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SPI社の「Red Star/White Star」といえば、昭和時代のゲーマにはご存知の方もいるかもしれない。
その昔、Hpbby Japan社が輸入していたゲームの1つで、日本語訳も付属していた。

今回、このゲームをプレイすることになり、英文ルールと格闘してみた。
兎に角ルールが多い。標準ルールが35ページ、Red Star/White Star用特別ルールが36ページ、チャート集が12ページの計83ページにも及ぶ。しかも近年のゲームのようにスカスカの内容ではなく、英文がギッシリ詰まったタイプなので、ページ数以上に厳しい。以下に近年の英文ルールと「Red Star/White Star」の英文ルールを比べてみた。上が「Red Star/White Star」のルールブックで、下が2015年に発売されたGMT社の「Triumph & Tragedy」のルールブックである。

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基本ルール

1Hexは200m、1Turnは実際の5分間に相当する。1ユニットは1個小隊で、丁度「パンツァーブリッツ」と同じようなスケールだ。ターンシークエンスは以下の通り。

A.第1プレイヤー間接射撃フェイズ
 1.計画セグメント
 2.マーカー除去セグメント
 3.解決セグメント
 4.回復セグメント
B.第2プレイヤー命令フェイズ
C.第1プレイヤー移動フェイズ
 1.移動セグメント
 2.最終射撃セグメント
 3.近接突撃セグメント
D.第2プレイヤー間接射撃フェイズ
E.第1プレイヤー命令フェイズ
F.第2プレイヤー移動フェイズ
G.第2プレイヤー命令フェイズ
H.第1プレイヤー移動フェイズ
I.第1プレイヤー命令フェイズ
J.第2プレイヤー移動フェイズ
L.記録フェイズ

一見複雑だが、よく見るとそれほどではない。要は命令フェイズと移動フェイズの繰り返し、それを1Turnに2回繰り返す。そして間接射撃が間に挟まっている。
本作で特徴的なのは命令ルールで、中隊毎に予め密かに命令を与える必要がある。命令には以下のものがあるが、使用頻度が高いのは上から3つまでであろう。

 ・跳躍(bounding)
 ・監視(overwatch)
 ・跳躍及び監視(bounding overwatch)
 ・撤退(withdraw)
 ・回復(rally)

上記のうち、監視及び回復命令が与えられた中隊は移動できない。また監視又は跳躍及び監視任務の中隊のみが射撃できる。
射撃システム、特に戦車対戦車の射撃システムは独特だ。本作では戦車の主砲に種類別の性能差はない。M60A3の105mmライフル砲だろうが、レオパルド2の120mm滑腔砲だろうが、チーフテンの120mmライフル砲だろうが、いずれも「戦車砲」である。
戦車の火力性能を特徴づけているのは、その射撃指揮装置である。光学式、ステレオ式、レーザー測距の3種類があり、さらに夜間用のサーチライトや赤外線ライト、パッシブセンサー等が装備されている。例えばレーザー測距機装備のM60A3と光学照準式のT-62が距離2000m(10Hex)対峙した場合、前者の攻撃力は6で後者4になる。これがT-62ではなくレーザー測距式のT-72と対峙した場合、後者の攻撃力が7にアップする。ちなみに戦車の防御力はその「大きさ」によって表現され、大きい戦車は不利である。先の例でT-72の方がM60A3よりも攻撃力が大きいのは、M60A3の大きさが影響している。

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他には対戦車ミサイルに関する射撃ルールも特徴的だ。対戦車ミサイルはミサイルの種類別にデータ化されており、例えば発展型TOWは、距離19ヘクス(3.8km)で攻撃力7を発揮する。他に間接射撃、近接突撃、士気に関するルール等がある。

上級ルール

地雷、航空攻撃、移動中射撃、弾薬欠乏、夜間戦闘、渡河、有利な地点からの射撃、待ち伏せ、電子戦、カモフラージュ、工兵等のルールがある。全部導入するのは大変だが、シナリオで必要なルールは導入する必要があるだろう。特に渡河等は必須に近いルールと思われる。

特別ルール

以上は「Mech War 2」としての標準ルールだが、他に「Red Star/White Star」用の特別ルールがある。内容はソ連軍とNATO軍のドクトリンに関するもの。その他は化学兵器や核兵器といった大量破壊兵器だ。
化学兵器に対する防御態勢としては、無防備状態(CP1)から完全防備状態(CP3)まで3段階があり、CP3の場合は化学兵器による損害を受けない。しかしCP3になると、暑い日に走っただけで疲労するし、近接戦闘なんかやった日にはそれだけで損耗してしまう。さらに通常は防護服を着るだけで士気も低下するが、実際に化学兵器の攻撃を受けた場合はこの種の士気低下を引き起こさない点は面白い。
化学兵器には、持続性のものと非持続性のものがある。一般に持続性の方が厄介だが、これは使用した側にとっても厄介だ。風向きによっては発射した側に被害を及ぼす危険性すらある。従って余程の事がない限り、発射する側は非持続性の化学兵器を使用することになるだろう。ちなみに化学兵器の影響範囲は、着弾ヘクスから1~2ヘクス以内。ある2D6の出目があるレンジに入ればそのユニットは即座に除去される。

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戦術核兵器に関するルールが詳細なのも特徴的である。このスケールで登場する核兵器は、砲発射型の0.5kt弾頭から戦術ミサイルが使用する10kt弾まで5段階の核出力のものが登場する。「痩せても枯れても核弾頭」なのでその威力は半端なく、10ktの弾頭が炸裂した日には炸裂地点から2ヘクス以内の歩兵は無条件除去、8ヘクス以内は50%以上が放射能のため2時間以内に死亡(あな恐ろし)、10ヘクス以内(2km以内)でも除去される可能性30%以上ある。ところが目標が戦車だとその威力は大幅に低減されてしまい、最強の10kt弾頭でも無条件除去は着弾ヘクスのみ。影響範囲は4ヘクスに及ぶが、4ヘクス目だと除去率は20%弱まで落ち込む。それが数ktクラスになると威力はさらに小さくなる。
核兵器はプロットしてから着弾するまで2~4Turnの遅延がある。1Turnに2回移動フェイズがあるので、核兵器がプロットしてから着弾するまで相手には4~8回の移動機会が与えられることになる。足で歩く歩兵でも4~8ヘクス移動でき、戦車の場合はその数倍の距離を移動可能だ。さらには砲弾やミサイルは着弾地点のずれがあり、ラジコン方式のランス、オネストジョン、スカッドは電子妨害によって最大15ヘクスもずれることもある。下手をすると味方の頭上で核弾頭が炸裂することにもなりかねない。
こうして考えると如何に威力の大きい核弾頭とはいえ、動き回る戦車部隊をピンポイントで狙い撃ちするのは難しい。固定的な防御陣地を撃破するには好都合だが、その場合も核汚染を引き起こすので軍事的には痛し痒しだ。ウォーゲーマーにとっては自明のことだが、戦争において敵軍事目標の撃破は目的ではなく手段であり、「敵を除去したは良いが、それ以上前進できなくなった」では本末転倒なのだ。
こうして考えると戦略レベルでは兎に角として、戦術レベルでの核兵器は、効果的な運用が難しい兵器と言えるかもしれない。

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シナリオは12本。両軍とも概ね1~3個大隊(1個連隊)の部隊が登場する。化学兵器が登場するのは12シナリオ中5本、核兵器が登場するのも5本である。核弾頭については精々1~3発程度なので、使い処が難しそうだ。