Ukraine'43は2001年にGMT社から発売されたシミュレーションゲームである。クルスク戦の後、第4次ハリコフ戦からソ連軍によるドニエプル川渡河作戦というややマイナーな時期を扱いながら、独ソ両軍がウクライナを舞台に繰り広げるダイナミックな機動戦で多くのゲーマーを魅了した傑作ゲームだ。
この度、そのUk43の続編が出た。2015年発売の第2版がそれだ。第1版では移動、相手側対応移動、戦闘、二次移動といった複雑だったシーケンスが、移動、戦闘という形で単純化された。またソ連軍のキラースタックをドイツ軍がZOCボンドで囲んで殺す、という「派手だがちょっと極端な」展開も出にくくなった。要塞効果も抑制され、より機動戦がしやすくなったが、全般的にドイツ軍にとってより苦しいようにも思える。その分、ドイツ装甲師団には全てエリート効果で攻防共に1シフトが得られ、グロスドイッチュランド師団はティーガー戦車シフトが適用されることになった。さらにドイツ軍の補充が旧版の2倍となっている。このような修正によって果たしてバランスがどう変化しているのかが新版の見所だ。
今回、Ukaraine'43新版のVASSAL版が発表されたと聞き、早速プレイしてみることにした。対戦相手は某氏。これまでこの新版Uk43を何度もプレイし、その癖を掴んでいるベテランプレイヤーだ。新版対戦経験1回の下名が対戦するのはおこがましい感もあるが、ここは胸を借りるつもりでプレイしてみる。
シナリオはキャンペーン。下名はソ連軍を担当した。
20Turn(43/11/06-10)
このTurnも天気は曇りである。あと2Turn。そろそろ勝利条件を見据えた布陣が必要である。現時点での獲得VPは28点。勝利ラインは30点以上である。現時点でほぼ確実に取れそうなのはザポロジェ(2VP)とニコライエフ(1VP)で、これだけでも31点。十分に勝利ラインをクリアできそうだが、ドイツ軍の反撃や不測の事態を考慮するとあと1~2点欲しい所。そこでこのTurn、先の孤立消耗判定で2ステップを失ったキロヴォフラード攻略を目指すこととし、他に機械化部隊による盤端突破を狙って数カ所で攻撃を実施することにした。
戦線南端から見てみると、まず黒海沿岸では、第2親衛機械化軍団(8-9-6)をはじめとする機械化軍団4個、騎兵軍団1個、歩兵軍団1個、戦車旅団2個が弱体化した歩兵師団(2-5-4)1個が守るのニコライエフに対して3-1の戦闘比で攻撃を実施した。そもそも失敗の可能性がない攻撃であったが、結果はDRX。余計な損害を出してしまったのが残念である。要塞による追加損害を出さなかったのは良かったが・・・。
またその北西一帯、ウマン(Uman 1122)東方では、機械化軍団8個、歩兵軍団2個、戦車旅団4個が3箇所に渡って攻撃を仕掛けてきた。その目的は盤端への突破である。結果としては2箇所でEX。1箇所で突破に成功した。突破戦闘の勢いを駆って突破口を拡大する。
さらにキエフ南方でも戦車軍団4個と戦車旅団1個がドイツ軍第8装甲師団の残余(3-3-7)等が守る防御ラインを3-1で攻撃した。しかしここはドイツ軍が死守に成功。前線を保持した。
ソ連軍戦線後方に取り残された3つの孤島の1つ、キロヴォフラードに対しては、第3親衛戦車軍団、第1戦車軍団を中核とする機械化軍団7個、歩兵軍団1個、その他の支援部隊からなる攻撃部隊が総攻撃を仕掛けてきた。砲兵と航空支援、さらにはジューコフ将軍による苛烈な戦闘指揮もあって戦闘比2-1。キロヴォフラードを守るドイツ軍も第23装甲師団(6-5-4)と歩兵師団2個。消耗したとはいえ、まだまだ強力な部隊である。ジューコフ将軍による振り直し効果もあって結果はDRX。ドイツ軍は当然の如く死守を試みるが、そこはマンシュタイン将軍による振り直しを仕掛けても2回連続で失敗。
「DRXさえ出なければ・・・」
と嘆くドイツ軍。何はともあれ、戦線後方に残った要域キロヴォフラードは一撃の元に陥落したのである。
「DRXさえ出なければ・・・」
と嘆くドイツ軍。何はともあれ、戦線後方に残った要域キロヴォフラードは一撃の元に陥落したのである。
これまで何度も激戦の舞台となったザポロジェに対してはソ連軍の歩兵軍団5個がドイツ軍の守備隊に対して攻撃を仕掛けた。ザポロジェを守る最後のドイツ軍は消耗した第198歩兵師団(2-5-4)。しかし都市効果や要塞効果のため戦闘比は1-2にしかならない。4以上の目で陥落する所であったが、無常にも出目は2で攻撃失敗。何度目かのザポロジェ攻略戦は、またもや失敗に終わった。
しかしザボロジェの失敗は致命傷とはならなかった。このTurn、キロヴォフラードとニコライエフが陥落したことでVPは30点に到達した。ドイツ軍の反撃も拠点を奪取するには至らず。これ以上の抵抗は不可能と判断したドイツ軍による投了によりゲームは終了した。
ちなみに奮戦を続けていたザボロジェ守備隊はこのTurnの損耗判定フェイズに降伏。まさにドイツ軍の敗北と時を同じくしてその抵抗を終えたのであった。
ちなみに奮戦を続けていたザボロジェ守備隊はこのTurnの損耗判定フェイズに降伏。まさにドイツ軍の敗北と時を同じくしてその抵抗を終えたのであった。
その後の展開
結局、残り1Turnという段階でゲーム終了となったが、ここでもう少しだけ今後の展開を占ってみたい。まず守備隊が壊滅したザボロジェはソ連軍が自動的に入手するであろう。2VP。次にクリヴォイロークは損耗判定でSS装甲擲弾兵師団がステップロス、歩兵師団1個が壊滅した。残る防御力は10である。都市効果で倍の20となる。クリヴォイロークに対しては60火力を投入できるかどうか。先のキロヴォフラード戦では4面攻撃で60火力を投入できた。ここでも投入できたと仮定すると、戦闘比は3-1、TQと要塞で2シフトダウン。砲兵2個とジューコフで3シフトアップ。最終戦闘比は4-1となる。戦闘結果D1*なら無条件でソ連軍の勝利。DRXならSSがステップロス食らうので死守の成功値がダウンする。それ以外の結果は大同小異である。そこにマンシュタインとジューコフの振り直しが入るので正確な確率を計算するのは難しいが、大雑把に計算すると50%弱の確率でクリヴォイロークは陥落すると見た。仮に陥落すればVP2点がソ連軍に加わる。
他には南端に緊急補給を投入することでオデッサ攻略の可能性が見えてくる。3-1で守備隊は新兵。確率的にはクリヴォイロークよりも良く、70%以上で陥落できそうだ。さらにその向こう側からの盤端突破も期待できる。
さらにキエフ南方に緊急補給をつぎ込めば、Hex1015からの突破はほぼ確実だ。ただその場合、クリヴォイロークに回せる砲兵が1つ減る。他にも何カ所か突破できそうな地点がある。
総じていえば、雨さえ降らなければソ連軍は34~39VPを獲得し、恐らく36~37VP前後になっただろう。雨が降れば、33~35VPが精一杯で、34VP前後というところか。
感想
最終的には勝利を収めたが、とても自慢できる内容ではない。むしろドイツ軍の防御の巧みさに舌を巻いたというのが本音の所だ。私がドイツ軍を担当していたら、恐らくこの半分も持たなかっただろう。今回のプレイで印象的だったのは序盤のドイツ軍の動き。ドンバス正面は歩戦スタックでガッチリ守り、逆に北のスムイ方面は殆ど解放状態。特にスムイ方面は、対戦相手の私から見ても「これだけ解放してもホントに大丈夫なのか?」と心配になった程である。
しかしプレイしてみると、スムイ方面は鉄道線が伸ばせないので思いのほか進撃できない。獲得できるVPも限られているのでそれほど脅威にならないのだ。無論、対処を誤るとソ連軍機械化部隊に後衛戦闘中の部隊が捕捉され、殲滅の憂き目を見るかもしれない。そのあたり、ソ連軍の追撃をかわしつつ戦線を維持するためにはどう動けば良いのか。この辺りの駒さばきがドイツ軍にとって鍵となりそうだ。
ソ連軍のプレイについては反省点ばかりである。僅か1個の歩兵師団を戦線後方に残したために、その追尾撃滅に多くの時間と兵力を割かなければいけなかったこと。ゲーム序盤に突出した部隊全てに緊急補給を与えていたため、砲兵火力が足りなくなり都市攻略戦がもたついたこと。キエフ正面に突出した第1戦車軍の側面防御が甘かったため、危うく包囲殲滅されかけたこと、等である。
また今回のVASSAL対戦は、私にとっては旅行等で移動中のプレイが多かった。旅先でもスマホやネットをチェックしてログが進んでいないか確認し、進んでいたらスマホからダウンロードしてノートPCに転送する。そしてノートPC上で作戦を考えてログに記録する。旅先での移動中の車内が、臨時の作戦司令部になることもしばしばだった。そういった意味でVASSAL対戦は、今や時間と空間の壁を大幅に超越したと言えよう。今後ともこういったプレイスタイルが普及することを期待したい。
最後に今回対戦にお付き合い頂いたflacoさん、どうもありがとうございました。