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GMTの新作ゲーム"France'40"は注目していた作品である。
フランス戦というアンバランスな(と一般に理解されている)戦いを鬼才マーク・シモニッチがどのように料理したのか。2009年に同じGMT社から発売されたCase Yellowがあまり芳しい評判を聞かない中、こちらがどのようなゲームなのか。期待と若干の不安を持って臨んだ今回の対戦である。

イメージ 11プレイ自体の紹介に入る前に、本作の基本的なシステムを紹介しておこう。
本作は、シモニッチ氏の前作であるArdennes'44(GMT 2003)に類似したシステムを採用している。基本的には移動・戦闘の繰り返しで、戦闘時に練度や戦車効果、空軍支援等によるシフトが付く。特徴的なリールはZOCボンドと断固たる防御。前者は従来のZOCに追加した概念として、2つのユニットに挟まれたヘクスに対して強力な移動阻止地帯を作りだす。この結果、ユニットをキッチリ並べなくてもある程度戦線を支えることが可能になった。その分、ZOCの効果はやや軽く設定されている。
後者は戦闘結果で後退の結果が出た時、ダイスチェックにより後退を無効化できるというルールである。このルールによって練度の高い部隊が市街地等の難地形で守備し、さらに空軍支援等がつくと、攻撃側はなかなか陥落させることができない。だから防御側を「囲んでポン」したと思った攻撃側に対し、防御側も生き残りのチャンスが得られる(そしてこれが結構効く)。

他にも重戦車シフト(何と連合軍側の戦車が重戦車シフトを持っている)、フランス軍の硬直した指揮、ヒトラー命令等のルールもあるが、難しいものではない。総じて中程度の難易度を持った作戦級ゲームといえよう。

今回、France'40を初プレイするにあたり、メインシナリオである"Sickle Cut"をプレイすることにした。下名はドイツ軍を担当する。

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1Turn(40/05/13)

第1Turnの構成はほぼルールブックに記載されているプレイの例に準じた形で行う。戦線北端のナミュール(Namur)北部では、第6軍所属の2個装甲師団が仏軍第3戦車師団(10-8-6)を攻撃。これに損害を与えた。
イメージ 11その南、ディナン(Dinant)付近ではホトの第15自動車化軍団の2個装甲師団がミューズ川渡河作戦を敢行。ロンメル第7装甲師団の優れた働きもあり(注)、渡河は無事完遂した。
戦線南方のセダン(Sedan)では、グデーリアンの第19自動車化軍団に所属する3個装甲師団がフランス軍第55歩兵師団(4-6-3)を攻撃し、これを撃破。セダン南方でミューズ川を渡河し、対岸に橋頭保を築いた。

(注)ロンメルの第7装甲師団が参加する戦闘(攻撃、防御)及び断固たる防御では、ドイツ軍は1回のダイス判定で1度ずつダイスの降り直しを行う権利を有している。

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2Turn(40/05/14)

イメージ 12セダン南方ではグデーリアンの第19自動車化軍団が突破口を啓開すべく奮闘を続けている。このTurnでミューズ川南岸のグデーリアン装甲軍団は、次Turnに向けて突破の下準備が整った。
一方の北方戦線では、ホトの第15自動化軍団が2個装甲師団でミューズ川の西側から突破挺進を図る。
ディールラインに向かっていた第6軍所属の装甲師団2個はナミュール東方を迂回してホトの装甲部隊を後方から支援すべく転進する。

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3Turn(40/05/15)

イメージ 5グデーリアン軍団はセダン西方に突破口を形成。連合軍の前線を食い破って西に向けて装甲部隊が突進する下地が整った。その間シャルルロア(Charleroi)南方のアルデンヌ西部を前進しつつあったロンメル第7装甲師団に対して連合軍の反撃が牙をむいた。シャールB1重戦車を装備するフランス第1戦車師団(8-6-5)を主力とする諸兵連合部隊が4-1の戦闘比でロンメル師団を攻撃する。ロンメル部隊は危うく後退を強要される所であったが、ロンメル効果で死守に成功。辛くも窮地を脱した。

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4Turn(40/05/16)

イメージ 13グデーリアン軍団の突進は続き、4~5個の装甲師団が無人の原野を進むが如く前進する。その先鋒はエーヌ県の県庁所在地であるラン(Laon)に肉薄した。
ホト軍団は、先に反撃してきた連合軍部隊を包囲すべく反撃に転じる。ホト自身が率いる装甲2個師団が包囲網の南側から、後方から追随してきた第6軍の装甲2個師団が包囲網の北側を進み、包囲網の中にフランス軍2個師団以上を包囲した。

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イメージ 14と、そこまでは良かったが、ドイツ軍の薄い包囲網を食い破るべく、連合軍は包囲輪の中から果然と反撃を仕掛けてきた。重戦車の反撃を受けたドイツ軍第20自動車化歩兵師団は損害を被って後退を余儀なくされる。後退路を遮断されて壊滅の危機に瀕したドイツ軍第5装甲師団。4-1の比率で攻撃を受けて"6"の目が出たら"D1*"で壊滅の所、結果は"DR"。死守チェックに1度は失敗したが、致命的地形による死守ルール(11.3項)を使って再チェック。今度は成功しなんとか1ステップロスで助かった。

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5Turn(40/05/17)

イメージ 15ランを占領したグデーリアン軍団は進路やや北北西に転じ、サン・カンタン(St-Quentin)を占領した。
一方先ほど危うく装甲師団壊滅の危機を迎えたホト軍団は、西方突進の方針を少し改め、フランス軍の包囲撃滅を優先することになった。先にドイツ軍を危機に陥れたフランス軍戦車部隊を歩戦連合の攻撃によりガッチリ包囲した。ZOCボンドで取り囲んで、さらにGQGマーカーを使って反撃を封じた。こうなってしまってはさしものシャール重戦車も手も足も出ない。

6-7Turn(40/05/18-19)

イメージ 16アルデンヌの森林地帯にフランス軍重戦車部隊を閉じ込めたドイツ軍は、西へ向けた突進再開する。第6Turnにはグデーリアン軍団がカンブレー(Cambrai)を攻撃。そこは英第44自動車化歩兵師団(6-9-6)が守りを固めていたためドイツ軍の攻撃を一度は跳ね返したが、2度目はなかった。
グデーリアンはさらに西に進み、第7Turn終了時にはアラス(Arras)に到着した。海岸まであと10数へクス。あと3Turnで海岸にたどり着けるか、ドイツ軍。

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感想

ここで時間切れのためお開きとなった。最終Turnまで3Turnを残して終了。ここまでの所要時間はセットアップを含めて6時間強。フルターンで8~9時間といった所だろうか。慣れればもう少し時間短縮は可能だろう。いずれにしても丸1日プレイすればフルターンプレイ可能だ。

イメージ 17今回の勝敗がどうなったかはわからない。勝利条件から言えば、独軍が地図の西端に到達して連合軍を南北に分断するとほぼ独軍の勝利が確定する。現時点の戦況を考えればその条件を達成するのは左程困難はないと思われるが、連合軍がどんな隠し球を持っているか・・・。予想外の策で来られたらお手上げになるかもしれない。勝負事は下駄を預けてみないとわからないものだ。

イメージ 19ゲームとしては面白いと思った。シモニッチ氏デザインの一連の作品と同じく、このゲームも一見すると細かいルールが多い。しかし常識的なルールばかりなので、運用して迷うことは少ない。またロンメルやモンティ等のルールはギミックとして面白い。練度シフトや重戦車シフトも常識の範囲内である。プレイ時間もArddenes'44やUkraine'43よりもやや短めで、1日あればプレイできる点も良い。初心者でも恐れずにプレイして欲しい作品である。

イメージ 18フランス戦といえば一方的な展開だと思えるが、本作をプレイしていると意外な程連合軍が強力であることがわかる。特に重戦車装備のフランス軍戦車師団は、ティーガー大隊もかくや、というほどの打撃力を発揮する。GQGルールや移動力の遅さによって有効活用できない可能性もあるが、上手くハマればドイツ軍に手痛い打撃を与えることも期待できよう。ドイツ軍のみならず連合軍を担当してみても楽しいゲームではないかと思われる。

昨年度後半から今年度上旬にかけて、最も注目して良い作品の1つではないだろうか。
次の対戦が楽しみである。

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