Viper Pilot
Dan Hamilton HarperCollins Publishers Inc
Viperとは、F-16 Fighting Falconの俗称である。この書籍は、歴戦の「ヴァイパーパイロット」である筆者が、パイロットの視点から見た湾岸戦争、コソボ紛争、イラク戦争の姿を描いている。筆者が乗るF-16は、F-16C Block 50と呼ばれるモデルで、空軍では非公式に"F-16CJ"(シージェイ)と呼ばれている。このモデルは対レーダーミサイルを搭載可能なモデルで、主にSEAD(防空網制圧)を主任務としている。つまり「SAM狩り」だ。本書の目玉はイラク戦争での描写で、HARM、クラスター爆弾、そして20mm機関砲で武装したシージェイが、イラク軍のSAMや対空火器と戦いながら任務を遂行していく様が克明に描かれている。SEAD任務といえば、高高度からHARMを撃って制圧する、というイメージもあるが、本書ではむしろ低空からのクラスター爆弾や20mm機関砲による掃射に重点が置かれて記述されている。筆者自身「クラスター爆弾が一番お気に入り」と述べているくらいだ。他にはチャフやフレア、さらには曳航式デコイといった囮を使ってSAMを回避する様も描かれている。
パイロットの視点、しかもF-16の実戦記録といった点で本書の価値は高い。
お奨め度★★★★