Ukraine'43は2001年にGMT社から発売されたシミュレーションゲームである。クルスク戦の後、第4次ハリコフ戦からソ連軍によるドニエプル川渡河作戦というややマイナーな時期を扱いながら、独ソ両軍がウクライナを舞台に繰り広げるダイナミックな機動戦で多くのゲーマーを魅了した傑作ゲームだ。
この度、そのUk43の続編が出た。2015年発売の第2版がそれだ。第1版では移動、相手側対応移動、戦闘、二次移動といった複雑だったシーケンスが、移動、戦闘という形で単純化された。またソ連軍のキラースタックをドイツ軍がZOCボンドで囲んで殺す、という「派手だがちょっと極端な」展開も出にくくなった。要塞効果も抑制され、より機動戦がしやすくなったが、全般的にドイツ軍にとってより苦しいようにも思える。その分、ドイツ装甲師団には全てエリート効果で攻防共に1シフトが得られ、グロスドイッチュランド師団はティーガー戦車シフトが適用されることになった。さらにドイツ軍の補充が旧版の2倍となっている。このような修正によって果たしてバランスがどう変化しているのかが新版の見所だ。
今回、Ukaraine'43新版を対人戦でプレイすることなった。シナリオはキャンペーン。下名はソ連軍を担当した。
1Turn(43/08/03-07)
まずは戦線北部を担当するヴォロネシ方面軍戦区から。最北端では機械化軍団2個を投入した攻撃により要域スムイ(Sumy 3407)が陥落した。その東方、スムイとベルゴルド(Belgorod 4409)の間では、ヴォロネシ方面軍の主力部隊がドイツ軍防衛ラインを幅3~4ヘクスに渡って切り裂いた。その南、ハリコフ(Kharkov 4213)東方では、ステップ方面軍が北ドネツ川が湾曲した部分(ヘクス4614)の両端2ヶ所で低比率攻撃を実施。その1つが成功してドイツ軍歩兵師団を撃退し、北ドネツ川西岸に橋頭保を築いた。これにより、川の湾曲部に布陣するドイツ軍第282歩兵師団(5-7-4)が後退路を断たれて孤立した。またベルゴルド(Belgorod 4409)付近でもドイツ軍3個歩兵師団がソ連軍による包囲輪に捕捉されんとしていた。
その南、イジウム(Izium 4819)付近の湾曲部では、南西方面軍が2個機械化軍団、1個騎兵軍団を投入して突破口を啓開。さらにその東のスラヴャンスク(Slavyamsk 5021)付近に布陣するドイツ第3装甲師団(9-8-7)を撃破してこちらも突破。要域スラヴャンスクを占領した。
しかしドンバス正面では、南方方面軍が3ヶ所に渡って攻勢を仕掛けたもの、砲兵火力の不足もあってドイツ軍は全く動じなかった。
しかしドンバス正面では、南方方面軍が3ヶ所に渡って攻勢を仕掛けたもの、砲兵火力の不足もあってドイツ軍は全く動じなかった。
ドイツ軍はハリコフ北方に装甲師団と第503重戦車大隊(3-2-5)を投入。我が第1戦車軍団に対して反撃を仕掛けてきたが、第1戦車軍団が死守に成功し、ドイツ軍による反撃は限定的な成果を達成したに留まった。
しかしイジウム付近の突出部は第5SS装甲師団「ヴィーキング」(12-10-7)を含む3個以上の装甲師団による反撃を受けた。戦線を突破したソ連軍部隊は、全て川の東岸に撃退されてしまう。
2Turn(43/08/08-12)
ヴォロネシ方面軍は、ハリコフ北部の要域ベルゴルドを占領した。その過程でドイツ軍の第11装甲師団を撃破した。さらにハリコフ東方で北ドネツ川を渡河したステップ方面軍は、ウクライナ第2の都市ハリコフに肉薄する。
イジウム付近では、南西方面軍がスラヴャンスクを中心に橋頭保を拡張する。それに対してドイツ軍はSS装甲師団を始めとする部隊で橋頭保を撃破を狙ってきたが、守備隊の奮戦によりドイツ軍による突破は辛うじて阻止された。
ドンバスは、南方方面軍所属の第5打撃軍(Shock Army)が、砲兵支援を受けて高比率攻撃を実施した。ヴォロシロフスク(Voroshilovsk 5723)を守るドイツ軍第111歩兵師団(5-7-4)は撃破され、ソ連軍はドンバスに向けた突破口を形成する。
ドンバスは、南方方面軍所属の第5打撃軍(Shock Army)が、砲兵支援を受けて高比率攻撃を実施した。ヴォロシロフスク(Voroshilovsk 5723)を守るドイツ軍第111歩兵師団(5-7-4)は撃破され、ソ連軍はドンバスに向けた突破口を形成する。
3Turn(43/08/13-17)
2個戦車軍団を中心とするヴォロネシ方面軍はハリコフに肉薄していく。しかしドイツ軍もハリコフを前に必死の抵抗を見せる。SS装甲軍団による反撃によって我が第1戦車軍が撃退されてしまう。ドンバス方面は順調である。それもそのはず。こちらにはコラムシフトを提供してくる手強いドイツ軍機械化部隊が1個師団もいないからだ。第5打撃軍は順調に前進し、ドンバスの東の入口たるアルテーミウシク(Artemovsk 5322)とゴロフスカ(Gorlovka 5324)を占領した。
4Turn(43/08/18-22)
ヴォロネシ方面軍はハリコフに対する直接攻撃は難しいと判断し、その代わりにハリコフ西方のポルタワ(Poltava 3316)に攻撃を向けてきた。ハリコフ正面の守備兵力に対する分散を図るのが狙いだ。ドンバスでは、南方方面軍所属の機械化軍団2個による快速部隊が、スターリノ(Stalino 5227)北方でドイツ第3山岳師団(5-8-4)を撃破し、そのまま機動強襲でスターリノを占領した。このTurn、クラマトルスク(Kramatrosk 5323)も陥落し、ドンバスでドイツ軍が保持するのは、コンスタンチノフスク(Konstantinovsk 5123)とマキイフカ(Makeyevka 5326)のみとなった。
一方、戦線の最北西部スムイでは、ドイツ軍増援部隊がスムイ奪回攻勢を仕掛けてきた。攻勢の主力はドイツ軍グロスドイッチュランド装甲擲弾兵師団(15-12-7)(GD師団)で、その戦闘力は両軍を通じて最強で、しかもティーガー重戦車まで装備している。ソ連軍の歩兵師団如きで守り切れるものではない。せめて野戦陣地でもスムイにあればもう少し抵抗が期待できたかもしれないが、後の祭りである。
5Turn(43/08/23-27)
ソ連軍によるポルタワ方面への突出は、ドイツ軍をして戦線を広げることを余儀なくせしめた。そのためハリコフ方面の防御が薄くなる。その弱点をついてソ連軍はハリコフ包囲を完成させた。ただしハリコフを直接攻撃できる兵力は集中できていなかったため、このTurnは代わりにドイツ軍装甲部隊を攻撃。これに打撃を与えて撃退した。さらにポルタワに対する直接攻撃を敢行。ジューコフ将軍の苛烈な指揮によりポルタワを占領した。
ドンバスでは、コンスタンチノフスクをソ連軍が占領。マキイフカも陥落寸前である。先にスターリノを奇襲的に占領した機械化部隊が今度はアゾフ海へ向けて突進。マリウポリ(Mariupol 5133)に対して機動強襲を仕掛けたが、今度は占領に失敗した。
ドイツ軍はGD師団を含む3個師団でポルタワを包囲攻撃する。しかしボルタワ守備隊は頑張った。このTurnはポルタワ陥落せず。
6Turn(43/08/28-31)
ソ連軍によるハリコフ総攻撃が始まった。ドイツ軍はハリコフを守り切ったが、守備兵力の半数を失った。ポルタワのソ連軍守備隊は玉砕した。
南方ではマキイフカが陥落しドンバスの制圧は完了した。さらに突進部隊はアゾフ海沿岸のマリウポリを落す。さらにドニエプル川へ向けて突進するソ連軍は、ドニエプル川から3ヘクスの位置にあるパブログラード(Pavlograd 4123)を占領した。
今回は時間の都合上ここで終了した。この段階でソ連軍のVPは10点。サドンデスラインには2点足らない。次のTurnにハリコフ陥落はほぼ確実。スムイ、ポルタワのいずれかを奪取できれば、次Turnにサドンデスラインをクリアできそう。しかし現実にはスムイ、ポルタワの奪取は難しい。かくしてサドンデスラインを超えるのは困難となる。
サドンデスラインは無理としても、シナリオ上の勝利条件や全般戦局から鑑みて、この期間だけを評価すれば、ソ連軍が勝利を収めたと評して良いのではないか。
感想
ドイツ軍はこちらの低比率攻撃に苦しんでいた様子であった。あとは前線を比較的薄くし、機動兵力で反撃する戦略を採用しているようでもあった。しかし結果的には広域突破戦力を採るソ連軍相手に機動反撃の効果は薄くなる。むしろ第1次大戦宜しく、塹壕戦と高練度部隊による鉄壁の防御陣でソ連軍突進阻止を図った方が良いように思う。いずれにしても、一度ドイツ軍を担当し、ドイツ軍の苦しみも味わってみる必要がある。