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潜水艦隊

井浦祥二郎 学研M文庫

原作は1953年、筆者が巣鴨の留置場にて書き上げた潜水艦に関する戦史である。筆者は戦時中には主に参謀として軍令部や潜水艦隊の作戦中枢に位置してきた。その筆者が主に作戦面から日本海軍の潜水艦作戦について記した著作である。そういう経歴なので日本潜水艦隊に対する評価は全般に甘めで、全般のトーンは「不利な状況にも関わらず良く戦った」「米独の潜水艦に比べても何ら劣る所はなかった」といった感じである。敗戦海軍の一端を担った当事者としてもう少し真摯な反省が欲しかった所だ。特に回天戦に関する評価は甘めで、例えば「4艇発射して爆発音を4回聴取したから空母乃至戦艦4隻轟沈」といった具合である。無論戦後早い時期に発表された著作なのでやむを得ない面はあるかもし、筆者だけの問題ではないのだが、日本海軍全体の戦果評価に対する甘さを垣間見るような気がする。逆に言えば、問題点も含めて当時の雰囲気を浮き彫りにしてくれる著作ともいえる。

お奨め度★★★★