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エア・パワーの時代

マーチン・ファン・クレフェルト 源田孝監訳 芙蓉書房出版

本書は主に19世紀後半から21世紀初頭にかけての航空戦力(エア・パワー)について、その実績に基づいて有効性や問題点について論じた著作である。特に20世紀半ばから終盤にかけてのエア・パワーについて多くのページを割いている。本書によれば、エア・パワーが最も発展した時期は1945年であり、それ以降は顕著な発展はないとされる。またWW2の時期においてもエア・パワーには限界があり、陸海軍の役割を完全に置換するものではなかった。そして大戦以降は核兵器の発展に伴ってエア・パワーが絶頂期に達したと見なされたが、現実には核兵器の存在によって大国間の全面戦争は事実上不可能になり、エア・パワーの重要性はむしろ低くなった。大戦後に行われたいくつかの戦争、例えば朝鮮、ベトナム、アフガン、イラク等では、エア・パワーが戦争の勝敗に殆ど貢献できなかった事実が浮かび上がってくる。エア・パワーは調達コスト、運用コストが高価すぎて、任務達成のために必要な経費が大きすぎるのだ。「敵に10万ドルの損害を与えるために1000万ドルの経費が必要」と揶揄される所以である。そして近年F-22やB-2、F-35に代表されるようにエア・パワーは益々高価になり、調達はより困難となった。高価すぎる兵器が終焉を迎えるのは歴史的な事実である。
なお、細かい点、特に太平洋戦争については誤認識がいくつかある。その他の点については不明だが、本書の歴史的正確性についてはある程度割り引いて評価する必要がある。

お奨め度★★★★