal標準としてはやや厚めで細かいルールは多い。従って初心者同士のプレイでは、ルールブックを何度か見直す必要があるだろう。しかも概念的に他のゲームとは異なっている部分も多くあり、さらに3人のプレイヤーが4つの勢力をそれぞれ指揮するというスタイルも独特である。
そういった意味ではややとっつきにくいゲームと言えるが、基本的なシステムは極めてシンプルなので慣れたプレイヤーが1人いれば、サクサクとプレイできるだろう。

3人プレイというスタイルも独特だが、ある程度ゲームの流れが支配されているので、突飛な展開になることは少ないと思われる。
プレイの流れを支配するのは、正統/反逆という考え方である。正統状態のプレイヤーは、反逆状態になることなしに大義名分が立たない相手に戦争を仕掛けることができない。逆に大義名分が立たない戦争を仕掛けた場合、プレイヤーは正統性を失う。大義名分としては、カードを使って得る場合の他、謀反人、天下人、そして反逆状態のプレイヤーに対しては大義名分を得る。従ってゲーム序盤は(信長公を虐げて謀反人扱いである)明智光秀が他の2者から集中攻撃を浴びることになり、清州会議開催後は明智光秀が謀反人扱いではなくなるので天下人(その時VPがトップのプレイヤー)が攻撃対象になる。3人プレイヤーの場合に有りがちな「2人が組んで1人を叩き続ける」という展開に成り難く出来ているのは良い。

戦闘システムもゲームの流れに影響を与えている。基本的に防御側有利な戦闘システムなので、戦線を適切に引いた相手に対してはなかなか突破できない。また決戦兵力を1箇所に集めて突破を狙うと、相手も同じように決戦兵力を集めてくるので睨み合いとなり、動きが取れなくなること必定。それよりは戦線を広げて相手の弱点部を狙って攻城戦を仕掛けた方が良い。

こうして時代の流れに流されつつ、お互いに弱点部をネチネチ突きながら、徐々に支配領域を広げていく渋い展開となる。時折発生する大会戦は、基本的には防御側有利ながらも、ギャンブル性が極めて高いのでなかなか結果が読めない。しかし全般状況が不利な場合は、敢えて戦術的に不利な状況下で野戦を挑み、逆転を狙う手もあるだろう。

プレイ時間は我々の場合フルターンプレイして5~6時間であった。長考派が居なかったが幸いした面はあり、長考派がいればもう少しプレイ時間が延びる可能性はある。しかし1日あれば十分プレイを終えることができよう。

「信長後継者戦争」は3人ゲームという難しいジャンルに挑戦し、結果を出した稀有な作品である。テーマ的にも我々にとっては馴染みやすいものなので、プレイしていて楽しい。初心者でもボコボコに負けることは少なく、それなりに楽しめる作品だと思う。