Wing Leaderは異色の空戦ゲームである。通常の空戦ゲームは2次元平面のマップ上を彼我の航空機が動き回るタイプで、彼我の高度は高度マーカー等で表現される。しかしWing Leaderは、丁度横から見たマップで空戦を行う。昔で言う所の「横スクロール」の空戦ゲームである。ここでは彼我の水平面における機動は原則として無視されている。空戦は常に攻撃側の侵攻軸に沿って行われているという発想だ。大胆までの省略だが、そのために今までは表現の難しかった立体面での戦いが比較的容易に再現できるという特徴を持つ。
また本作は空戦ゲームといってもドッグファイトゲームではなく、戦術・作戦レベルでの航空作戦全般を扱っている。プレイヤーは侵攻側又は防御側を演じ、それぞれ攻防戦を戦う。システム的にも汎用性の高いものとなっており、これ1本でバトルオブブリテンから独ソ戦、地中海戦域、太平洋戦域、さらにはビルマ航空戦まで再現できる。今後追加キットが発売されれば、ドイツ本土防空戦や日本本土防空戦、大戦末期の特攻作戦等も再現できるようになるだろう。
今回、シナリオの1本である「The Big "E"」をVASSALを使ってソロプレイしてみた。これは1942年10月26日南太平洋海戦における一局面を描いたシナリオである。空母「瑞鶴」「翔鶴」の攻撃隊が「エンタープライズ」を中心とする機動部隊を攻撃し、「エンタープライズ」に爆弾2発を命中させたものの大破するには至らず、一方で多数の攻撃機を失った戦いである。果たして日本軍は史実以上の戦果を挙げることができるか。

1Turn
日本側の戦力は零戦が2個小隊8機、艦爆が3個中隊24機、艦攻が2個中隊16機、計48機の大攻撃隊だ。対する米軍はF4Fが4個小隊16機、そして空母1、戦艦1、駆逐艦2の艦隊である。
第1Turn、日本側の第1陣である「翔鶴」隊が零戦4機、艦爆24機の編制で高度約6000mで米艦隊に接近する。対する米軍は戦闘機指揮の混乱により迎撃位置につけない。
2Turn
接近する日本側艦爆隊に対し、米軍の戦闘指揮は迎撃機を誘導しようとする。しかし誘導に不手際があって迎撃機を上手く誘導できない。そうこうしている間にも日本機の編隊が米艦隊上空に迫る。同じ頃、マップの反対側からは第2陣の「瑞鶴」隊が零戦4機、艦攻16機の編制で層雲を使って密かに米艦隊に忍び寄る。

3Turn



一方マップの反対側から近づく「瑞鶴」艦攻隊に対してワイルドキャットが襲い掛かる。護衛の零戦との激しい空中戦。零戦の1機が12.7mm機銃弾をまともに食らって四散した。

5Turn


6Turn

さらに爆撃を終えて帰投中の艦爆隊をワイルドキャットが襲い、3機を撃墜していた。しかし艦爆隊も必死に応戦し、防御砲火で1機のワイルドキャットを撃墜した。
一方、上空からは最後の艦爆1個中隊と、反対側からは艦攻2個中隊が接近してきた。

7Turn

低空を侵攻してきた雷撃機2個中隊はこの時点までワイルドキャットの迎撃によって2機を失っていた。しかしワイルドキャット隊も弾薬を撃ち尽くしたので引揚げを開始している。あとは雷撃機と艦隊対空砲火の一騎打ちになる。
8Turn


その後
その後日本軍艦攻隊は激しい対空砲火の中を離脱を図った。離脱の際に対空砲火によって艦爆1機、艦攻2機が犠牲になった。日本軍の損害は零戦4、艦爆12、艦攻7の計23機に及んだ。損害のうち艦爆8、艦攻5は対空砲火によるものである。米軍の損害はワイルドキャット1機が艦爆の防御砲火で失われ、空母「エンタープライズ」と駆逐艦「マレー」が小破した。このバランスシートを見てどちらが勝ったかは一目瞭然であろう。感想
最初慣れるまでは独特の概念があるのでムツカシイが、慣れれば基本的なシステムはシンプルなのでわかりやすい。対空砲火や爆撃が導入されると難易度が一気に上がるので、最初はそれらのルールがないシナリオが良いだろう。前半戦のシナリオは爆撃ルールなしでプレイできる。その中にはスターリングラードへの輸送作戦などといった興味深いシナリオもある。Wing Leaderはルールが独特なので万人向けではないかもしれない。しかし今までの空戦ゲームよりもプレイアビリティは高く、また作戦戦術級空戦ゲームというのも魅力的である。今まで空戦ゲームをプレイしたことがないプレイヤーにも是非お勧めしたい作品だ。
