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無謀かもしれないが、GMT社の大型現代戦ゲーム"Next War Korea"の上級ルールシナリオに挑戦してみた。選んだシナリオは16.2.3 Tactical Surpriseである。以下はそのレポートである。

前回の展開 --> こちら

ゲーム展開についての感想

ふーう、終わった・・・。
今回のキャンペーンは、これまでになく時間のかかったプレイであった。
記録によればプレイ時間は約140時間。この中には記録を取る時間、ルールを確認する時間、ルールを間違えていたのでやり直した時間(約30時間)も含まれているため、純粋なプレイ時間はもっと短くなる。プレイに専念するならば60時間ぐらい、慣れれば40~50時間でプレイ可能だろう。1Turnの所要時間は3~5時間といった所だろうか・・・。以前にプレイした時は、2日間の連続例会で4Turnまで終了したので、上記の見積もりは左程的外れではないように思える。しかも対人戦の場合、本作は基本的にはマンツーマンゲーム(ビックゲームのようなマルチプレイが困難、という意味)なので、同じ対戦相手と睨めっこで数日間プレイする必要がある。これは辛い。

いずれにしてもヘビーなゲームである。昨年紹介したArdennes'44のキャンペーンシナリオの場合でも、所要時間は84時間であった。それと比較して今回はその1.5倍以上の時間がかかった訳である。ルールの難度の高さと相まってそうそうプレイできる作品ではない。

イメージ 6今回は連合軍の圧勝に終わったが、実際にはかなりヤバイ場面があった。転機は第7Turnで、ここで主導権を取り返した所で流れは完全に変わったが、逆にこのTurn、北朝鮮軍が押し切ってサドンデスに持ち込む可能性もあったのだ。後で説明するが、仮に正しいルールでプレイしていたら、このTurnでゲームが終わっていた公算はかなり高かった。そういった意味では、このシナリオについてはむしろ北朝鮮軍が有利なのではないかと思われる。

イメージ 2連合軍としては航空戦力の運用が鍵になるだろう。特に阻止任務が重要だと思われる。今までのプレイでは、いずれも北朝鮮軍が東海岸から突破し、その突破が中央戦線に波及してきてチュンチョン(春川 Chuncheon N3820)あたりから突破されてお手上げ、というパターンが多かった。またソウル全面は陣地帯が強固な上、増援部隊の投入も容易なので、比較的持ちこたえやすい。そういった意味では東海岸における北朝鮮軍の跳梁をどうやって押さえ込むか。その際数少ない地上兵力に負担をかけずに航空戦力で足止めできるか。そのあたりが鍵になりそうだ。というよりも、それぐらいしか連合軍側の勝機が見えない。

イメージ 4逆に北朝鮮軍は大兵力に物を言わせて連合軍の弱点部を叩き続けるのがポイント。ただし特定のTurnに大損害を被ると、次Turnの主導権が失われる可能性があるので要注意。今回は私が北朝鮮軍に思い入れがなかったのでかなり大雑把なムーブになったが、北朝鮮軍にはさらに工夫の余地がある。例えばZOC抜け可能な特殊部隊を投入して相手の背後を断つとか、空中機動作戦で敵の後方深くに浸透するとかだ。司令部による敵部隊攻撃ももっと積極的に利用した方が良かっただろう。とにかく地上兵力の優位が圧倒的なので、その優位を失わないようにすれば良い。

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ゲームシステムに対する感想

イメージ 3兎に角ルールが多い。また複雑である。
まず複雑という意味においては、陸戦ルールが複雑である。戦闘に対する修正が、火力修正、コラムシフト、ダイス修正と3種類もあり、とにかく面倒である。個人的にはダイス修正は余計だと思うのだが、如何だろうか?。戦闘システムが細かい割にZOCが弱いので、戦線を組む際にはユニットを敷き詰めなければならない。しかも攻撃側有利な戦闘システムである。リアルかどうかは不明だが、攻撃偏重の流れになるので、防御側は切ない。ルール的には遥かにシンプルなシモニッチシステムの方が、プレイしてみてリアルに感じるのは気のせいだろうか・・・。

イメージ 10司令部、特殊部隊、航空機、巡航ミサイル等も、個別には興味深いのだが、統合してプレイすると煩雑さが先立ってしまう感は否めない(とは言え、航空機ユニットが入っていなかったら多分下名は本作を購入しなかったであろう。ゲーマーとは身勝手なものである)。

イメージ 9それよりも問題と思えるのは、シナリオの勝利条件である。VPで決まるのだが、終了ターンが決まっていないので理論上は無限にゲームがつづく。一応国連による仲介ルールがあり、毎Turn20%程度の確率で国連による休戦決議が成立するのだが、米国の場合は拒否権を発動して停戦を無効化できるし、北朝鮮軍も停戦拒否が可能だ。いずれの場合もVPでペナルティを被るのだが、特に連合軍側が負けている状況下で停戦を受け入れるとは思えず、結局サドンデスまでゲームが続くことになる。現実的にはプレイヤーがお互いに疲れきって「もう辞めましょう」となってゲーム終了というパターンになるだろう。

イメージ 11ところで上記の問題点に対する一つの回答が「標準ルール」である。こちらは上に述べた司令部、特殊部隊、航空機、巡航ミサイル等のルールはなく、地上部隊とヘリ部隊しか登場しない。一部のシナリオを除けばゲームの長さや勝利条件も明確である。ゲームとして遊ぶのであれば、こちらの方が良いだろう。とはいえ、単なるゲームとしてなら他にも良い作品が沢山あるので、敢えて本作を選ばなくても良いという考え方もあるし。

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間違いやすいルール

以下に挙げるのは実際にプレイ中に間違えたルールである。他にもいくつかルール間違いがあったが、こんな難しいゲームを完璧にプレイしきるのは無理だろう。

SA 8.3.1.10 Fortification

敵の要塞ヘクスは、道路効果を無視する。
今回のプレイではしばしばこのルールの適用を忘れていた。このゲームは地形効果が厳しいので道路は使えないと移動が厳しくなる。特に機械化部隊は道路なしでは1~2ヘクスぐらいしか動けない。ただ「1度占領された要塞は、要塞効果を失う」とあるので、兎に角1度踏んでしまえば道路効果は復活する。そう考えると、実際の所、あまり実害はなかったのかもしれない。

GSR 2.5.1 Busan Reinforcements

米陸軍の増援部隊については、日本または釜山を経由しない場合、到着が1Turn遅延する。
中盤まですっかり忘れていたルールである。そのため米陸軍所属の増援部隊の一部は、実際よりも早く戦場に到着していた可能性がある。

GSR 16.2.1.2.3 Supplies

上級シナリオでは、北朝鮮軍は中国から毎Turn補給ポイントと弾道ミサイルの補充を得る。連合軍も同じく日本から補給ポイントの補充を得る。
中盤以降はあまり意味がなくなったが、序盤、まだ連合軍のヘリ部隊が少ない状態でヘリ基地をスカッドで狙い撃ちされていれば、連合軍はさらに苦しい状況に追い詰められていただろう。

SA 18.2.1 Combat Column Shift(s)

これはGMT社のエラッタから拾ってきたルールである。

"Multiple HQs may provide support as long as eligibility requirements are met."

イメージ 12要するに"条件に合致すれば複数個の司令部で戦闘支援しても良い"ということである。複数個の所属部隊を戦闘に参加させて複数個の司令部で支援しれば、有利なコラムシフトが得られるということだ。
しかしこのルールについては納得が行かない。なぜなら、本作はだたでさえ攻撃側有利な戦闘システムなのに、複数司令部による支援を認めると、攻撃側は事実上無制限なコラムシフトを得られることになる(防御側は戦闘に参加する部隊自体が少ないので、複数司令部による戦闘支援は得られにくい)。例えば司令部6個で支援すると、コラムシフトがなんと12。最低コラムから最高コラムに早変わり。
「これじゃあんまりでしょう」
というのが下名の感想である。

GSR 16.2.1.4 U.S. and Commonwelth Arrival Roll

If the player fails the Arrival Die Roll, the entire row is delayed and arrives in the following turn. However, this pushes back the rest of the reinforcements as well which must still roll for arrival in their new turn of entry.

イメージ 14これも困ったルールである。連合軍の増援部隊のうち、米英豪軍についてはダイスチェックを行い、失敗したら1Turn到着が遅れる、というルールがある。それはそれで良いのだが、問題は1度失敗した後の話。今回は「1度失敗したらその後の増援は一律1Turn遅れるだけ」と解釈してプレイした。
しかしどうやら違っていたようだ。
上記によると、遅延が発生した後の増援部隊についても遅延チェックが必要で、それに失敗するとどんどん遅延が溜まっていくらしい。ただ同じ増援部隊を複数回遅延チェックする必要はなさそうだ。

このルールを適用すると、連合軍はさらに苦しくなるが、まあルールなのだから仕方がない・・・か。

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まとめ

イメージ 8Nexr War Koreaは、現在戦でかつ我々に身近なテーマということで、我々としては期待の作品であった。しかし上述の通りヘビーなゲームなので、おいそれとプレイできないゲームである。キャンペーンシナリオについては、今回のようなソロプレイとか、あとはVASSALを使ってセッションを区切ったプレイとか、色々と方法はあると思う。

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