Gulf Strikeは1981年に米国Victory Games社から発表されたシミュレーションゲームだ。テーマはイラン・イラク周辺における軍事衝突で、4つの仮想戦シナリオと1つの半仮想戦シナリオ(イラン・イラク戦争)を含む。今回はVASSALを使ったソロプレイにチャレンジしてみた。
選択したシナリオはシナリオ1「ジハード」。これはイラン・イラク戦争に勝利した革命イラン軍が、湾岸諸国へ攻め入るという内容のものである。
10Turn(6月19日)
連合軍空軍による猛攻が始まる。リヤドに近づく革命イラン軍が猛爆撃にさらされた。リヤド東方4ヘクスで布陣した革命イラン軍第5機甲師団(5-2-8)は米軍機約40機の爆撃により一瞬にして戦闘力を喪失した。ここでも米特殊部隊による支援が大きな役割を果たした。
引続いて革命イラン軍第3機械化師団(5-3-8)がやはり米軍機の猛爆撃を受けた。彼らの被害もまた大きかったが、ギリギリで戦闘力を維持した。
米空母「エンタープライズ」がオマーン湾に進入してきた。ペルシャ湾の入り口である。空母を発進したA-6イントルーダーが、イラン海軍のコルベット艦を対艦ミサイル「ハープーン」で撃沈してホルムズ海峡の制海権を確保した。イラン海軍はペルシャ湾奥地に拘置していたフリゲート艦隊を米空母へ向けて出撃させた。しかい彼らは米空母をその視界内に捉える前に米空母上空で警戒任務についているE-2Cの発見する所となった。対艦ミサイルを搭載して待機していたA-7Eコルセア12機が急遽発進していく。彼らは「エンタープライズ」の北西200海里の水域でイラン海軍フリゲート艦3隻を発見。計24発の「ハープーン」を発射し、3隻とも撃沈した。
しかしイラン海軍も執拗であった。戦闘艦艇を全て失った彼らは、ホバークラフト等の揚陸用艦船まで繰り出して米空母を捕捉せんとする。彼らの目的は戦闘ではない。米空母の位置を確定することにあった。米空母の位置を確定すれば後はバックファイアがなんとかしてくれる。
超音速爆撃機Tu-26「バックファイア」。
本来は米空母撃滅の切り札的存在であるべき決戦兵力は、ペルシャ湾を巡るこの戦いにおいては本命たる米空母相手に未だその威力を発揮できずにいた。その原因は1にも2にも友軍の偵察力不足。彼らが狙うべき相手たる米空母は未だその正確な位置を確定できずにいたのである。期待の「陸攻隊」は、その長い槍であるKh-22超音速大型対艦ミサイル(NATOコードネーム=AS-4キッチン)を整備しながら、来るべきその時を待ち続けていたのである。
「ワレ、敵空母ミユ。地点、ホルムズ海峡南南東220海里」
待ちに待った報告がモスクワに届いたのは開戦後21日目の夕刻であった。直ちに情報が衛星通信に乗って現地に転送される。南イエメンの基地に待機していたTu-26バックファイアの3個中隊が一定の時間間隔を置いて次々と飛び立っていく。本来であれば同時に多数機で殺到した方が有利に思えるが、米空母からは発進する防空戦闘機F-14トムキャットの防空能力を時間的に飽和させるため、敢えてバラバラの編隊を選んだのだ。
同じ頃、現在ではカザフスタンと呼ぶ当時のソ連本土の基地から発進したバックファイア1個中隊も南に向かう。合計4個中隊約50機のバックファイアが、宿敵米空母撃滅の為にホルムズ海峡へ向けて集結しつつあった。
南イエメンを発進したTu-26は、遠くアラビア海を迂回して米空母に迫った。アラビア半島上空で待ち構える米空軍のE-3C AWACS機を避けるためだ。それでも最初に突入した2個中隊のバックファイアは、米空母をその対艦ミサイルの射程距離に捉える前に米空母周囲を警戒するE-2Cホークアイの発見する所となった。米空母を発進したF-14Aトムキャット。その「伝家の宝刀」AIM-54フェニックス長距離空対空ミサイルが初めて実戦でその真価を発揮した。発射された空対空ミサイルは的確にバックファイアを追った。バックファイアは電子妨害、チャフ、そして高速回避でミサイルを避けようとする。何発かのフェニックスミサイルは電子妨害に騙され、チェフの海に突っ込み、あるいは急旋回するバックファイアを追いきれずに自爆した。しかしその数は絶望的な程に少なく、そしてフェニックスミサイルの数が多すぎた。結局2個中隊のバックファイアは悉くフェニックスミサイルの餌食となり、アラビア海にその残骸を残すことになった。
あと2個中隊。
南イエメンを発進した3つ目のバックファイアは、こともあろうに偶然アラビア海を航行中であった米揚陸艦隊のレーダーに捕捉されることとなってしまう。F-14が全部出払った状況なので米空母群はマスカット基地の米空軍に援助を要請する。基地から各1個中隊のF-15CイーグルとF-4Eファントムが迎撃に発進する。しかしなんたることか。空軍はバックファイアを見事に取り逃がしてしまう。スパローミサイルは欠陥品か・・・。米戦闘機の迎撃を潜り抜けたバックファイア中隊が発射した対艦ミサイルが米空母に殺到する。この中隊の放った対艦ミサイルと、最後にソ連本土から飛来した4つ目のバックファイア中隊が放った対艦ミサイルが「エンタープライズ」と随伴の護衛艦艇に命中した。「エンタープライズ」は沈没こそ免れたものの勢力半減でその能力を大きく殺がれることになる。
基地に引き返したTu-26バックファイアは、夜のうちに対艦ミサイルを再装備して、翌朝再び米空母を求めてアラビア海に向かった。今回も南イエメンから1個中隊、ソ連本土から1個中隊。南北から挟撃する形で米空母を襲う。ソ連本土から接近してきたバックファイアは、対艦ミサイルを発射する前にF-14Aトムキャットの捕捉する所となった。ここでもフェニックスミサイルが威力を発揮。バックファイア1個中隊を海の藻屑に変えた。
一方南イエメンから発進したバックファイアは空中給油を利用しつつ遠くインド洋を迂回した。しかも今回の攻撃ではTu-26バックファイア以外にTu-20ベア電子戦機を随伴している。この電子戦機がバックファイアを救うことになる。フェニックスミサイルはTu-20の強力な電子妨害に阻まれ、今までのような戦果を挙げることができない。それでも数発のミサイルがTu-20ベアを追う。フェニックスミサイルにはホーミングオンジャミングモード、即ち電子妨害を仕掛けてきた敵機そのものを追う機能を有しているので、強力な電子妨害は諸刃の剣となる危険があるのだ。
結局、電子妨害を担当していた6機のTu-20ベアは悉くフェニックスミサイルの餌食となる。しかし彼らの犠牲は無駄ではなかった。彼らの犠牲によってフェニックスミサイルに食われたTu-26バックファイアは1機のみにとどまった。残った11機のバックファイアは、米空母の推定海域に向けて計22発のKh-22超音速対艦ミサイルを次々と発射していく。ミサイルを発射した機体は次々と翼を翻して帰路につく。それを追うF-14Aトムキャットだったが、アフターバーナーを炊けば軽く音速を超える超音速爆撃機を視界内戦闘に持ち込むことは事実上不可能であった。
護衛艦隊の対空ミサイル、さらには「エンタープライズ」自身の近接防空火器によって大半のミサイルが撃墜されたが、生き残った対艦ミサイル1発が「エンタープライズ」に命中した。「エンタープライズ」は大破。辛くも沈没を免れる状態であった。
超大型空母と長距離爆撃機の対決は終わった。空母の方はミサイル2発を食らって大破。護衛艦艇も2隻が撃沈された。一方バックファイアも兵力の3/4を失い事実上戦闘力の大半を失った。
決死の索敵行動を実施した革命イラン海軍の揚陸艦部隊も後から駆けつけた米原潜部隊と米駆逐艦部隊によって全て撃沈され、イラン海軍はここに全滅する。
米軍が直ちに報復に出た。狙いは南イエメンのソ連軍空軍基地。バックファイアが住処にしている基地だ。まずマスカット基地を発進したF-15CイーグルとF-4Eファントムの混成編隊がソ連軍基地に襲い掛かる。MiG-23フロッガー2個中隊が迎撃に発進する。F-15Cは大苦戦し、中隊の半数以上を失ったが、MiG-23 2個中隊を撃退し、攻撃隊本隊を守り切った。2個中隊のF-4Eファントムは対空砲火を掻い潜って爆撃を敢行。基地に1Hitを与えた。さらにB-52の2個編隊が航続する。彼らもMiG-23の迎撃を受けて半数を阻止されたが、残った1個編隊が航空基地を爆撃。さらに2Hitを追加で与えて2個ある航空基地のうち1個を破壊した。残る航空基地はあと1個。
以下に重要なエラッタ(あるいは明確化)が記載されているので抜粋する。
http://boardgamegeek.com/thread/560841/collected-errata
40R-2. (中略)Also, no ground combat unit can be eliminated (i.e., suffer its final Hit) as a result of Bombardment or lack of supply, except airbases, which can be eliminated by Bombardment only.
いかなる地上戦闘ユニットも爆撃や砲撃、または補給切れの効果によって全滅する(すなわち最後の命中を受ける)ことはあり得ない。【以下が重要】ただし空軍基地は除く。空軍基地は砲爆撃によって全滅し得る。
リヤド正面では、革命イラン軍機械化師団5個(うち2個は事実上戦闘力を喪失している)がリヤドに向けて攻撃を継続している。リヤドを守るサウジアラビア軍は計5個の機械化旅団と空挺旅団1個。兵力的には革命イラン軍が勝っているが、制空権が完全に連合軍が握っており、イラン軍の攻勢は明らかに限界に達しつつあった。


