「ドライブ・オン・クルスク」(以下、DoK)は2008年にStrategy & Tactics誌として発売されたシミュレーションゲームである。テーマは1943年のクルスク戦役で、クルスク突出部に対する南北からのドイツ軍による攻勢を描いている。デザインはタイ・ボンバ氏。
今回、DoKを対人戦でプレイすることになった。以下はその記録である。ちなみに下名はドイツ軍を担当した。
最前線にいるソ連軍ユニットを直接攻撃できるチャンスである。シークエンスは戦闘-移動を選択。最初に防御ライン沿いに配備されているソ連軍部隊を高比率攻撃で叩き、突破口を穿った後に快速部隊を敵後方に乱入させるというプランだ。
予定通り最前線では数カ所に渡って突破口を穿つ。北方では戦線後方の小都市ドミトリエフ=リゴフスキー(4010)を占領。さらに最前線を突破したドイツ軍装甲部隊がクルスク北方に引かれた3線の防衛ラインのうち2線を抜いた。
南方では前線の防衛ラインを突破したドイツ軍が、第2線であるソ連軍主抵抗線に肉薄。3線に渡って敷かれた主抵抗線の第2線までを突破した。要域オボヤン(2913)まであと1ヘクス。
予定通り最前線では数カ所に渡って突破口を穿つ。北方では戦線後方の小都市ドミトリエフ=リゴフスキー(4010)を占領。さらに最前線を突破したドイツ軍装甲部隊がクルスク北方に引かれた3線の防衛ラインのうち2線を抜いた。
南方では前線の防衛ラインを突破したドイツ軍が、第2線であるソ連軍主抵抗線に肉薄。3線に渡って敷かれた主抵抗線の第2線までを突破した。要域オボヤン(2913)まであと1ヘクス。
ソ連軍は戦略予備として拘置されていた数個の機械化軍団を予備解除して前線に投入する。VPを失うことにはなるが、背に腹は代えられない。機械化予備といっても1ステップユニットが数個だけなので、見た目ほど強くはないのだが・・・。
ドイツ軍の快進撃は続く。北方からは西に迂回した装甲部隊がリゴフ(3509)北方でソ連軍第2防衛ラインを抜いた。眼前にはクルスクを囲む最終防衛戦が見える。
南方から進撃するドイツ第4装甲軍もオボヤンを占領し、さらに北に進む。この進撃によってスジャ(3007)付近のソ連軍数個軍団が退路を断たれて敵中に孤立してしまう。
南方から進撃するドイツ第4装甲軍もオボヤンを占領し、さらに北に進む。この進撃によってスジャ(3007)付近のソ連軍数個軍団が退路を断たれて敵中に孤立してしまう。
3Turn
北から進む第9軍はルゴフ付近で進路を東に転じてクルスクへ突進する。クルスク前面の複槨陣地はさすがに強力部隊で守られていたが、ドイツ軍も装甲6個師団を集中投入してクルスクへの門を強引にこじ開けて行く。クルスクまで後2ヘクス。第4装甲軍も後方に包囲した残敵を相当しつつクルスクへ迫る。その先鋒第2SS装甲軍団はクルスク南西3ヘクスに迫り、次のTurnにもクルスク直接攻撃を狙う勢いである。
4Turn
第9軍と第4装甲軍がクルスクに向けた総攻撃を開始した。超強力なドイツ軍装甲師団を10個以上集めた攻撃に耐えられる防衛ラインなど存在しない。ソ連軍は必死の抵抗を空しくドイツ軍はクルスクまであと1ヘクスまで迫った。この段階でソ連軍は勝利を諦めて投了。「チタデレ」作戦はドイツ軍の大勝に終わった。
感想
一言で言えば「ソ連軍が弱すぎる」。これはプレイヤーではなくユニットやシステムといったゲーム上の意味においてである。まずステップ数。ドイツ軍の大半が2ステップユニットに対してソ連軍は1ステップ。だからBB(ブラッディバス、通常のゲームで言う所の「EX」が出た場合、このゲームではドイツ軍が嬉しい。ソ連軍はただでさえ不足気味のユニットがさらに減らされることになるのだから。そしてこのBBが結構良く出る。
またシステム面での優劣も大きい。各ゲームターン開始時に両プレイヤーは、自らの作戦フェイズの使い方を決めておく必要があるが、そこにも大きな優劣がある。先攻であるドイツ軍は、その時点でベストと思えるプランを選択できるのに対し、ソ連軍はドイツ軍ターン終了後の全般的状況を「予測」し、それに対するプランを計画する必要がある。そしてその「予測」が外れた場合は、ソ連軍の作戦行動は的外れなものになる。
まだある。戦闘結果で後退を強いられた時、ドイツ軍はEZOCに後退が可能だが、ソ連軍はEZOCに後退できない。従ってドイツ軍は「側面など気にせず」に突進しても左程リスクはない。対して後方を遮断されたソ連軍は悲惨だ。補給切れで戦闘力が半減させられた上、戦闘結果で後退の目が出ようもののなら、部隊はごっそり壊滅してしまう。結果としてドイツ軍の「いけいけドンドン」的なプレイになる。
他にも戦闘時のコラムシフトがドイツ軍有利だとか、SS装甲軍団に関する優越ルールとか、ドイツ軍にのみ許された航空支援ルールとか、挙げればキリがない程だ。ヒトラーやマンシュタインがこのゲームをプレイすれば、泣いて喜ぶような内容である。
結論から言えば、このゲームは競技性に乏しくゲームとしては一方的でつまらない。また歴史性についても当時のドイツ軍では考えられない程突破力が大きく、その点についても評価が下がる。総じて歴史性、競技性とも及第点とは言えない作品に思えてしまった。
ただソ連軍に勝機がないか、と言われれば、そうとも断言できない。このゲーム、オーバーランのルールがないので、例えばドイツ軍から1ヘクスだけ離れたヘクスに弱い部隊で阻止線を形成し、ドイツ軍の進撃速度を鈍らせれば、少しは時間稼ぎができるかも・・・。と思って地図を見た。上手く戦えば第3Turnまでは遅退戦術で時間稼ぎができそう。第4Turnの段階でクルスクに鉄壁の防衛ラインを敷くことができれば、なんとかなるかもしれない。あくまでも仮想の話だが・・・。
P.S. このゲームのデザイナーはタイ・ボンバ氏。私の中でのボンバ氏のイメージは、「豪快だが荒削りで洗練されていないシステムのゲームをデザインする」「何故かドイツ軍有利なゲームが多い」というものであったが、本作をプレイしてみて、その感をさらに強く持った次第である。