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戦闘機の戦い方

毒島刀也 遊タイム出版

著者の毒島刀也氏にしても出版社の遊タイム出版にしても聞き慣れない名前だが、まあそれはどうでも良いとして、本書は現代航空戦の実態について記した著作である。単純にカタログスペックを並べた著作ではなく、現代航空戦がどのように戦われるかについて、実戦的な視点で記述した著作である。
本書の特徴は3点である。
1つは現代航空戦を実戦的な視点から分析していること。例えば空対空ミサイルの射程距離は命中率について、カタログスペックではなく実戦下での能力を云々している。従ってカタログスペック上では数十キロの射程を誇るAIM-120等の中距離空対空ミサイル等も、実戦下での有効射程距離は精々10km未満だということ。特に後ろから追いかける場合は射程距離が激減すること等にも触れている。たとえ相手が中距離空対空ミサイルを搭載していたとしても、敵の隙を突いて離脱を図れば、逃げ切るのは左程困難ではないということだ。
もう1つは現時点での最新の情報に基づいて記述されているということ。この種の著作として有名なのはトムクランシーの「戦闘航空団」がある。しかしあちらは20世紀末の著作なので、記述内容が些か古い。またAIM-120やAGM-88等について今から見ればやや過大と思える記述になっている。その点本著は最新の情報に基づいているので、ステルス機や無人機、さらに中国等が開発中のステルス戦闘機等にも触れている。戦術面でもステルス万能的な書き方ではなく、ステルスにも対応可能だと窺わせる内容だ。
最後の1点は現代航空戦について様々な視点から記述されているということ。単に機材や装備の説明にとどまらず、レーダーモードの使い方、電子戦やさらには空戦機動(EM理論まで登場する)にまで言及されている。特にEM理論に関する部分は、現代空戦におけるEM理論の使い方が、ベトナム戦争の頃からは変化してきている点について触れており、興味深かった。
難点と言えば、内容の割に文書量が少なく、やや説明不足と思える箇所がある点かな。そのために慎重に読まないと内容を読み飛ばす恐れがある。いずれにしても現代航空戦に興味のある向きには、入手して損のない著作である。

お奨め度★★★★