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Flight Leaderは1980年代半ばにAvalon Hill社から発表された現代空中戦ゲームである。
当時の空中戦ゲームといえば、SPI/HJ社のAir Warが主流を占めていた。これは1Turn=2.5秒、1Hex=150mというミクロなスケールのゲームで、ルールも精緻であった。
それに対してこのFlight Leaderは、1Turn=30秒、1Hex=1kmというやや大きなスケールを採用しており、ルールもその分少なめであった。ミサイルや航空機の性能差も簡略化されており、例えば赤外線誘導ミサイルは、HN(初期型)、HW(発展型)、HA(全角度型)の3種類のみ。AIM-9JもR550もAA-8も全てHW型で一括りにされていた。航空機の性能も然りで、機動性能は5段階の旋回性能と2段階の加速性能、そしてアフターバーナーの有無と超音速性能の有無だけで表現されていた。
その代わりにFlight Leaderが重視したのはAir Warで比較的軽視されていた編隊飛行ルールや索敵ルールであった。またルールが比較的シンプルなため、多数機同士の空中戦を再現するのに有利であった。

今回、Flight Leaderの日本語版を久しぶりに入手したので、ソロで試してみる事にした。選択したシナリオは、24.12「マトラ530の実戦投入」。1967年に起こった第3次中東戦争前夜の衝突を扱ったシナリオで、イスラエル空軍のミラージュ3C 2機がエジプト空軍のMiG-19C 4機と対戦するものである。シナリオのタイトルにある通り、ミラージュ3Cには新型のレーダー誘導ミサイル「マトラ530」が装備されている。視認距離外攻撃が可能な「マトラ530」が果たして戦果を挙げることができるか。

ルールは上級ルールまでとし、選択ルールは採用しなかった。

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SetUp

上にも書いたが、Flight Leaderではミサイルの性能は簡略化されて表現されている。今回登場する「マトラ530」にしても、ゲーム上の区分では単に「RAミサイル」とされている。だからマトラ530も、スパローの後期型であるAIM-7M/Pも、SkyFrashも、ゲーム上の区分は全て「RAミサイル」になる。ちなみにアクティブ誘導方式のAIM-120系列は、さすがに別のミサイルとされている。

今回のシナリオではイスラエル空軍は機数で劣るものの、装備と機体性能、及び練度で勝っている。そこでイスラエル空軍としてはできる限り遠方で敵機を撃破し、数的な劣勢を埋めてドグファイトに持ち込みたい所だ。
対するエジプト空軍は機数で倍しているものの、機体性能、装備、そして練度で劣っている。しかしドグファイトにさえ持ち込めれば、機動性能では互角なので数的優勢が物を言うだろう。そこで低空進入によってイスラエル側のレーダー誘導ミサイルを無効化しつつ、数的優勢を保ったまま格闘戦に持ち込む戦術を採用した。

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1Turn

イメージ 7両軍とも超低空の方が有利なので高度0レベルにして接敵を図る。本来このような超低空飛行の場合、LOSが地球の丸みに妨害されてレーダー捜索できないはずだが、上級ルールまでならそのようなルールはない。
両軍ともレーダーによるロックオンを試みるが、レーダー性能の差が出てミラージュの1番機のみがミグの1番機をロックオンするに成功した。イスラエル編隊は速度の優越を得るためにアフターバーナーに点火。音速を突破してマッハ1.1まで加速する。

2Turn

彼我の距離は31kmまで接近してきた。イスラエル機のレーダー誘導ミサイルを発射するにはまだ距離が遠い。イスラエル機はさらに加速して速度マッハ1.2となった。一方敵の接近に気付いていないエジプト空軍機は、なおも直進飛行を継続する。

3Turn

彼我の距離が10km以内に近づいた所でミラージュの隊長機が新型のレーダー誘導ミサイル「マトラ530」を発射した。ミサイルは目標機の至近距離で爆発。撃墜には至らなかったものの、ミグの隊長機に損傷を与えていた。
ミラージュの僚機もここに至ってようやくミグの1機をレーダーロックオンに成功。これに対して距離8kmから「マトラ530」を発射した。ミサイルは見事に目標を直撃し、ミグの3番機、すなわち第2編隊の隊長機は火焔に包まれて落下していく。

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先制攻撃を受けたミグは左右に散開してミラージュを狙う。後移動の利を生かしてミグの第1小隊がトレイル隊形のままミラージュ隊長機の背後を奪った。ミラージュ隊長機危うし。

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4Turn

イメージ 8エネルギーで優位に立つミラージュは、先手を取って背後から迫るミグに対して急旋回機動を仕掛ける。ミグが反応する間もなくその背後を撮ったミラージュ隊長機は、距離2kmからAIM-9B「サイドワインダー」を発射した。ミサイルはミグに命中。ミグ隊長機は四散した。

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5Turn

イメージ 7再び編隊を整えたミラージュ2機は背後から接近するミグ2番機に素早く反応した。ミラージュ隊長機が左旋回でミグの左側面に回り込んで30mm機関砲を連射し、ミグに命中弾を与えてこれを損傷させると、もう1機のミラージュは8の字飛行でミグの背後から「サイドワインダー」を発射した。既に損傷していたミグは「サイドワインダー」の直撃に耐えられる筈もなく、バラバラになったミグは海上に落ちて行った。

この時点でミグ3機が失われたので、もう1機のミグは敗北を認めて撤退。マトラ530初の実戦は3対0でイスラエル空軍の圧勝に終わった。

感想

ルールは空戦ゲームとしては簡単だが、やはりコツがいると思う。三次元的な移動に加えてエネルギーの有無によって移動手順が変わるシステムなので、彼我のエネルギーを常に意識しておく必要がある。そういった意味では空戦ゲームが苦手なプレイヤーには決してお奨めできない。

プレイ中にも触れたが、ハードウェアの差異についてはアッサリ表現されている。その分、編隊ルールや練度、索敵ルールがかなり重要である。特に目視索敵は重要で、とにかく「敵を見つけなければ撃てない」というのがこれほど効いてくるゲームを他には知らない。それと連動して編隊ルールも重要。編隊を組んでいれば目視索敵を共有できるので、今回のプレイでもあったように1番機、2番機によるワンツーパンチで敵を落せる。

プレイしていて変だなと思った点は、レーダー誘導ミサイル戦闘の所。とにかく視認距離外戦闘では低空飛行が有利なので、両軍共高度レベル0で飛行することになる。ところが実際には低空飛行の場合は見通し線(LINE OF SIGHT)が効かないので、低空飛行同士ではレーダー索敵ができない。だから実際にはある程度の中高度を飛行して視認距離外戦闘を行うのが一般的だ。また極端な超低空飛行はリスクが大きいので、攻撃機等はとにかく、制空任務の戦闘機では避けるのが原則である。そういった点からは、Flight Leaderでの視認距離外戦闘はやや極端だと思った次第。

移動ルールについても若干の違和感を覚えた。とにかくスケールが大きいので、ある程度の運動性能があれば1Turnに何度でも旋回が可能。極端な話、真後ろに陣取った敵機に対し、急旋回を繰り返してその背後に回り込んでミサイルやガンで攻撃、といった芸当も可能なのである。そのあたり、主導権の重要性を表現したルールと言えなくもないが、少し大雑把である。まあ多くの空戦ゲームにあるように、お互いが相手の動きをけん制しあってなかなか攻撃位置につけず、気がつけば千日手、になるよりはこちらの方が良いのかもしれない。

いずれにしてもFlight Leaderは他の空戦ゲームとはかなり異なった感覚のゲームなので、様々なシチュエーションを試してみたい作品である。


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